1月19日スタートのTBS日曜劇場『テセウスの船』で連ドラ(ゴールデン帯)初主演となる竹内涼真

役者デビューは2013年、20歳のとき。一般的には"かなり遅いスタート"だ。それがわずか6年と少しで、TBS日曜劇場の主演にまで上り詰めた。どこにでもいそうで、絶対にいない。しなやかで強靱な26歳の魅力に迫った。

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最適解。竹内涼真はそれを見つける嗅覚に長けている俳優だ。

「今、SNSとかネットニュースの世界って、ちょっと意地悪な感じがするときってあるじゃないですか。そこは納得できないという思いと、仕方がないなという思いと両方あります。できる範囲で悪あがきしたいし、でも、そういう風潮に逆らいすぎてもよくないし」

ルックスと人気からアイドルのように見られることもあるし、役柄上「いい人」に見られがちだ。だが、そうした世間の見方にも逆らわない。

「そこは見ているお客さんが決めること。それに、いい人と思われることはありがたいことじゃないですか。ただ、役のイメージがそのまま自分のイメージになるのはちょっと怖いなとは思います。だからといって、めちゃくちゃ悪いやつの役をやって無理にそのイメージを壊そうとも思わないです。

ただ、自分はこうしていきたいんだ、というのは発信し続けないとただの操り人形にいつの間にかなっちゃう気もします。求められることに応じるのはとても大事なんだけど、それだけだとつまらないじゃないですか。そこは自分が勝負しなきゃいけないところだと思ってます」

一見すると角のない、ツルリとした青年に映る。だが、内面には確かな凹凸(おうとつ)があった。

「そりゃあ僕だっていろいろと考えます(笑)。考えないと......っていう感じです」

しなやかで、強靱な26歳。1月から始まる日曜劇場『テセウスの船』の主役の座を射止めた。日曜劇場といえば『半沢直樹』や『下町ロケット』など数々の大ヒットドラマを生んだTBSの伝統と実績を持つ枠だ。

役者デビューは2013年、20歳のとき。それからわずか6年と少しでの大抜擢(ばってき)である。竹内が演じるのは連続毒殺事件の犯人を父に持つ息子の役だ。

「今回、いろいろな人に父と子の関係を聞いて、あるひとつの答えに行き着いたんです。それは『結局、父と子は似てくるんだよね』っていうこと。僕が演じる主人公は父親が殺人事件の犯人なんです。その恐怖、その衝撃を保ちながら演技をするようにしているので、ものすごく集中力を要しますね」

意外にもゴールデン帯での連ドラの主役は初。その責任感、プレッシャーはもちろん、小さくない。

「どんな話題であっても、それが自分のせいであってもなくても、最初に評価を背負うのは主演だと思うんです。それは少し怖いですね。気にしなければいいのかもしれないけど、それも無理な話なので。だからこそやれることだったり、現場で不安があればちゃんと言葉にして、悔いのないように毎日を過ごそうと心がけています」

■何かを実現するために必要なもの

どこにでもいそうで、でも絶対にどこにもいない役者。誤解を恐れずに言えば、竹内の最大の武器は"ベタ"であることだ。そしてそれを微塵(みじん)も恐れない。

「僕は仮面ライダーが好きで、ライダーになりたくてこの世界に入ったんです」

竹内は、なんのためらいもなくそう話す。

「事務所の面接を受けたときも仮面ライダーをやってみたい、と。そうしたら、『なれるよ、君なら』って言われたんです。なので『わかりました、じゃあ、なります』って」

彼のここまでの人生は、大きくふたつのパートに分けられる。ひとつは、サッカーひと筋で過ごした高校生まで。もうひとつは、役者としての道を歩き始めたそれ以降だ。

中学3年生のときまでは「絶対、プロサッカー選手になる」と決めていた。高校時代は東京ヴェルディユースに所属したバリバリのサッカーエリート。だが、そこで挫折を知った。ユース時代、公式戦に一度も出られなかったのだ。

「自分よりうまい人を見て、うわ、あいつには勝てないと思ってしまった。スポーツの世界はそう思った時点で負けなんです。僕のひとつ下で、チームメイトだった中島翔哉(しょうや)選手(FCポルト)にもそう思わされました。

彼は最初から『海外でプレーする、日本代表になる』と、僕よりももっと上を見ていて、その思いの強さが彼を突き動かしていた。一流選手は何よりもまずハートが一流なんです」

プロになる夢は断念したが、高校卒業後、スポーツ推薦でひとまず大学に進学。サッカーをしながら自分の将来についてあらためて考えようと思ったが、かつてのチームメイトたちが次々とプロサッカー選手として活躍する姿に焦りを感じた。そして大学1年の終わり、ひとつの強い感情が湧き起こった。

