
吉井透
吉井透の記事一覧
フリーライター。中国で10年、米国で3年活動したのちに帰国。テキストメディア以外にも、テレビやYoutubeチャンネルなど、映像分野のコーディネーターとしても活動中
法案骨子案では「お子様ランチの日の丸は罰則の対象外」とされたが、損壊罪の対象となる国旗の定義は明確にされていない
5月22日、日本国旗を故意に傷つける行為を処罰化する法案を策定する自民党のプロジェクトチーム(PT)の会合において、法案骨子案が大筋で了承された。
同骨子案では「人に著しく不快または嫌悪の情を催させる状態・方法」で「日本国旗を公然と損壊、除去、汚損する行為」や、「自らその様子をSNSで公開すること」が処罰の対象とされ、罰則は「2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金」とされている。自民党は、今国会中の法案成立を目指すとしている。
ただ党内でも議論が尽くされているとはいえないようだ。慎重派の代表格である岩屋毅元外相はPTの会合後、「憲法問題ですし、国民の内心の自由、表現の自由にまだまだ熟議が必要」と拙速な動きを牽制した。
こうした慎重意見もあるなか、法案成立を急かしているのは、高市首相だという。
党内の慎重論もよそに法案成立を急いでいるとされる高市首相
「同法案の成立には、高市氏が首相就任当初から積極的な姿勢を示しています。高市氏には民主党政権下の2012年、国旗損壊罪の法案提出者に他の野党議員とともに名を連ねたものの、廃案になったという過去がある。
首相就任後はその悲願を叶えるべく、2025年10月に自民と維新が締結した連立政権合意書の中でも、2026年通常国会での損壊罪制定を目指すことを盛り込むなど、積極的な姿勢を示してきました」(大手紙社会部記者)
同法案に反対の立場を取る一部世論からも、同骨子案に早速反発の声が上がっている。
「国旗損壊罪の推進派は、これまで『外国国旗の損壊は外国国章損壊罪で罰則の対象になるのに、自国の国旗を損壊した場合の罰則がないのはおかしい』という、不均衡の是正を主張してきました。しかし外国国章損壊罪においては、国旗を損壊された外国政府の請求がなければ控訴を提起できず、さらに過去の判例では、『駐日外国公館などといった公的機関が公式に掲げたものに限られる』という解釈が示されている。
ところが、今回の骨子案にはそうした但し書きは存在せず、民間や個人が私的に掲揚しているものや、損壊者が自前で用意した国旗も対象になるように読める。つまり、外国国旗との不均衡の是正よりも一歩進んだ内容になっている。リベラル層を中心に、この点への反発も小さくありません。
ほかにも『不快』、『嫌悪の情』といった主観的であいまいな表現を処罰基準が設けられていることへの批判も高まっています」(同前)
むろん、国旗損壊罪の反対派からこうした反発が出ることは、自民党としては想定済みだったことだろう。しかし今回の骨子案には、国旗損壊罪の賛成派からも落胆の声が上がっているという。
自民党参議院議員の政策秘書の男性が明かす。
「骨子案の公表を受け、『法案実現に一歩近づいた』と喜んでくれている支持者がほとんどですが、一方では『失望した』とクレームが複数上がっていることも事実です。不満の矛先は、骨子案で『アニメ、生成AIによる創作物は対象外』とされた点です。
党内でも懸念の声が上がっていた、『表現の自由』との兼ね合いに配慮して設けられた例外規定ではありますが、明文化することで法律の抜け穴となり、逆効果になるのではないかという危惧を持つ人もいるようです」(参院議員秘書)
事実、SNSでは、これらの例外が骨子案に盛り込まれたことを受け、「#国旗損壊チャレンジ」なるハッシュタグをつけた投稿が雨後の筍のように出現している。アップされているのは、日の丸を踏みつけたり燃やしたりする生成AI動画だ。
こうした一部反対派の行動に刺激されてか、さらに急進的な規制を求める声も現れ始めているという。再び前出の政策秘書。
「骨子案が示されて以降、国旗の損壊だけにとどまらず、日本を侮辱する行為自体を取り締まるべきだという声も出てきています。『日本を侮辱したい連中は手段を選ばない。皇族や日本文化に対する不敬も含め、国家侮辱罪を制定だ』という急進的な意見も、支持者から聞かれるようになってきた。さすがに無茶な話だが、支持者に対しては『検討します』というしかない」(同前)
新法制定までには民主的議論が尽くされることを願うばかりだが、「思想弾圧の復活」という寝た子を覚ます結果にならないことを祈りたい。