日本初の「購買景況指数」が示すもの、ボンクラ枠から企業業績に直結へ 

写真/共同通信社

イラン戦争ではタンカーやコンテナ船の海運に頼っているグローバルサプライチェーンが深刻な危機にさらされ、各企業の調達部門は今も状況把握・対応に奔走している(写真はイメージ)イラン戦争ではタンカーやコンテナ船の海運に頼っているグローバルサプライチェーンが深刻な危機にさらされ、各企業の調達部門は今も状況把握・対応に奔走している(写真はイメージ)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「購買景況指数」について。

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「入社試験の成績がもっとも悪いボンクラか、右腕が強いことが条件だ」。

25年前、私は総合電機メーカーに入社し、そして調達部門に配属された。その人材の条件だそうだ。調達とは外部から材料や部品、サービスを買ってくる部門だ。ボンクラは意味はわかりますが、なぜ右腕? 

「カーボン用紙6枚刷の注文書を毎日100セット書き、さらに商談室で机を叩きながら交渉する仕事だから」

真顔でいわれた。社内的には伝票を右から左に流すだけの、最底辺の位置づけだった。のちには「安心しろ。調達システムが導入され、ボンクラの条件だけが残った」だってさ。

それも今は昔。震災やコロナ禍、紛争の際に、企業の調達部門が注目されるようになった。企業にとって、調達できるかできないかで生産が継続できるかが決まるためだ。

売上も利益も調達しだいと理解され始めた。イラン戦争では、原油、LNGやその関連商品のナフサ、ヘリウム、加工品の接着剤や塗料、さらに樹脂部品まで「調達のよしあし」が企業業績に直結するとわかった。

「注文したら届くのが当たり前の世界」だったのが、「うまく調達しないと入手できない世界」になった。

真面目な話、私たち日本企業には「調達の高度化」が必要だ。

難しい話ではない。社会の流れを察知し、他よりも先んじて対策を打つ。取引先にブツの確保を依頼したり、代替先を探したりする。情報が必要だ。

私が調達担当者だったころ、他社の動向がわからず、自社の温度感との比較ができなかった。それから幾星霜(いくせいそう)。今年度より私たちの会社では、日本初の調達・購買に特化した景況指数「JPI(Japan Procurement Index)」の調査を開始した。対象者は企業の調達人材だ。

①購入価格、②入荷遅延、③発注量、④見積依頼数、⑤供給停止打診の5項目について毎月、前月比での変化を回答してもらう。

①が上がったり、②が頻発したりすると、供給が逼迫(ひっぱく)しているとわかる。③や④は今後のビジネスの興隆を示す。⑤は取引先の不採算事業からの撤退や事業停止などリスクを示す。なお、④と⑤の2項目については、国際的にもほぼ先例がない指標となる。

調査は肌感覚での回答にはなるものの、調達とは炭鉱のカナリアであり、外部の企業と触れ合う過程でさまざまな情報を得る。この指数には意味と意義があるはずだ。

たとえば①が上昇し、しかし③が下落していたらコストプッシュ型スタグフレーションの初期を示すだろう。また④は増加しても、⑤も増加しているのであれば、需要はあるのに供給側が断り始めたことを示す。とすれば2~3カ月後には「注文してもブツが来ない」局面がやってくるだろう。

私たちの会社では調達やサプライチェーンのコンサルティングとは別に、同職業人たちのイベントを開催してきた。全国に2万人以上のネットワークを有している。回答協力者も続々と増えている。読者のなかでも参加いただける方がいたらありがたい。なお当指数は非営利事業で、収益化を行なわない。

台湾では業界団体だけではなく、研究機関や政府機関とも連携してこういった指数を運営している。私たちも今後さまざまな展開ができると期待している。ボンクラ枠は指数を創出するにいたった。

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  • 坂口孝則

    坂口孝則

    Takanori SAKAGUCHI

    調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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