「ヤマダ・エディオン連盟」は家電量販店"合併ドミノ"を引き起こすのか!?

取材・文/友清 哲 写真/共同通信社 時事通信社

EC化と世帯数減に直面する業界の首位と5位が電撃統合!EC化と世帯数減に直面する業界の首位と5位が電撃統合!

業界再編の波がここにも――。ヤマダHDとエディオンによる超大型統合が実現し、家電量販店業界に激震が走った。独走状態に入るのか? それとも対抗馬は現れる?

【次なる活路は家電のユニクロ化!?】

6月5日、「ヤマダデンキ」でおなじみのヤマダHDとエディオンは、経営統合に向けて基本合意に達したことを発表した。これが実現すれば、ヤマダHDの売上高が約1兆7000億円、エディオンが約8000億円、合わせて2兆5000億円規模の巨大企業が誕生することになる。

2位につけるノジマ(売上高約1兆円)を大きく引き離し、両社のタッグはこのまま家電量販店の覇者となるのだろうか? 識者の見識を交えながら、今後の展開を占おう。

記者会見を終え握手するヤマダHDの山田昇会長(左)とエディオンの久保允誉会長記者会見を終え握手するヤマダHDの山田昇会長(左)とエディオンの久保允誉会長

「背景にあるのは人口減少でしょう。家電量販店に限らず、コンビニ業界などでも市場の縮小はこれからいっそう深刻な問題になるはずで、企業が今後生き残っていくためには、寡占化するか差異化を図るかの二択しかないと私は考えています」

そう語るのは、流通アナリストの渡辺広明氏だ。

確かに、総務省が先月発表した2025年国勢調査の速報値によると、日本の人口は309万人減で、過去最大の減少幅を記録している。

しかも、家電量販店は人口減少に加えて、もうひとつ深刻な課題に直面している。

「これまで人口は減りつつも、核家族化や高齢者世帯の増加によって、世帯数は増え続けていました。

テレビやエアコンといった家電は、人口よりも世帯数に需要が左右されるため、どうにか市場規模を維持してきましたが、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の総世帯数は2030年頃をピークに、減少に向かうと見込まれているんです」

ヤマダHDやエディオンは近年、リフォーム事業に注力しているが、これは「今後、家電だけでやっていくのは難しいと判断したから」だと渡辺氏は言う。つまり、サービス面での差異化を図っているわけだ。

「ヤマダHDは大塚家具を買収し、エディオンはニトリと提携しています。今後は家電を安く大量に売って稼ぐのではなく、ライフスタイル全体に寄与する業態に変化していこうという意思の表れでしょう」

大塚家具の商品を販売する、ヤマダデンキの「LABI1」。家具やインテリアの販売だけでなく、リフォームなどのサービスも提供する大塚家具の商品を販売する、ヤマダデンキの「LABI1」。家具やインテリアの販売だけでなく、リフォームなどのサービスも提供する

また、家庭の中で以前ほど家電が重視されなくなっていると指摘するのは、経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏だ。

「昭和の時代は冷蔵庫や洗濯機、エアコンなど、家電にお金をかけることで生活を豊かにしようという流れがありました。しかし令和の今、そうした家電はすでに十分行き渡っています。

また、名もなき海外メーカー製の家電でもちゃんと機能することが消費者に知られ、その結果、かつて家電王国と呼ばれた頃の日本の大手メーカーは、パナソニックを除いてほとんど姿を消してしまいました。家電業界は大きな変革期を迎えています」

家電量販店が商品を安く大量に売ることで成長するモデルは、実は1990年代のうちに限界を迎えていたと鈴木氏は語る。

「2000年代に入ってからの成長を下支えしていたのは携帯電話で、顧客との接点が多いほど大量の契約を取ることができました。だからこそ店舗数が重要だったわけですが、その携帯電話も現在は飽和状態。そこで各社が次に着目しているのが、PB商品です」

PBとは、製造から販売までを自社で手がけたブランドのことで、利益率が高いのが特徴。例えばヤマダデンキは「ヤマダプロダクツ」という廉価な家電シリーズを、エディオンはビジュアルを重視したブランド「e angle」を展開している。つまり家電量販店は、商品のオリジナリティで差異化する方向に向かいつつあるわけだ。

エディオンのPB「e angle」は2018年に販売を開始した。店頭で聞いた客からの要望を吸い上げ、商品開発に生かしているエディオンのPB「e angle」は2018年に販売を開始した。店頭で聞いた客からの要望を吸い上げ、商品開発に生かしている

そんな中で浮上した今回の経営統合プラン。大塚家具を傘下に収めたヤマダHDと、ニトリの出資を受けるエディオンの組み合わせは、ライフスタイル全般に領域を広げてPB商品を展開する未来を予想させる。

