
当サイトでは当社の提携先等がお客様のニーズ等について調査・分析したり、お客様にお勧めの広告を表⽰する⽬的で Cookie を使⽤する場合があります。
詳しくはこちら
ゆでたまご嶋田隆司先生(右)と柔術家で嶋田先生の技術指導をしている井賀 孝氏
この夏、来たる8月15・16日の2日間にわたり、人気漫画『キン肉マン』の名を冠したアマチュア柔術大会「キン肉マン杯(カップ)2026」が、東京都墨田区のひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)にて開催される。
ASJJF(アジアスポーツ柔術連盟)が主催するこの大会概要が発表されたのは今春4月のことだが、昨今の静かな柔術人気の高まりに加え『キン肉マン』という作品知名度の効果もあり、公開直後から大会エントリー希望者が殺到。
![]()
エントリー受付が約1600名を超えた時点で早々に定員オーバーの判断となり、参加募集が打ち切られたという業界大注目の大会となっている。
そして最近、61歳から始めた柔術がもはや生き甲斐になっていると語る『キン肉マン』作者ゆでたまごの原作シナリオ担当・嶋田隆司先生もこの大会初日、8月15日(土)にマスタ-61の部で選手のひとりとして出場予定だ。
ただでさえ暑い夏を、さらに熱くするこの大会、そこに向けての道場での練習風景を取材させてもらいつつ、すっかり虜(とりこ)になった柔術という競技の魅力と夏の試合にかける思いをゆでたまご嶋田隆司先生に、そして主にその技術指導を担われてきた柔術家・井賀 孝先生にも、練習に励む嶋田先生の普段からの様子を聞いてみた。
――まずは、そもそもの話なのですが、嶋田先生が60歳を超えてから柔術を始められたのは、何がきっかけだったんでしょうか?
嶋田 柔術への興味自体は昔からずっとありまして、ちょうど今から30年ほど前、それを本格的に学べる正道会館柔術クラスというのが日本で初めてできたんですけど、そこに少し通ってみたこともあるんです。だけど、当時はあまり面白さがわからず、すぐやめてしまったんです。その間に、柔術は大幅に技術的進化を遂げて、今ではあの頃と比較にならないほど複雑で奥深いものになってる。
60歳を超えた頃ですかね。何か新しいことをしてみたいと思い立った時に、今ならちゃんと柔術の面白さがわかるかもしれないと再チャレンジしてみることにしたんです。
![]()
――普段から漫画の取材も兼ねて、プロレスやMMAなど様々な格闘技をご覧になられていると思うんですが、その中で特に柔術を選ばれたのは?
嶋田 僕らの場合は、やっぱり漫画で新しい技をどんどん作っていかなきゃいけない、というプレッシャーを常に抱えているわけですけど、そのヒントになる部分が圧倒的に多い気がしたんです。今も言ったように現在進行形でどんどん技術が進化しているという理由もありますが、実際やってみたら、常に新しい発見がいくつもあり、それを普段描いてる漫画に活かせてるという思いはあります。
僕にとっては今日もレッスンを施(ほどこ)していただいている井賀先生の影響も大きいですね。前々から交流があった井賀先生の指導を、僕が普段住んでる高円寺で直接受けられる機会に恵まれた、というのも大きな決め手になったと思います。
![]()
――井賀先生とは以前からのお知り合いだったんですね。
嶋田 はい、あれはもう25年くらい前でしたっけね?
井賀 ええ、最初はブラジルで。
――え、ブラジルですか!?
嶋田 大きな格闘技の大会があってその観戦のために遠征した時に、たまたま井賀先生もいらっしゃってて。
井賀 その会場で私からご挨拶させていただいて、そこからのご縁ですね。
![]()
――それだけ長い交流があった中で、嶋田先生がいよいよ柔術を始めたいとおっしゃられた時には井賀先生も驚かれたのでは?
井賀 いえ、嶋田先生は前に総合格闘技のジムに通っていらっしゃったのも存じてましたし、それに年齢的にはいくつからでも始められるのが柔術のいいところですから、驚きはなかったですね。
――柔術に年齢制限はないとのことですが実際、たとえば40代や50代くらいから、それも格闘技経験なしですんなり始められるものなんでしょうか?
井賀 そうですね。見た目はハードに見えますけど、よく言われるのは寝技が主体なので、顔を殴ったり殴られたり、という直感的な恐怖を覚える攻防は少ないんです。そういう意味で、これまで格闘技経験がない人でも抵抗感なく入りやすい、すなわち他の競技では敬遠されがちな実践練習に比較的入りやすい、というのがまずあると思います。
人によって身体の柔らかさや力の強さなど基礎能力の差は必ずありますけど、柔術のいいところは技数がものすごく豊富なので、極端な話、全部はできなくていいんですよ。その人に合わせて、自分はこういう動きは得意だからここを伸ばそう、逆にここは苦手だから最低限だけできればいい、みたいなカスタマイズができるんです。そうなると、個々の得手不得手を活かした戦術で勝負できるというのも老若男女に優しい競技といえるところかと思います。
さらに、寝技を本格的にやり出して仕掛けと防御のコツがある程度までわかってくると、相手とお互いの体を使ったゲームをしているような感覚になってきて「今日は勝った負けた」という話ができるのが楽しい、という方はよくいらっしゃいます。私はふたつの道場で教えてるんですけど、実際どちらも、30代、40代から試しに始めてみてハマッたという方が大勢います。
![]()
嶋田 まさにそうなんですよ。最初は何を仕掛けられてもどう対処していいかわからない、というのでやられてばかりだったんですけど、だんだんわかってくるとひとつひとつの動きの中に相手の攻撃意図が見えてくるんです。じゃあ、それを防ぐにはどうしたらいいかという動きができるようになり、そこから逆に仕掛け返したりすることもできる。
――まさにチェスのようですね。そのやりとりの中で最も楽しい瞬間というのは?
