【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】マクラーレン競争力アップ、フェラーリ奮闘、アントネッリ4連勝は? カナダGPから目が離せない!!

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

第2戦の中国GPで初勝利を挙げると、日本GP、マミアミGPと3戦連続でポール・トゥ・ウインを達成。ラッセルに20点差をつけて王座争いをリードするアントネッリ(中央)第2戦の中国GPで初勝利を挙げると、日本GP、マミアミGPと3戦連続でポール・トゥ・ウインを達成。ラッセルに20点差をつけて王座争いをリードするアントネッリ(中央)

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE49

ドライバーや世界中のファンから不満が出ていたパワーユニット(PU)のレギュレーションが来年から変更される見通しとなった。

2026年から導入された新規則では、エンジンと電気モーターの出力比率が50対50に設定されたが、ドライバーたちからは「レースがエネルギーマネージメントに終始し、全開で攻められない」などと不満の声が上がっていた。

そこで国際自動車連盟(FIA)と各PUメーカーは、2027年からエンジン出力を向上させ、モーター出力を削減することで基本合意した。

これによってドライバーがより直感的にマシンをドライビングできるようになるという。F1は新たな方向性を示したが、今シーズンは基本的に現行のルールを微調整して戦われる。

開幕からの4戦はメルセデスがすべてを制し、第2戦の中国GP以降の3戦はデビュー2年目の19歳、キミ・アントネッリが3連勝を飾っている。第5戦のカナダGP(決勝5月25日)でメルセデスとアントネッリの連勝を止めるチームは出てくるのか!?

* * *

【PU規則が2027年から急きょ変更へ】

第4戦のマイアミGP終了後、FIAは2027年からPUのレギュレーションが変更される方針が決まったと発表しました。エンジンの出力を向上させると同時にモーター出力を削減。昨年までのようにドライバーが自然にマシンをドライブできるようになるようです。

僕としてはずっと望んでいたことです。前回も言いましたが、F1はシンプルに誰が一番速いかを競い合うスポーツです。そのためにドライバーが世界最速のマシンの速さを引き出し、限界ギリギリのバトルを繰り広げる。その姿にみんなワクワクしているんです。

バッテリーの残量の有無で追い抜きが決まったり、エネルギーマネージメントが上手いドライバーが勝ったりするのは、F1の本質から外れているのではないか。同じことを多くのファンやドライバーも感じていたのではないでしょうか。

だから、FIAは急きょレギュレーションを変更し、いい未来をつくっていこうと動き始めた。ファンのひとりとしてすごく良かったと思っています。

第4戦のマイアミGPではエネルギー回生に関するレギュレーションが微調整され、特に予選に関してはドライバーたちからも「全開で走れる時間が長くなった」と前向きなコメントが出ていました。

もちろん細かいところを見れば、まだまだ課題はありますが、F1は間違いなくいい方向に一歩を踏み出しました。これからはあまりネガティブなことばかり考えず、レースを楽しもうと思っています。

【競争力アップに成功したマクラーレン】

中東情勢の悪化により、4月中に開催予定だったバーレーンとサウジアラビアの2イベントが中止となったため、マイアミGPは約1ヵ月振りのレースとなりました。このインターバルの間に多くのチームがマシンをアップデートしてきましたが、マクラーレンとレッドブルがいい仕事をしてきましたね。

マシンのアップデートに大成功し、マクラーレンはマイアミGPのスプリントでワンツー・フィニッシュを達成。昨年のチャンピオンチームが優勝争いに加わってきたマシンのアップデートに大成功し、マクラーレンはマイアミGPのスプリントでワンツー・フィニッシュを達成。昨年のチャンピオンチームが優勝争いに加わってきた

マクラーレンはスプリントレースでワンツー・フィニッシュを決め、決勝では昨年チャンピオンのランド・ノリス選手が2位、オスカー・ピアストリ選手が3位でダブル表彰台を獲得。ここ数年、マクラーレンはシーズン中の改良によってマシンの競争力を大幅に向上させていますが、彼らの修正能力は本当にすごい。

マクラーレンはメルセデス製のPUについて開幕からの数戦で学んだと思います。これからどんどん伸びてくる可能性はある。

開幕から苦戦していたレッドブルも、マシンは間違いなく上向きになっているように見えました。マックス・フェルスタッペン選手がポールポジション争いを演じて予選で2位を獲得し、決勝でも5位でフィニッシュしています。

ただアイザック・ハジャー選手がレース序盤にクラッシュしてしまったので、本当の実力は見えづらいところがありました。

各セッションでフェルスタッペン選手とハジャー選手のタイム差が大きかったことも気になっています。今年のレッドブルのマシンはレギュレーションが大きく変わったこともあり、ニュートラルな特性のマシンという印象がありました。

ただしフェルスタッペン選手は極端にフロントが強いオーバーステア傾向のマシンが好みです。その方向に開発は進んでいくと思うので、そうなるとハジャー選手は合わせづらくなっていくのかな......。

過去のレッドブルのセカンドドライバーたち、ピエール・ガスリー選手やアレックス・アルボン選手、そして角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手がたどってきた道をハジャー選手も繰り返すことになるのかもしれません。そうした懸念がマイアミで見えた気がしました。