そしてその先に見据える勝ち筋は、〝家電量販店のユニクロ化〟だ。

「企画、販売、サービスをすべて一貫して自社でやり、ブランドとして育てる。これはもともと大量安売りモデルからスタートし、今では標準的なアパレルとして世界的に認知されているユニクロの姿そのものと言えます」(鈴木氏)

【意外な伏兵? ドンキのPB家電】

これを実際に体現しつつあるのが、2位につけるノジマだ。同社は今春、日立製作所の白物家電事業を買収することを発表したばかり。日立が持つ技術と長年のノウハウを自社内に囲い込み、まさしくユニクロ化を目指す動きを見せている。

とはいえ、商品を自ら製造することには、相応のリスクもあるはずだ。メーカーのマーケターとしてこれまで780品目以上の商品開発に携わってきたという前出の渡辺氏は次のように語る。

「結局、製造ロットはそのまま価格に反映されますから、店舗数が多くなければ良い商品は造れません。その意味では、今回のヤマダHDとエディオンの合併は、競争力のあるPB商品を展開していくなら、非常にいい選択だと思いますよ」

4月、ノジマは日立製作所の家電事業を1100億円で買収。PBの強化を進める。左は日立製作所の網谷憲晴専務、右はノジマの野島廣司社長4月、ノジマは日立製作所の家電事業を1100億円で買収。PBの強化を進める。左は日立製作所の網谷憲晴専務、右はノジマの野島廣司社長

近年、PBに活路を見いだそうとする業種は、家電量販店だけではない。ドラッグストアやコンビニ、スーパーがPBを展開するのは珍しくないし、最近ではドン・キホーテやニトリでもオリジナルの家電を取り扱っている。渡辺氏が言う。

「これも将来への危機感があればこそでしょう。独自の商品を開発して差異化しなければ、早晩やっていけなくなることを理解しているのだと思います。特にドン・キホーテは、定期的にユニークな商品を売り出してヒットさせていますよね。

例えば今夏リリースしたコンプレッサー式かき氷機は、水からかき氷を作れる調理家電で、オレンジジュースを入れてスイッチを押せば、オレンジ味のかき氷がシャリシャリ出てくるんです。夏場の酷暑もあり、きっと早々に完売するでしょう。こういう発想力は、ドン・キホーテの大きな強みです」

家電量販店からすれば、ヤマダHDとエディオンの合併よりも、販売力のあるドン・キホーテのほうが脅威なのかもしれない。

PBの家電に定評があるドン・キホーテ。チューナーレスのテレビはNHK受信料の支払い義務が発生しないことで人気を集めたPBの家電に定評があるドン・キホーテ。チューナーレスのテレビはNHK受信料の支払い義務が発生しないことで人気を集めた

【業界再編の先に大リストラが起こる】

なおヤマダHDとエディオンは、順当にいけば2027年10月に持ち株会社を設けて、それぞれを完全子会社化する予定。当面はヤマダデンキとエディオンの看板はそのまま残すという。

「今回はどちらもトップが創業家だから、話が早かったですよね。いわゆるサラリーマン社長に代替わりしていたら、これほどスムーズに話はまとまらなかったでしょう」(鈴木氏)

また、記者会見ではヤマダホールディングスの山田昇CEOが、持ち株会社の取締役を同数とする対等合併であることを強調していたのも印象深い。

「要はより大手であるヤマダ側の支配ではないことが重要で、あくまでPB強化のための経営統合であるというスタンスの表れだと思います。どちらも歴史のある企業だけにこれは非常に重要なメッセージで、本田技研工業と日産自動車のときもそういう視点があれば破談になることはなかったかもしれませんね」

ところで、ビックカメラやヨドバシカメラなど、ほかのプレイヤーは今回の経営統合を受け、今後どう動くのか。鈴木氏はこう予測する。

「どこも皆、いったん様子見の方針だと思います。というのも、両社の統合が本当にうまくいくのか、これ以上規模を大きくして何をやるつもりなのか、多少なりとも懐疑的な部分があるはずだからです。何しろ家電量販店は今後、大リストラ時代が訪れることが予想されています。

アメリカではすでに家電売り場の必要性が薄れているように、日本でもネット通販はもちろん、ドン・キホーテに家電を買いに行く人が増えれば、いやが応でも量販店は淘汰されることになります」

今回の経営統合で、総店舗数は約1万店に達する見通しだが、これがそのまま不良債権化するリスクもあるわけだ。だからこそ、ただただ規模を大きくするだけでなく、今のうちに両社のシナジーによって高い競争力を養わなければならない。

世帯数減少まであと4年。この大型統合は吉と出るか、凶と出るか。

  • 友清哲

    友清哲

    ともきよさとし

    ルポライター、編集者。1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。編集プロダクションを経て、1999年よりフリーライターとして独立。2001年から「このミステリーがすごい!」の編集に携わり、エンターテインメントの評論活動を行なう。17年には父親をテーマにしたアンソロジー『I Love Father』に参加し、小説家デビュー。『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』など著書多数。
    Instagram【satoshi.tomokiyo】

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