文化理解への第一歩? 各国ポテトチップスの〝デフォルトの味〟を市川紗椰が紹介

ポテチを食べすぎたらこうなるのは世界共通

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「ポテチの〝定番の味〟論」について語る。

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「ポテトチップスの定番の味」と聞くと、何味を思い浮かべますか? 日本ではうす塩、コンソメ、のり塩が王道だと思いますが、実は国によって「ポテチ買ってきて」と言われた際の〝デフォルトの味〟はかなり違う。繊細さか、刺激か、酸味か、甘さか。スーパーのポテチの棚は、その国の食文化、味覚、ちょっとした性格のクセまでを圧縮した展示場です。ひと袋のポテチを開ける行為は、ただのおやつではなく、文化理解への第一歩かも(大げさ)。

日本のうす塩、コンソメ、のり塩の布陣の安定感は、実に優秀。派手すぎず、地味すぎず、しかも永遠に食べられる。特にのり塩は、冷静に考えるとかなり独特です。海藻の粉末をジャガイモに振りかけて「これが定番です」と出すのは、海外目線ではなかなか〝攻めてる〟。それでも、しっくりくる。このなんとなく落ち着く感じに、日本のだし文化や繊細な味覚がにじむのだと思います。ポテチ界における、空気の読める優等生。

一方、アメリカの定番フレーバーは塩のほか、サワークリーム&オニオンやBBQなど、味が濃い。袋を開けた瞬間に、「今日は味覚を休ませる気はありません」と言われるような感じ。BBQソース味なんて、ポテチなのに肉料理のテンションで迫ってきます。アメリカはなんにでもイベント感を持ち込むクセがありますが、その精神はジャガイモにも平等です。

イギリスのデフォルトフレーバーは、ソルト&ビネガーかと。日本ではあまり見ないから、初めて食べると「え、ポテチでむせることってある?」とびっくりするかも? アメリカでも売っていて、実は私が一番好きなポテチの味はこれです(コンソメと迷う)。フィッシュ&チップスに酢をかける文化が、そのままポテチにもスライドしている感じですかね。日本ののり塩とは別ベクトルで、島国らしさが炸裂(さくれつ)しているのが興味深い。チーズ&オニオンも定番だそうです。

そしてドイツや中央ヨーロッパでは、パプリカ味が王道。赤く、香ばしく、ほんのり甘く、安定感がすごい。ソーセージ、肉料理、煮込み文化の延長線上にあると考えると、「ジャガイモにもパプリカを」という発想は極めて自然です。派手さはないが、確実に頼れる。堅実なのにセンスがいい、中央ヨーロッパらしいフレーバーです。

カナダは独自路線で面白い。デフォルトの味は、アメリカでさえほとんど見ないトマトケチャップ味。その名のとおり「ポテトにケチャップをかける」を最短距離で形にした味。そして、カナダでしか見ないオールドレスド味。これは塩、酢、BBQ、サワークリームなどの味を組み合わせた、「全部入りでお願いします」な欲張りフレーバー。カナダ人の穏やかな印象に反して、ポテチはかなり攻めている。

考えてみたら、ポテトチップスほど国民性が出る食べ物も珍しい。ジャガイモを薄く切って揚げただけ。原材料はほぼ同じなのに、調味料ひとつでここまで文化の違いが出る。国が異なると味覚の方向性が変わるのかと思うと、人類の調味料への情熱はなかなか侮れない。次に海外のスーパーへ行ったら、観光地より先にポテチの棚へゴー!

●市川紗椰 
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。ジャガイモがあれば大丈夫。公式Instagram【@its.sayaichikawa】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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