「ヒーローになりたいな、と。スパイダーマンとかアイアンマンとかマーベルの作品が大好きだったし、『海猿』とか『アンフェア』とか、カッコいいヒーローやヒロインが活躍するようなドラマも大好きだった。これだけ好きなんだから、自分ならできるんじゃないかと。見ているのと反対側に行ってみよう、と。それが演じるということを考えた最初の一歩です」

一念発起し、女性誌のオーディションを受けるとグランプリを獲得。それをきっかけにホリプロにスカウトされ、芸能界に足を踏み入れる。『仮面ライダードライブ』のオーディションを受けたのは、その約1年後だった。

竹内はサッカー時代の失敗から、何かを実現するために必要なものを知っていた。

「僕がライダーのオーディションを受けたとき、明らかにみんなより演技はへたでした。セリフは覚えられないし、どもっちゃうし。でもひたすら、『ここにいる誰よりも僕が一番ライダーになりたいと思ってます』とは伝えようと。で、気づいたらライダーになってました」


■役者の世界で打ちのめされた経験

俳優としての最終目標を問われると「国民的俳優」とさらりと答える。

「細かいことを言うより、わかりやすいじゃないですか。僕は他人の人生の中で、少しでも必要な存在になりたい」

仮面ライダーに国民的俳優。通りで言えば路地ではなく、あくまでメインストリートのど真ん中を行く。

「『ど真ん中を行きますよね?』ってよく言われるんです。僕は『はい、そうですけど』っていう感じで、最初は、そこを聞かれる理由もわからなかった」

役者志望の若者というと、通でなければ知らないような外国の役者や洋画の名前を挙げ、複雑な内面を持つ小難しい役への憧れなどを語りそうなものだが、竹内は、そういったタイプとは対極にいる。

自分が「必要な存在」になるためだったら、写真集を出すこともいとわない。セカンド写真集『1㎜』は8万部、サード写真集『Ryoma Takeuchi』は5万部の大ヒット作に。いずれも男性写真集としては、その年のベストセラーだった。

「最初に写真集を出したときは漠然と出せるんだ、うれしいなって感じだったんですけど、2冊目からはどうして写真集を出すのか考えるようになった。ファンの人は僕をもっと見たいんじゃないかなって。それも携帯の小さな画面とかじゃなくて大きな写真で。それに今の自分を一冊の写真集で表現できるってすごくすてきなことじゃないですか。

3冊目の写真集では、25歳の大人の色気をどうやったら一枚の写真で表現できるかというのを意識しました。カンボジアへ行って集中して撮影と向き合った。写真集を出すのが嫌いな役者さんもいると思うんですけど、僕はやっぱり楽しいんですよ。握手会などのイベントとかも僕は全然恥ずかしくないし、やったほうがいいと思っているんです」

握手会ではきちんと両手でファンの求めに応じ、リクエストがあれば頭をポンポンしたり、顎(あご)のホクロを触らせたりもする。

「ファンの方はこっちの想像を超える要求をしてくることがある。それに対して、そんなんじゃ驚かないよ、って顔で応じると向こうもびっくりするし、喜んでくれる。そういう姿を見ると、やった!って思うんです」

スターとは何か。竹内を見ていると、その答えがいくつも見つかる。

思い描いた自分と、実際の自分。サッカーではうまくいかなかったが、そのふたつの像が今、重なり始めている。

――役者の世界でも、中島翔哉みたいなやつがいて、打ちのめされたことある?

そう聞くと、竹内はさらりとこう言った。

「ないんですよ」

今、役者の世界では、おそらく彼が同世代の中の「中島翔哉」なのだ。

●竹内涼真(たけうち・りょうま)
1993年4月26日生まれ、東京都出身。26歳。血液型=A型。2014年『仮面ライダードライブ』で主演を務める。以降、ドラマ『下町ロケット』、『陸王』(TBS)、『ひよっこ』(NHK)、映画『青空エール』、『帝一の國』などさまざまな作品に出演

■日曜劇場『テセウスの船』(TBS)1月19日(日)21時スタート
平成元年に起きた謎の連続毒殺事件。その犯人は父親―!? 事件直前にタイムスリップした息子は驚愕の真実にぶちあたる! 連ドラ初主演の竹内涼真に加え、榮倉奈々、上野樹里(特別出演)、鈴木亮平も出演

スタイリング/徳永貴士 ヘア&メイク/佐藤友勝

<衣装協力>ニット 38,000円/タクタク(スタジオ・ファブワーク)、シューズ 65,000/パラブーツ(パラブーツ青山店)、パンツ/スタイリスト私物

・スタジオ・ファブワーク 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-6-6 秀和外苑レジデンス306 TEL03-6438-9575
・パラブーツ青山店 〒107-0062 東京都港区南青山6-12-3 TEL03-5766-6688