必読!! 巨大地震発生時のクルマ&バイク緊急対応術を徹底解説

取材・文/週プレ自動車班 写真/共同通信社

熊本県氷川町では地震の影響で道路が大きく変形。信号も停電で機能しなくなり、ドライバーは普段とはまったく異なる状況への対応を迫られた熊本県氷川町では地震の影響で道路が大きく変形。信号も停電で機能しなくなり、ドライバーは普段とはまったく異なる状況への対応を迫られた

一瞬で日常を奪う地震。その恐ろしさは計り知れない。もし、その瞬間がクルマやバイクの運転中だったら......。

慌てた操作は追突や多重事故を招きかねない。自分の命を守り、二次事故を防ぐためには何をすべきか。クルマ&バイクユーザーが知っておくべき対応術を専門家に聞いた。

【走行中を襲う突然の大地震】

7月28日に熊本県で最大震度7を観測した地震では、発生直後から激しく揺れる車内や、道路の異変をとらえたドライブレコーダー映像がSNSに相次いで投稿された。車内から聞こえる「ヤバい!」「マジか!?」「えっ、どうすればいいの?」という声は、突然の激しい揺れに襲われた人々の恐怖と混乱を物語っていた。

問題は、その瞬間が走行中に訪れる可能性があること。走行中に被災した際、何を知っておくべきなのか。

自動車誌の編集者は言う。

「突然ブレーキを踏んで急減速するのは危険です。後続車に追突され、大きな事故につながる恐れがあります」

重要なのは慌てることなく、周囲に異常を知らせながら安全に速度を落とすこと。

自動車ジャーナリストの桃田健史氏も、冷静な判断の重要性を強調する。

「大切なのは慌てず冷静に行動すること。走行中は地震の揺れを感じにくい場合もありますが、大きな揺れを感じたら周囲を確認し、ハザードランプを点灯させ、減速して安全な場所に停止します」

地震の揺れが収まった後、注意すべきなのが道路の損傷。

「道路の陥没や隆起によってタイヤを傷めれば、その場から動けなくなる可能性があります。実際に大規模地震では、タイヤが破損して立ち往生するクルマもあります。車高の高いSUVや本格的な四輪駆動車でも油断はできません」

では、普段からどのような備えが必要なのだろうか。

「クルマはガソリン満タン、EVならフル充電を意識する。特に揺れの小さな地震(前震)が続いているような状況では、いざというときに備えて早めに準備しておくこと」

さらに、災害時にクルマをどう利用するかを家族で話し合っておくことも重要だ。

「水、長期保存できる食料、簡易トイレ、水を使わないドライシャンプー、毛布、長靴、ポータブル電源など、必要な物資の備蓄も検討する」

すべてを常時車載する必要はないが、外出先で被災する可能性を考えれば、最低限の防災用品を積んでおくことは大きな助けになる。桃田氏自身も、地震が相次いだ時期に備えを強化したという。

「ポータブル電源や太陽光パネルなどを準備しました。災害への備えは、必要だと思ったときが行動するタイミングです。後回しにせず、できることから一日でも早く準備しておくことが大切です」

【地震発生時、ライダーはどう動くべきか?】

JAMA(日本自動車工業会)のデータなどによると、国内で保有されている二輪車は1000万台以上。通勤や通学、日常の移動手段として利用する人も多く、大地震はライダーにとっても決して人ごとではない。

モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏は言う。

「クルマの運転中に大地震が発生した場合の対処法は警察庁などから案内されていますが、バイクも基本的な考え方は大きく変わりません。まずは落ち着いてアクセルを戻し、周囲の交通状況を確認しながら徐々に速度を落としてください。その上で、可能な限り道路の左側へ寄せ、安全な場所に停車します。

ウインカーやハザードランプなどを使って後続車に停止の意思を伝えてください。停止したらエンジンを切り、車両が不用意に動き出さない状態にしておきます」

災害時に備えた携行品も重要だという。

「ファーストエイドキット、懐中電灯、小型ラジオ、予備電池、モバイルバッテリー、パンク修理キット、工具、ダクトテープなどを携行しておくと安心です」

【東日本大震災で見た想定を超える道路の現実】

では、実際に大地震に遭遇すると、道路はどう変わるのか。青木氏は東日本大震災で、その現実を目の当たりにしている。 2011年3月11日、青木氏は千葉県幕張市でバイク専門誌の撮影中だった。

「高層ビルが地震後も揺れていました。埋め立て地だったため、地面から水が噴き出し、液状化が広がっていった」

撮影は中止となり、それぞれ帰宅することになったが、公共交通機関は停止。道路は激しい渋滞に陥っていた。

青木氏は、運転経験の浅い女性ライダーと共に大型バイクで都内を目指した。

「自分ひとりなら状況に応じて走れます。しかし経験の浅いライダーを連れていたので、無理な走りはできません」

幹線道路を選び、慎重に走行する途中、液状化で水浸しになった場所で転倒したビッグスクーターのライダーを見かけた。

「すぐにバイクを起こすのを手伝い、ケガがないことを確認して『ゆっくり走りましょう』と声をかけました」

熊本県八代市で地震により歩道部分が崩落した橋。大地震発生時は、道路も交通も周囲の状況も、普段とは違うと考えておきたい熊本県八代市で地震により歩道部分が崩落した橋。大地震発生時は、道路も交通も周囲の状況も、普段とは違うと考えておきたい

災害時、普段はなんでもない道が豹変し、牙をむく。

「道路に大きな亀裂が走り、そこから水が噴き出し、路面は濡れ、隆起や陥没も発生していました。そうなると、車種による走破性の違いがはっきり出てきます」

停電で信号が消えた交差点もあった。

「左右を確認して、とにかくゆっくり走りました」

その後、女性ライダーを無事に自宅近くまで送り届け、青木氏自身も帰宅した。一方、同じ日にクルマで埼玉県へ向かったカメラマンは、帰宅まで24時間以上を費やした。

東日本大震災では、普段なら問題なく通れる道路が、わずか数分で危険地帯へと変わった。そこで青木氏が痛感したのは、災害時には「普段どおりの走行」は一切通用しないという現実だった。

「道路も、交通量も、歩行者の動きも、信号も、すべてが普段とは違う状況になります。だからこそ、速度を落とし、周囲をよく見て、絶対に無理をしないこと。それが災害時の全ドライバーに求められる走り方だと思います」

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