嶋田 それはやっぱり、先読みして自分の思惑通りにしっかり技を極めていけたときですね。もちろんレベルが違う、絶対勝てないだろうという相手も中にはいるんですけど、何度もやるうちにそういう人から、本当に難しいですけど、一本でも取れた瞬間は、もうめちゃくちゃ嬉しいですね!
――ここまでのお話からすると嶋田先生は、スパーリングが特に楽しい?
嶋田 ええ、もう実戦が一番楽しいです!
井賀 嶋田先生の場合は完全にそうですね。闘うのが大好きな生粋のファイター、思えば出会った頃からそういう方でした(笑)。
![]()
――実際に井賀先生から見て、嶋田先生はどういう生徒さんですか?
井賀 とにかく闘争心が前面に出ているというのは今言った通りですけど、あと我慢強い。こっちから「大丈夫ですか?」とか「水飲みますか?」って聞かないと、痛いとか疲れたとか自分からは一切、言わない。よく言えば根性がすごい。
――確かに嶋田先生、普段の漫画の連載も自分から休みたいっておっしゃることはまずありませんものね。
嶋田 そうですね。それは同じ話かも知れないですね。
井賀 でも、それは私たちインストラクターからするとちょっと困ったところでもあって、柔術ってあまり我慢しすぎると危ないんですね。関節技のかかりが強いと骨や靭帯を痛めることもありますし、絞め技だと落とされてしまうこともある。
嶋田 実際に僕、試合でも2回落とされてますから。
井賀 だけど本当にそれはやめてほしくて、苦しい時はちゃんとタップしましょうっていつも言うんですけど、なかなか聞いてくれない。あんまり聞いてくれないと、私の指導が悪いんじゃないかって批判されますんで(苦笑)。でも、やはり漫画の世界でも第一線で闘い抜かれてきた人だなと、不屈の精神を感じます。
![]()
――柔術を始められる前と後で、変わったなと思われるところはおありですか?
嶋田 それはものすごくあります。漫画だけやってた頃は毎週しんどい、しんどいって心の中で思いながらなんとかこなしてたところもあるんですけど、あんまりそういう慢性的な疲労感は感じなくなりましたね。実際、相棒(ゆでたまご作画担当・中井義則先生)にもよく言われるんですよ。最近、顔が生き生きしてきたなって。
井賀 どんどん若々しくなってますよね。体形も始めた4年前から比べるとかなりスリムになられて、動きも今のほうがよくなってますし。健康にもいい影響を与えられているんじゃないかと思います。とはいえ、嶋田先生の場合は膝の調子が万全でないのはわかってますから、そこは僕も注意して見ながらやってますけど。
嶋田 でも、ここに来るとワクワクして、膝の痛みも忘れてしまうんですよね。
井賀 その膝の影響で、少し前までしばらく練習休まれてたんですけど、復帰初日に自ら志願していきなり5分のスパーリング4本やって帰られましたからね。
嶋田 ずっと我慢してウズウズしてましたんで(笑)。
![]()
――まもなく8月15日・16日には東京・墨田区で「キン肉マン杯2026」という作品名を冠した柔術大会も開催されます。そこには嶋田先生もご出場予定と聞いてますが、そこに向けて、という気持ちも大きいんでしょうか?
嶋田 はい、これまでもいくつか大会には出てきましたけど、さすがにこの名前の大会で僕が出ないわけにはいかないなと(笑)。
――開催の発表直後からエントリーが殺到して、1,600名ほどにまで達した時点で早々に参加募集が締め切られたとか?
嶋田 あまりの反響の大きさにビックリしてます(笑)。でも、柔術は自分でやってみても本当にいい競技だと思ってますし、競技人口の底上げにも貢献したかったので、嬉しいですね。僕が出場する61歳以上の部門も、普段は参加者があまり多くはないんですよ。でも今回はたくさんの方がエントリーされているようなので、ライバルは多いですが、今からどんな試合ができるかと、ものすごく楽しみな半面、緊張もしています。
![]()
――とはいえ膝のこともありますので、ご無理されすぎない範囲で頑張ってください!
嶋田 はい。漫画の仕事と同時並行で、今はそこに残りの全てをかけるつもりで気合いを入れて準備に励んでます。青帯クラスですし厳しい闘いになると思いますが......なんとか勝ちたいなぁ~~~(笑)。
![]()
●井賀 孝(TAKASHI IGA)
1970年生まれ、和歌山県出身。ブラジリアン柔術黒帯三段の実力を持ち、トライフォース高尾 & トライフォース高円寺で柔術の指導も行なっている。本業は写真家で、3ヵ月間ブラジルに滞在し、ブラジリアン柔術の本場を目の当たりにしてきた伝説の著書『ブラジリアン バーリトゥード』(情報センター出版局)などがある
【取材協力】
トライフォース柔術アカデミー 高円寺支部
TRY-FORCE KOENJI
東京都杉並区高円寺北2-41-18 1F
https://team-acjc.com/
