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(左)トランプ米大統領が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」。トランプ氏のフォロワーは最多の約1300万人 (右)高市早苗首相の各SNSのフォロワーは、Xが約295万人、Instagramが約130万人、Facebookが約19万人
睡眠時間や家事の苦労までXで明かした高市早苗首相。AI画像を投稿し、たびたび話題を呼ぶトランプ米大統領。今や、首脳の個人的投稿が世界の注目を集める時代だ。
もちろん個性的なSNS使いは日米だけではない。世界の首脳たちのSNS術を各国に住む人々に聞いた! *データはいずれも 8月4日時点
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最初に紹介するのは、ベルギーのバルト・デウェーフェル首相。ブリュッセル在住の里下里太さんはこう語る。
「デウェーフェル首相は、愛猫のマキシマスを"主人公"に、緊縮財政や年金改革などを猫目線で風刺する投稿を展開し、人気を集めています。マキシマスのアカウントは、首相本人のアカウントを上回るフォロワーを抱えるほど。
首相を狙ったドローン攻撃計画が摘発された直後には、首相が『マキシマス、ドローンを捕まえられるか?』と尋ね、『できない。でも、誰よりも夢を追いかけているよ』と答える投稿も注目されました。危機的な事件までユーモアに変えてしまうんです。
一方、長引く予算交渉を猫で風刺した際には、野党から『国の重要課題を軽く扱っている』との批判も出ました」
(左)【ペット活用エンタメ広報型】バルト・デウェーフェル首相(ベルギー)《Instagramフォロワー》約22万人 コミック風に愛猫マキシマスに政治を語らせるInstagramを展開。緊縮財政や年金改革まで猫目線で辛口に風刺している。猫のアカウントのフォロワー数が本人を超えて話題に (右)【音楽で親近感積み上げ型】ローレンス・ウォン首相(シンガポール)《Instagramフォロワー》約53万人 テイラー・スウィフトの楽曲をギターで演奏するウォン首相。個人のYouTubeチャンネルでは米国在住のシンガポール
愛猫で発信する首相がいれば、シンガポールのローレンス・ウォン首相はギターだ。
堅実なテクノクラート(技術官僚)として知られるが、テイラー・スウィフトの楽曲をギターで演奏する動画を公開するなど、その堅いイメージを和らげている。
同じく音楽好きをアピールしているのが、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相だ。現地在住の服部暁美(あけみ)さんはこう話す。
「かつてDJをしていたことから『DJ Albo(アルボ)』とも呼ばれ、レコード店や音楽フェスでの写真も投稿するなど、『親しみやすいおじさん』というイメージを築いています。一方、アルバニージー政権が進めたのが、16歳未満のSNS利用規制。若者からは『自分は使うのに、僕たちからは取り上げるのか』という冷ややかな反応もあります」
(左)【親近感&規制の矛盾型】アンソニー・アルバニージー首相(オーストラリア)《Xフォロワー》約140万人 政策発表はもちろん、愛犬や音楽に関する投稿も多い。増税に反発した企業が作った、首相を「悪役」として描いたAI画像には、「なかなか男前だ」と受け流す余裕を見せた (右)【等身大オープン型】ロブ・イェッテン首相(オランダ)《Instagramフォロワー》約51万人 イェッテン首相(右)のパートナーは、アルゼンチン出身のホッケー選手、ニコラス・キナン氏。ふたりの写真にはInstagramでは祝福が、Fac
趣味だけでなく、恋人との日常まで見せているのが、オランダのロブ・イェッテン首相だ。今年2月、38歳で同国史上最年少の首相に就任。ゲイであることを公表した同国初の首相でもある。オランダ在住の福成海央さんが語る。
「選挙戦では『ロブのオランダツアー』と題し、各地の住民と雑談したりする姿を投稿しました。政策だけでは見えないその人柄を伝えています。パートナーとの写真には、Instagramで祝福が集まる一方、Facebookでは大量のヘイトコメントも寄せられました。
しかし、イェッテン首相はSNS上で口論することはなく、2020年の『国際反ホモフォビアの日』には、自身に届いた同性愛嫌悪の投稿を読み上げる動画を公開。ヘイトへの向き合い方も戦略的だと感じます」
趣味や日常の投稿ではなく、AIで自らの印象を変えたのがインドネシアのプラボウォ・スビアント大統領だ。現地在住の長野綾子さんは語る。
「もともとは『怖い元軍人』『怒りっぽい』というイメージが強くありましたが、24年の大統領選で、ダンス動画やAIを活用したキャラクターを使うことで、『愛嬌(あいきょう)のあるおじいちゃん』という印象に。若者から『かわいい』『面白い』と受け止められ、政治に関心の薄い層にも名前と顔が浸透したんです。
ただ、現在は物価高などで政権への評価が低迷し、支持率は就任当初から約30ポイント低下。『選挙中のイメージと実際の政治が違う』『SNSでは親しみやすいが、政策は軍事的、権威主義的』という批判があります」
