台風&ゲリラ豪雨から愛車を守れ! 「クルマ冠水」サバイバル

取材・文/週プレ自動車班 イラスト/小田原ドラゴン

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近年、大型の台風やゲリラ豪雨による被害が全国各地で相次いでいる。

集中豪雨は、道路の冠水や視界不良など、ドライバーにさまざまな危険をもたらす。もし走行中に豪雨に遭遇したら、どう行動すべきなのか。

そして、愛車を守るために事前にできる備えとは何か。専門家の話を基に、豪雨時のクルマのリスクと対策を探った。

【〝SUV冠水無双説〟は本当なのか?】

「なんじゃこりゃあ!」

7月17日、静岡県富士宮市で行なわれた某自動車メーカー主催の報道陣向け試乗会の取材を終え、週プレ自動車班は中央自動車道を都心へ向かって走っていた。すると突然、滝のような雨に襲われた。前走車や追い越し車線を走るクルマが巻き上げる大量の水しぶきで、視界は一瞬にしてふさがれた。

幸い、数日前にフロントガラスへ撥水コーティングを施工していたため、ワイパーを最速にすれば視界は十分確保できた。それでも危険な状況に変わりはない。サービスエリアまではまだ距離がある。

すぐにヘッドライトを点灯して周囲に自車の存在を知らせ、速度を落として車間距離を大きく取る。ハンドルを強く握り、ラジオで交通情報を確認しながら、雨雲を抜けるのを待つしかなかった。

約10分後、ようやく豪雨を抜けると、そこには何事もなかったかのような夏の青空が広がっていた。しかし、そのわずか10分間で、ゲリラ豪雨の恐ろしさを十分すぎるほど思い知らされた。

この日、関東地方では大気の状態が非常に不安定となり、東京都、神奈川県、千葉県など広い範囲で局地的なゲリラ豪雨に見舞われた。

栃木県や群馬県でも記録的な大雨となり、気象庁は各地に「レベル4大雨危険警報」などを発表し、危険な場所からの避難を呼びかけた。実際に各地で道路の冠水が発生、マンホールから水が噴き出し、走行不能に陥るクルマも......。

そんな豪雨時に立ち往生するクルマの映像がネットで拡散されると、「SUVなら車高が高いから冠水でも安心」「SUVは冠水無双」といった投稿がSNSにたびたび出て、賛否が巻き起こる。

ちなみにロードサービスでおなじみのJAF(日本自動車連盟)が行なった冠水路走行実験では、水深60㎝の冠水路をSUVは時速10キロであれば走破できた。しかし、時速30キロでは約10m走っただけでエンジンが停止してしまった。一方、セダンは同じ水深60㎝では時速10キロでも走破できず、途中で走行不能となってしまった。

確かに冠水時、SUVにはセダンより有利な面があることは事実。しかし、それは「冠水路を走れるクルマ」という意味ではない。JAFの実験結果は、車種により違いはあれど、冠水路走行には大きなリスクが伴うことを示している。だからこそ重要なのは、走れるかどうかではなく、冠水路に入らないという判断なのではないだろうか。

【「これぐらいなら」が一番危ない】

台風やゲリラ豪雨に遭遇した際、ドライバーはどう行動すべきか。自動車ジャーナリストの桃田健史氏に聞いた。

「自宅にいる場合は、基本的に不要な外出は避け、クルマには乗らないこと。車庫など駐車スペースの周辺にある物を整理するなど、風雨による損傷を防ぐ準備をしておきましょう。出先であれば、クルマを安全な場所に止めて車内で待機するか、クルマを降りて近くの商業施設や公共施設などで待機してください」

関西出身のラリーカメラマン・山本佳吾氏は、海外でこんな体験を持つ。

「マレーシアのラリーに行ったときに経験したスコールがエグかったな。ワイパーなんて意味あらへん。もうなんにも見えへんわけや。せやけど、地元の人は普通に運転しとる。あれ絶対、前見えてへんで」

そんな山本氏は愛車を駆り日本中を取材撮影で飛び回る。悪天候時の移動で欠かさず確認していることを聞いた。

「事前に道路情報と天気予報は必ず確認するなあ。仕事柄、雨雲レーダーもチェックする。ゲリラ豪雨のときは無理せんことや。特に高速道路で遭遇したら、とにかく速度を落とすこと。見通しも悪いし、ハイドロ(ハイドロプレーニング現象)も怖いしな」

ハイドロプレーニング現象とは、タイヤと路面の間に水膜ができ、タイヤが路面から浮いた状態になる現象だ。ハンドルが利きにくくなり、ブレーキ性能も大きく低下するため、クルマが制御不能になる恐れもある。ゲリラ豪雨に巻き込まれた週プレ自動車班もハイドロプレーニングのリスクを考慮し、速度を落として走行した。

桃田氏は、豪雨時の運転で近づいてはいけない場所についてもこう話す。

「道路や線路のアンダーパス(道路や線路の下をくぐる構造の道路)ですね。また、近年は被害事例が複数報道されているように、地下駐車場もできれば避けたいところ」

確かに、台風やゲリラ豪雨によって地下駐車場に大量の水が流れ込み、クルマが水没する被害も各地で相次いでいる。  

一方、山本氏は、こんな光景を目撃したという。

「冠水してる道を目の前にして『これぐらいなら行けるやろ』は禁物やで。昔、前方が冠水してたから止まって様子見てたら、一台のタクシーがエライ勢いで突っ込んでいってな。瞬く間にトランクまで水に漬かって終了や。運転手さんもお客さんも無事やったからよかったけど、冠水では『これぐらいなら大丈夫』が一番危ないと思ったわ」