【フェラーリのアップデートは微妙】

「今年のマシンは良さそう!」と感じていたフェラーリも、マイマミで大がかりなアップデートを持ち込んできました。メルセデスに肉薄することを期待していたのですが、レースを見る限り、アップデートの効果をあまり感じられません。

ルイス・ハミルトン選手はレース序盤にほかのマシンと接触して空力パーツにダメージを受けたことが影響し、目立ったところがなかったですが(6位入賞)、ルクレール選手のポジションが今のフェラーリの実力をあらわしていると思います。

ルクレール選手はマイアミの予選で3番手に入りますが、レースになると防戦一方の展開でした。それでもレース終盤までマクラーレンのピアストリ選手と3位争いを演じますが、最終ラップにスピン。

なんとか6位でゴールしたものの、ダメージを受けたマシンでコース外を走行してアドバンテージを得たとして20秒のタイムペナルティが科され、最終的には8位に終わります。

ルクレール本人はレース後、自分を責めているような言葉を口にしていましたが、彼はマシンの力を最大限まで引き出していたと思います。スピンがなくてもピアストリ選手には抜かれていたと思います。

現状フェラーリの実力は、メルセデス、マクラーレンに続く3番手だと思いました。スタートの優位性と"マカレナ・ウイング"と呼ばれる回転式リアウイングに代表される空力性能を武器になんとかポジションをキープしていますが、後ろからレッドブルも迫ってきています。

ここ数年、フェラーリはシーズン中の開発がうまくいっていませんが、今年のマシンは素性が良さそうなので、いい方向にアップデートを進めて、メルセデスに対抗していってほしいと思います。

【メルセデスはカナダで改良型マシンを投入】

開幕から連勝を続けるメルセデスはマイアミにほとんどアップデートを持ち込んでいませんでした。そんな中でも19歳のキミ・アントネッリ選手がマイミアGPを制し、初優勝から3連続ポール・トゥ・ウインを達成します、これは史上初の快挙です!

初ポールポジションから3連続でポールを獲得したのは過去にアイルトン・セナ選手(1985年)とミハエル・シューマッハ選手(1994年)のみ。初優勝から3連勝を達成したのは過去にデーモン・ヒル選手(1993年)とミカ・ハッキネン選手(1997年~98年)だけです。

過去の偉大なチャンピオンたちも達成できなかった3連続ポール・トゥ・ウインの偉業を成し遂げたアントネッリ選手がこのまま勢いに乗ると、タイトル戦線を突っ走ってしまう可能性があります。チームメイトのジョージ・ラッセル選手には頑張ってもらわないと。

ただ、F1参戦2シーズン目のアントネッリ選手にとってチャンピオン争いは初めての経験です。この先ミスはあるだろうし、さまざまなトラブルにも見舞われ、苦境に立たされることはあると思います。

昨シーズンのピアストリ選手もそうでした。難しい状況に陥ったときにどう修正して、立て直すことができるのか? そこでドライバーの真価が問われます。アントネッリ選手がどんな戦いをしてくれるのか。これから、いろんなシーンが見られるのではないでしょうか。

個人的には、アントネッリ選手にはセナ選手やシューマッハ選手のように、F1界を背負うスーパースターになってほしい。そして最終的にはイタリア人ドライバーとしてフェラーリに乗ってくれたらうれしいですね。

カナダGPはアントネッリ選手の4連勝がかかっていますが、メルセデスはモントリオールに大型のアップデートパッケージを持ち込むと言われています。ファンとしては、チャンピオン争いを独走するメルセデスには、これ以上速くならないでほしいけれど......(笑)。

カナダGPの舞台となるジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは長いストレートとシケインが組み合わされたストップ&ゴーのコースで、最高出力やエネルギー回生に優れたメルセデス製のPUを搭載するチームが強そうです。

でもエスケープゾーンが狭いために大きなクラッシュが多く、荒れた展開になることも少なくありません。しかも新レギュレーション初年度なので、不確定要素が多い。カナダGPは目が離せないレースになりそうです!

☆取材こぼれ話☆

FIA(国際自動車連盟)のモハメド・ベン・スレイエム会長は2030年か31年に、F1で自然吸気(NA)のV8エンジンを復活させることを提言している。

100%持続可能燃料と組み合わせることで、コストを抑え、マシンの軽量化にもつながり、バトルも増えるのではないかと語っている。

「ターボがなくなってNAになれば、迫力あるエンジンサウンドが復活しますし、僕は大歓迎ですね。ただ今年から新規参戦したアウディの市販モデルは、ターボエンジンが主流ですからね。ターボを外すは難しいかもしれないなあ......。

ハイブリッドをどうするのかという議論もあるので、まだ詰めることはたくさんあると思いますが、個人的には2030年とか31年とは言わずに、もっと早くNAのV8エンジンを導入してほしいです」

「2030年とか31年とは言わずに、もっと早くNAのV8エンジンを導入してほしい」と語る堂本光一「2030年とか31年とは言わずに、もっと早くNAのV8エンジンを導入してほしい」と語る堂本光一

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア

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  • 堂本光一

    堂本光一

    Koichi Domoto

    1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
    公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

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