規模の王者、効率の鬼、多角化の鬼...急速な改革が求められている調剤薬局業界の今後を占う!

取材・文/逢ヶ瀬十吾、瑠璃光丸凪(A4studio) イラスト/沼田建 写真/共同通信社 時事通信社


処方箋に基づき医薬品を提供する調剤薬局もドラッグストア同様、大手が大手をのみ込む成熟期に入りつつある。業界4位のさくら薬局を買収し、断トツになったアイン薬局に追いつくのはどこか!?【ニッポン経済 令和の業界再編 三国志 Part3.調剤薬局】

*社名、店名表記はホームページに準拠。データは5月7日時点で、店舗数は国内のみで、海外店は含まない。売上高、営業利益、時価総額は運営会社のものを、店舗数はグループ全体ではなく、当該ブランド単体のものを記した。売上高を公表していない企業もあるため、店舗数で順位をつけた。価格はすべて税込みで、店舗によって価格が異なる場合もある

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【立地の戦いからビジネスモデルの戦いへ】

高齢化で医薬品の需要が増していることもあり、急速な改革が求められている調剤薬局。まずは大手3社それぞれの特徴について、日本M&Aセンターで調剤薬局支援部長を務める田島聡士氏に伺った。 

「アイン薬局は昨年5月にさくら薬局買収を発表し、グループ全体で2100店を超えて"規模の王者"となりました。

現在全店で積極的に進めているAI薬歴システムや調剤ロボットなどの高額なテクノロジー投資も、その圧倒的な店舗数によりコストが分散できるというスケールメリットが効きます。さらに採用難易度の高い薬剤師を一気に数千人規模で獲得するなど、買収によるメリットは計り知れません。

なおアインは、美容と健康をテーマにしたドラッグストア『アインズ&トルペ』や雑貨を扱う『フランフラン』など、調剤報酬だけに依存しないモデルを持っていることも強みです」

【売上高1位】アイン薬局(運営会社:アインHD) 《売上高》4568億400万円《営業利益》168億7100万円《時価総額》1952億4500万円《店舗数》1035店 昨年5月に「さくら薬局」の買収を発表。このほか、「あおぞら薬局」や「ファーマシィ薬局」なども展開し、グループ全体で店舗数2100を超える巨大チェーンへと成長。アイン薬局だけで1000店超ある【売上高1位】アイン薬局(運営会社:アインHD) 《売上高》4568億400万円《営業利益》168億7100万円《時価総額》1952億4500万円《店舗数》1035店 昨年5月に「さくら薬局」の買収を発表。このほか、「あおぞら薬局」や「ファーマシィ薬局」なども展開し、グループ全体で店舗数2100を超える巨大チェーンへと成長。アイン薬局だけで1000店超ある
続く日本調剤は?

「ひと言で表すなら"効率の鬼"。店舗数は約760店とアインの3分の1程度ですが、1店当たりの売り上げは約4.3億円と大手3社の中でトップ。また、平均処方箋単価も約1.8万円と、業界内での最高水準です。

こうした効率的な経営を実現している背景には、病院前に出店する"門前型"が店舗数全体の約6割を占めていることが挙げられます。

そのほか『日本ジェネリック』が子会社であることから、医薬品の調剤・製造・販売などを一括管理することで、利益率を最大化できるというメリットも持っています。ちなみに日本調剤は現在株式を非公開化しており、中長期での人材育成やDX投資をファンド主導で進め、抜本的な改革に乗り出しています」

【売上高2位】日本調剤(運営会社:日本調剤) 《売上高》3605億1200万円《営業利益》62億3900万円《時価総額》非上場《店舗数》765店 大病院前に出店する門前薬局モデルを軸に、1店舗当たり約4億円の売り上げを誇る集客力が強み。子会社「日本ジェネリック」による自社製造・販売で利益率を最大化するなど効率重視の傾向がある【売上高2位】日本調剤(運営会社:日本調剤) 《売上高》3605億1200万円《営業利益》62億3900万円《時価総額》非上場《店舗数》765店 大病院前に出店する門前薬局モデルを軸に、1店舗当たり約4億円の売り上げを誇る集客力が強み。子会社「日本ジェネリック」による自社製造・販売で利益率を最大化するなど効率重視の傾向がある
3位のクオール薬局はどうか。

「事業の多角化をうまく進めているのが特徴。薬局事業のほか、近年買収や投資の動きを強めている製薬事業、そして医薬品メーカー向け派遣MR(医薬情報担当者)事業の3本柱で、バランスのいい経営を行なっています。

また、クオールは全国展開していますが、大都市圏での出店比率が高いこともあり、ローソンやビックカメラなど異業種と連携し、駅ナカや街中といった生活圏への出店も強化しているのです」

つまり、同じ調剤薬局でも、各社で取っている戦略は大きく異なるのだ。

【売上高3位】クオール薬局(運営会社:クオールHD) 《売上高》2639億7200万円《営業利益》134億6500万円《時価総額》684億6900万円《店舗数》950店 「第一三共エスファ」を買収したことで製薬事業に着手し、医療従事者の人材派遣事業も行なう。さらにコンビニなどの異業種と連携し出店を拡大するなど、したたかな多角化戦略がうかがえる【売上高3位】クオール薬局(運営会社:クオールHD) 《売上高》2639億7200万円《営業利益》134億6500万円《時価総額》684億6900万円《店舗数》950店 「第一三共エスファ」を買収したことで製薬事業に着手し、医療従事者の人材派遣事業も行なう。さらにコンビニなどの異業種と連携し出店を拡大するなど、したたかな多角化戦略がうかがえる
「これまでは集客力を高めていくための門前型出店戦略など、立地の戦いがメインでした。ところが今後は各社がビジネスモデルを洗練するフェーズへと移行していくでしょう」

また、"規模の争い"も激しくなるという。アイングループが2100店舗を超えたことで、日本調剤やクオールなども買収・M&Aの流れを強めていく可能性があるからだ。

「大手の買収対象になりやすいのは、30~100店舗規模の地域チェーン。地域の患者基盤と医療機関との関係を一括で取得できるため、大手にとって効率的な規模拡大手段になるのです」

今回、東北地方を中心に展開する地域チェーン薬局に7年勤めている薬剤師のBさん(30代男性)に、現場で感じる変化について聞いた。

「最近うちの薬局では、中途採用を停止するなど入社人数を調整するような動きが見られ、薬剤師のパート時給が削減されるといった変化も出てきています。これが業績悪化によるものなのか定かではありませんが、先行きが不安です」

大手薬局の影響について、どう感じているのか。

「地方においても大手の進出はじわじわと感じています。ブランディングもしっかりしていますし、CMなどを使った宣伝広告力もある。いずれ私たちローカル薬局も吸収されるだろうと考えています。

でも大手に統合されれば、近隣店舗同士の連携を強化でき、運営がスムーズになるメリットもある。そのほうが結果的に患者さんたちにとって使いやすい薬局になるのではないかと思います」

最後に田島氏に、どの薬局が最終的に天下を取るのか聞いた。

「1社が独占するのではなく、3つの勝ち方に分かれると考えられます。規模では巨大ドラッグストアとして調剤薬局業界の脅威となっているツルハウエルシアが、調剤の質ではアインが、安定した収益構造ではクオールが天下を三分するのではないでしょうか」

さまざまな展開が予想される調剤薬局業界、覇権争いはまだまだ続きそうだ。

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