桃田氏も大きくうなずく。

「水深30㎝程度で、クルマは水に浮いてしまいます。タイヤが路面から離れると、ドライバーは車両をコントロールできなくなります。冠水した道路を前にして『このくらいなら大丈夫』とは決して考えず、走行ルートを変更するか、安全な場所へ避難することを考えてください」

その上で、桃田氏はクルマの性能への過信についてこう指摘する。

「クルマの走行性能を過信するのは危険です。本格的な四輪駆動車の中には、ラダーフレーム構造(はしご状の頑丈な骨格を持つ車体構造)を採用し、ボンネット付近までの水深がある悪路を走破する動画などが公開されている場合もありますが、道路が冠水している状況では、どんなクルマであっても過信は禁物です」

【クルマに常備すべきアイテムとは!?】

今回、専門家や自動車メーカー関係者などに数多く話を聞く中で、多くの人が口をそろえたのが、「水没などで車内に閉じ込められた場合に備え、緊急脱出用ハンマーをクルマに備えてほしい」ということだった。

とはいえ、いざ購入しようとしても、いったいどの商品を選べばいいのかわからない。そこで、オートバックスセブン広報に、一番売れている緊急脱出用ハンマーと、その人気の理由を聞いた。

「ガラスを割る機能に加え、シートベルトが外れなくなった際にベルトを切る刃がついていることです。コンパクトで女性にも扱いやすく、車内に常備しておくのにも大きすぎない、ちょうどいいサイズです」

オートバックスで一番売れている脱出用ハンマーはコチラ!! 「AQ. 緊急脱出用ハンマー」価格 1980円(税込)。高硬度クロモリ合金鋼のガラスハンマーで軽い力でもガラスを破砕。鋭いシートベルトカッターを備え、軽量・コンパクトで車内に常備しやすい緊急脱出ツールオートバックスで一番売れている脱出用ハンマーはコチラ!! 「AQ. 緊急脱出用ハンマー」価格 1980円(税込)。高硬度クロモリ合金鋼のガラスハンマーで軽い力でもガラスを破砕。鋭いシートベルトカッターを備え、軽量・コンパクトで車内に常備しやすい緊急脱出ツール

緊急脱出用ハンマーは、いざというときすぐ手が届く場所に固定し、取扱説明書などであらかじめ使用方法を確認しておくことが重要だ。

都内にある自動車整備工場のメカニックは、クルマが冠水した際の対応についてこうアドバイスする。

「絶対にエンジンをかけず、クルマを動かさないことが鉄則です。エンジンや電気系統がショートして故障や火災の原因になる可能性があるほか、水がエンジン内部に入り込んで破損する危険もあります。

まずは身の安全を確保した上で、ロードサービスや保険会社、販売店、整備工場などへ連絡し、クルマの移動を依頼してください。無理に動かすと故障を悪化させたり、感電などの危険につながる恐れがあります」

冠水被害に遭った場合、車両保険はどこまで補償されるのか。桃田氏はこう話す。

「基本的には、洪水による冠水でも車両保険の補償対象になります。エンジンやモーターが動かなくなった場合などは、全損扱いとなるケースもあります」

気候変動の影響が指摘される近年、日本各地で台風やゲリラ豪雨などによる被害が続出している。最後に、桃田氏がこう注意を促す。

「山間部はもちろん、市街地でも崖沿いや崖の上に沿った道路は注意が必要です。自宅周辺であれば、洪水や土砂災害のハザードマップを事前に確認し、そうした危険エリアにはクルマを止めないことも大切です」

もはや台風やゲリラ豪雨は、すべてのドライバーにとって人ごとではない。

<<必見! JAF冠水路走行テスト>> 

JAFが、集中豪雨などによってアンダーパス(道路や線路の下をくぐる構造の道路)が冠水した状況を想定し、車両が冠水路を走行できるかを検証。(写真提供/JAF) 

【セダンタイプのテスト】
●水深30㎝(時速10キロ) 
時速10キロで走行した場合、フロントバンパー上部に水が達する状態でも、フロントグリルから直接水が入り込むことはなかった

●水深30㎝(時速30キロ) 
同じ水深30㎝でも、時速30キロで走行した場合は巻き上げる水の量が多くなり、エンジンルーム内に大量の水が流入することが確認された

●水深60㎝(時速10キロ) 
水深60㎝ではフロントガラスの下端まで水をかぶった。それでもすぐには停止せず走行を続けたが、上りのスロープに差しかかった31m地点でエンジンが停止

【SUVタイプのテスト】
●水深30㎝(時速10キロ、30キロ) 
SUVのテストでは、水深30㎝の条件下で時速10キロ、30キロ共に走行可能で、いずれも冠水路を走り切ることができた

●水深60㎝(時速10キロ) 
水深60㎝の条件下では、セダンは時速10キロでも走行途中で停止したが、エンジン位置が高いSUVは冠水路を走破

●水深60㎝(時速30キロ) 
時速30キロではエンジン下部からも大量の水が流入し、わずか10mでエンジンが停止。さらに、浸水時の衝撃によって車体が一瞬浮き上がり、ハンドル操作にも影響が及んだ

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