
日野秀規
ひの・ひでき
日野秀規の記事一覧
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
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中東も東欧も、戦争はいまだに終結の兆しを見せない。インフレは止まらないのに、賃金は上がらないから生活は苦しい。そんな暗い現実とは裏腹に、株価は楽観的に上昇を続けている。この奇妙な状況をどう見ればいい? このビッグウエーブ、果たして乗るべきか? *本文はすべて5月18日時点のデータ
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GW(ゴールデンウィーク)明けの今月7日、日経平均はたった1日で、過去最大となる3320円もの急騰を見せた。その後は6万3799円の史上最高値をつけるも、世界的なインフレ再燃の兆しを受けた金利上昇のあおりで、6万円付近でしばしうろつく展開となっている。
この1年を振り返ると、日経平均はまさに「大相場(おおそうば)」。昨年5月末の3万7000円台から、7月23日には早くも4万円に到達。わずか3ヵ月後の10月27日には5万円を突破し、それから半年後の4月27日に6万円を突破したのだ。
この間、日経平均の急上昇を演出したものはいったいなんだったのか。まさに今の時期にふさわしい新刊『株はずっと上がるもの 誰も書けなかった株式投資の真実』(日経BP)が注目を集める、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆(ひろき・たかし)氏が解説する。
「生成AIを手がける会社の株が物色され始めたのが2023年頃。そのブームが今や、AIを取り巻くインフラにまで及び、その影響で日経平均が上昇しています。
エヌビディアなどのAI半導体の製造は米国・台湾連合軍の寡占状態にあるものの、AIの用途が急拡大し世界展開が本格化した結果、日本が得意とする半導体の資材や製造装置、メモリー半導体にも、ようやく相場のお鉢が回ってきたんですね」
AIブームは製造インフラまで波及。キオクシアは直近の決算で、純利益が前年同期比48倍になるとの予想を発表した
一方で、日経平均は半導体関連企業や電線メーカーなどの影響力が大きいという特徴があり、これが株価を押し上げている面も少なからずある。そのメカニズムを、株式アナリストの岡村友哉(ゆうや)氏に解説してもらおう。
「日経平均は、基本的には含まれる銘柄の『株価』の平均です。つまり株式時価総額に比例して割合が決まる指数のTOPIXとは異なり、株価が高い『値がさ株』の値動きにより左右されやすい。AI関連銘柄は、この値がさ株が多いんです」
日経平均の比率上位10銘柄のうち、AI関連とされる銘柄はなんと8つ。この8銘柄の、日経平均に占めるウエイトは約36.4%に達する集中ぶりなのだ。岡村氏が続ける。
「ある大手外資系証券が出したリポートによると、機関投資家が日本株を見る際に『AI株か非AI株か』しか見ていないとか。日経平均の展望は、この先のAI投資ブームをどうみるかにかかっています」
気になるのは、ずばり「この先、日経平均はどうなるのか?」だろう。今からでも投資すべきかどうかについて、広木氏に確かめた。
「日経平均は3年連続で3割を超える上昇率を記録しており、これは異例の勢いです。さらにAIブームが続くなら、日経平均7万円はすでに射程距離とみています」
1日3%の上昇が4、5日続けば7万円なので、6月早々に達成されても不思議はないという広木氏。ただ、本命のシナリオは今秋の到達としている。ともあれ、まだまだ投資妙味は残っているということだ。
「正直なところ、この大相場がどこまでいくかは誰にもわかりません。つまり降りたら負けで、乗っていくしかない。ただ、AI以外にも注目を集める市場テーマがこの夏にも出てきます。日本の上場企業を対象とする、コーポレートガバナンス(企業統治)コードの改訂です」
金融庁と東証はタッグを組み、上場企業の体質改善を促す目的で、10年越しでコーポレートガバナンス改革を進めてきた。それがこの夏にもさらに強化され、企業は余剰資金の有効活用という宿題を課せられることが確実視されている。
「これが市場テーマとなり、AI関連以外の銘柄が見直されて、投資資金の目先が変わるかもしれません。そうなれば、足踏みするAI銘柄をそれ以外が支えて、じわじわ7万円を目指す展開もありえそうです」
まとめると、ブームに乗るなら日経平均でOK。新しいテーマが加わった息の長い上昇相場を取るなら、出遅れている個別株で攻めるのが有効ということになりそうだ。その注目株を伺った。
「AIデータセンター建設に不可欠な電線(電力ケーブル、光ファイバー)の国内トップメーカーが住友電工。先に同業のフジクラや古河電工がすさまじい暴騰を見せており、ここからは同社の出番です。
そして忘れてはいけないのがトヨタ自動車。現時点で、PBR(株価を1株当たり純資産で割った指標)0.96倍という割安に沈んでいます。歴史的にはトヨタのPBR1倍割れは、常に投資のチャンスでした」
一方、岡村氏の見通しはやや保守的。ここからは日経平均が勢いを落とし、一直線には上がらなくなる可能性もあるというのだ。
「単純な話で、今のAIブームは業績も利益も見ていないから。フィーバーが不意に終わって、資金がよそに流れても不思議ではないんです」
つまり、日経平均をここから買うのは危険ってこと!?
「それが、そう簡単に言える話でもないのが悩みどころなんです。詳細は省きますが、今の勢いが終わりのあるブームだと考えるのも、息長く続くと考えるのも、どちらも根拠は出せる。わからない中で、AI押しの日経平均に乗るのか、出遅れ銘柄に目を向けるか、という局面です」
注目すべきは、広木氏も岡村氏も、資金がAI関連からその他の企業に流れるシナリオを想定している点だ。前述のトヨタ自動車、そしてソニーグループは両者が名前を挙げた銘柄である。
「このほか、最高純益でも非AIゆえに見過ごされているリクルート、同じく業績堅調で配当利回り3%が魅力のKDDI、優良資産を抱える割安銘柄の三井不動産は、この先に期待できると思います」(岡村氏)
AIブームには日経平均で乗り、その先は個別株で利益を狙うのが最適の立ち回りと言えそうだ。この波、あなたは乗る?
*5月18日時点のデータ。リストの企業はすべて東証プライム市場に上場している
*5月18日時点のデータ。リストの企業はすべて東証プライム市場に上場している
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