(左)【キャラ化でイメージ刷新型】プラボウォ・スビアント大統領(インドネシア) 《Instagram フォロワー》約1470万人 元軍人で「怒りっぽい」というイメージを持たれていたが、大統領選ではAIでアニメ化した自身のキャラクターを押し出し、「かわいいおじいちゃん」という印象を浸透させた (右)【AIいじり活用型】エマニュエル・マクロン大統領(フランス)《Xフォロワー》約1090万人 マクロン大統領が公開したAI動画は、第三者が制作・拡散していた映像を再編集したもの。踊りやラップの映像に続いて本人が登場
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、AI動画を公式PRに利用した。
「25年2月、『AIアクションサミット』の前日に、マクロン大統領が、踊ったり、ラップをしたりする自身のAI動画を公開しました。もともとは第三者が大統領をイジるために作った映像でしたが、最後に本人が登場し、『よくできていて笑ってしまった』と受け止めた上で、AIサミットの宣伝につなげました。
面白いと評価された一方で、『偽情報対策を訴える大統領がディープフェイクを使うのは矛盾している』という批判もありました」(前出・里下さん)
イギリスのアンディ・バーナム首相は、政策発表そのものをショート動画にしている。イギリス在住のNaoさんはこう語る。
「複数のSNSを使い分け、幅広い世代に発信しています。光熱費にかかる税金をカットすると宣言した動画は、ニューヨーク市長のゾーラン・マムダニ氏の投稿に似ていることでも話題になりました。
TikTokなどで初めて首相の顔や声を認識した若者もいて、政治を知る入り口としては悪くないという評価もある一方で、外交や安全保障などの重大な問題については、伝統的な形式で説明してほしいという意見も目立ちます」
(左)【ショート動画で政策発信型】アンディ・バーナム首相(イギリス)《Instagramフォロワー》約63万人 今年7月、就任3日目にはイギリスで人気のTikToker「バスおばさん」(左)と共演。バス運賃を抑える政策をショート動画で発表し、若者にアピールした (右)【Facebookおじさん型】アンワル・イブラヒム首相(マレーシア)《Facebookフォロワー》約345万人 アンワル首相は、Facebookに1日平均8件以上を投稿。「着ていたシャツが破れちゃったけどOK」と笑う動画には、約2万6000件
続いては、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相。現地在住の森純さんはこう話す。
「アンワル首相は79歳ですが、Facebookには直近で1日平均8件以上を投稿し、若者に人気のTikTokにも力を入れています。内容は表敬訪問、会議、視察など公務の記録が中心ですが、ムエタイ選手とファイティングポーズを取るなど、親しみやすい姿も見せています。
マレーシアは民族や宗教が多様で、価値観の衝突が起きやすい国です。投稿数は多いものの目立った失言や炎上が少ないのは、内容にかなり気を配っているからでしょう」
その対極にいるのが、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領だ。Xでは批判的な政治家や記者に「薄汚い女」「連中が泣く姿は何物にも代え難い」などと激しい言葉で応酬し、支持者も攻撃に参戦。大統領自ら、フォロワーを巻き込み、日々激しいレスバトルを繰り広げている。
(左)【支持者巻き込みレスバ型】ハビエル・ミレイ大統領(アルゼンチン)《Instagramフォロワー》約639万人 ミレイ大統領からの攻撃を訴えた女性記者を支持者がSNSで揶揄すると、ミレイ氏も引用し、「薄汚い女」「連中が泣く姿は何物にも代え難い」と攻撃を重ねた (右)【治安政策シネマ化型】ナジブ・ブケレ大統領(エルサルバドル)《Facebookフォロワー》約1500万人 ギャング対策で拘束した約2000人を巨大刑務所「CECOT」へ移送する動画を公開。収容者や武装部隊を映画のような映像で見せ、「強い国家
エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、ギャング対策を映画さながらの動画にして発信。武装部隊や収容者、巨大刑務所を緊迫した音楽と映像で見せ、犯罪に屈しない強い国家を演出している。一方、大量拘束や人権侵害への批判も根強い。
発信スタイルはさまざまだが、首脳のSNSが注目を集める点は共通している。なぜ人々はここまで引きつけられるのか。政治コミュニケーションに詳しい日本大学法学部の三谷文栄(ふみえ)准教授はこう語る。
「SNSには、テレビや新聞にはない"双方向性"があります。応援でも批判でも、首脳へ直接反応を届けられる。本人が読んでいるかは別として、見る側は『首脳と同じ場所にいる』という近さを感じるのだと思います」
だが、親近感を覚えるからといって、首脳の投稿を単なる私的なつぶやきとして受け取るべきではないという。
「個人名義でも、首相や大統領が公に発信する以上、単なる個人の見解とは言えません。SNSでは公私の境界が曖昧になりがちですが、投稿ひとつが外交や経済、その国のイメージに影響する可能性があります」
高市首相がXに投稿した睡眠時間や家事の話も、本人にとっては近況報告なのかもしれない。しかし、受け手はそこから首相の働き方や体調、政権の状態まで読み取ろうとする。
「趣味や日常を伝える投稿は一見すると何げないものに見えます。しかし、首脳の場合は、専門スタッフの管理の下、どんな反応が起きるかまで考えられた上で発信されているはずです。
私たちは首脳の日常をのぞいているようで、実際には"見せるために選ばれた日常"を見ている。そのことは意識しておく必要があると思います」