大谷は今季から交流戦のナ球団主催試合でも指名打者として出場できるようになり、起用法がより柔軟になる 大谷は今季から交流戦のナ球団主催試合でも指名打者として出場できるようになり、起用法がより柔軟になる

米メジャーリーグ(以下、MLB)のルール変更が、日本野球界にも波紋を広げている。新たな労使協定により、アメリカン・リーグに加えて今季からナショナル・リーグでも指名打者(DH)制が実施されることになったのだ。スポーツ紙デスクが解説する。

「日本のプロ野球では、MLBでのルール変更を数年以内に導入するのが通例です。走者に対する捕手のブロックを禁じるコリジョンルールやビデオ判定などもMLBからの"輸入例"。今回の決定を受けて、早ければ今秋にもセ・リーグへのDH制導入の議論が行なわれ、2023年シーズンから実現する可能性があります」

近年セ・リーグでは、巨人・原辰徳監督が"改革派"としてDH制導入を熱心に訴えてきた。

「より強い、魅力的な野球をするためにはセにもDHが必要だとして、巨人は20年オフに理事会で導入を提案しました。当時、巨人は日本シリーズでソフトバンクに2年連続4連敗を喫しており、DH制の優位性がちまたでも指摘されていた。

そのため一部には『導入提案は原監督の負け惜しみでは』という見方もあり、他球団の猛反対に遭(あ)って頓挫したのですが、今回のメジャーのDH完全導入は間違いなく後押しとなるでしょうね」

ただ、セ・リーグへのDH制導入についてはファンの間でも賛否両論。「野球が攻撃的になる」「投打ともレベルが上がる」という賛成派に対し、反対派は「投手の打撃も野球の一部」「投手に代打を送り継投する戦術も見どころ」と主張する。

また、日米ともに経営者側からは、「レギュラー選手がひとり増えて年俸総額が高騰する」との慎重意見も根強かった。MLBはそれを押し切って導入を決めたわけだ。

「セ・リーグで反対の度合いが強いのは、資金力が豊富とはいえない広島、中日。また、阪神もやや消極的な立場です。一方、DeNAとヤクルトは決して推進派ではありませんが、流れができれば従うといった印象です」

MLBコミッショナーは「両リーグDH制と補償ドラフト指名権の廃止でFA市場を活性化する」と、導入の狙いを発表しているが、もちろん各チームの戦術も変わる。例えば、二刀流のエンゼルス・大谷翔平にとっては、交流戦のナ球団主催試合でも指名打者として出場できるようになるメリットが大きい。

一方、日本では、セ・リーグがDHを導入することで思わぬ影響が広がる可能性もある。スポーツライターの木村公一氏が言う。

「現在、世界の主たる野球リーグや国際大会はプロ・アマ問わずほとんどがDH制。これでMLBのナ・リーグに続き、日本のセ・リーグも"陥落"となれば、野球はDH制の競技であるという流れが完全に確立されます。

そうなったとき、今も9人制を維持している日本の高校野球や東京六大学リーグなどはどう対処するのか。特に高校野球がDH制を導入した場合、ルール上はあえてDHなしで試合に臨むことは可能ですが、そうはいっても"エース兼主軸打者"という存在はグッと少なくなるでしょう。そんななかで、大谷のような規格外の才能をいかにして拾い上げ、育てていくのかが問われます」

昨年からついに甲子園での球数制限を導入した高校野球界にも、さらなる改革の波が押し寄せる?