
伊藤将史
いとう・まさし
伊藤将史の記事一覧
東京都在住。IT・金融・Web3・歴史・漫画・アニメなどなんでも書くライター。
アンソロピックが提供するAIエージェント「クロード・コワーク」の影響でSaaSビジネスに激震が走っている。写真は同社CEOダリオ・アモデイ氏
指示を待たず、自分で考えて手を動かすAIエージェントの台頭により、ウェブ上でソフトウエアを提供するSaaS業界に激震が走っている。軒並み株価も下がっている中、「勝てる逆張り銘柄」を探す!
1月中旬、米アンソロピックが最新の汎用AI『クロード・コワーク』を発表すると、マイクロソフトやセールスフォース、IBMといったSaaS企業の株価が急落した。この波は日本にも及び、富士通やNECなどの銘柄も暴落している。
SaaSとはSoftware as a Serviceの頭文字で、インターネットを通じてソフトウエアを利用できるサービスのこと。事務用クラウドサービスの定番である「マイクロソフト365」や、クリエイティブ制作ツール「アドビ」などがその代表例だ。
「AIの進化により、市場では『SaaSの死』という言葉まで広まっています」と語るのは、証券アナリストの宇野沢茂樹氏だ。
「クロード・コワークは自律的にマウスやキーボードを操作して、人間のようにタスクを実行できてしまう『AIエージェント』ですが、これがSaaSのビジネスモデルを崩壊させかねないと危惧されているのです。というのも、SaaSの基本的なビジネスモデルは『利用者数×月額課金』だから。
例えば、ある部署の社員30人がSaaSを契約していた場合、30人分課金されるわけですが、AIエージェントが〝1人〟で使いこなせば課金額は1人分になってしまう。利用者数に依存していたこれまでのビジネスモデルが揺らいでいるのです」
ではこれからは、SaaS株には手を出さないほうがいい?
「そうとも限りません。前提として、間違いなくAIはSaaS企業にとって脅威であり、現在の株価下落はそうしたAIリスクを完全に織り込んでいるわけではありません。
ただし、SaaS企業と十把ひとからげにされて、多くの企業がまとめて株価を下げている状況でもあります。なのでAI時代を勝ち抜く企業を選べば、むしろチャンスと言えるでしょう」
具体的には?
「まずは、自社のSaaSにAIを組み込んで利便性を高められる技術と人材を持っている企業です。それに加えて、医療や介護、農業といった専門的な知識が求められる領域でサービスを展開している企業は、消えることなく残るでしょう。
これらの領域では複雑な制度や業界独自の事情への対応が必要になるので、クロード・コワークのようないわゆる汎用AIサービスではまったく役に立たないからです。
その筆頭がエクサウィザーズですね。同社は介護や医療といった分野に向けて生成AIを活用した業務支援SaaSをすでに展開していて、AIの進化が強力な追い風になります。
また、PKSHA(パークシャ) Technologyも、代表がAIの権威である東京大学・松尾豊教授の研究室出身というブランド力を持ち、大企業向けにAIチャットボットを提供しています。同社の顧客は金融、通信、流通といった大企業が中心で、複雑な顧客データベースや社内システムと深く結びついているので、汎用AIは脅威になりません」

このほか、農業や医療などの専門分野に特化し、ドローン農薬散布などの特許を多数保有するオプティム、介護向けSaaSのエス・エム・エス、医療業界に強いメドレーも要注目だ。
「それから、企業がずっと使い続けているソフトを切り替える際に発生する『スイッチングコスト』も考慮する必要があります。
AIによって新たなサービスが生まれたとしても、既存のソフトから切り替えると莫大なコストがかかりますし、トラブルが起きるリスクもありますよね。なので、すでに多くの顧客を獲得済みのオービックビジネスコンサルタントのような企業は、今後も生き残るはずです」
AIショックによる暴落をチャンスに変えるのだ!
*データはすべて4月10日時点