【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】F1は間違いなく面白くなっている! モナコ、スペインの連戦にも注目!

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

モナコGPはフェラーリの今季初勝利に期待したいと語る堂本光一モナコGPはフェラーリの今季初勝利に期待したいと語る堂本光一

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE50

メルセデスから参戦する19歳のイタリア人、キミ・アントネッリの勢いが止まらない。第2戦の中国GPで自身初優勝を挙げると、第3戦の日本、第4戦のマイアミでもポール・トゥ・ウインを決める。

第5戦のカナダは予選こそチームメイトのジョージ・ラッセルにポールポジションを譲るが、決勝を制して、F1史上初の「初優勝から4連勝」を達成。チャンピオン争いでも2位以下に大差をつけている。

F1はアメリカ大陸からヨーロッパに戻り、モナコGP(決勝6月7日)とスペインGP(決勝6月14日)が連戦で行なわれる。舞台となるのはモンテカルロ市街地レースと、マシンの総合力が問われるカタルーニャ。

コース特性がまったく異なる両サーキットでもアントネッリが連勝記録を伸ばすのか。それともメルセデスの新星に待ったをかけるドライバーが登場するのか。見逃せない2連戦になりそうだ!

* * *

【アントネッリが4連勝を達成】

カナダGPはキミ・アントネッリ選手とジョージ・ラッセル選手のチームメイト同士の激しい優勝争いや、ルイス・ハミルトン選手とマックス・フェルスタッペン選手のチャンピオンによるバトルがあり、すごくワクワクしました。

そんな中でアントネッリ選手が第5戦のカナダGPを制し、初優勝を飾った第2戦の中国GPから4連勝を達成。これは史上初の快挙です。カナダGPではチームメイトのラッセル選手が好調で、スプリントで優勝し、予選でもポールポジションを獲得。決勝でもアントネッリ選手と激しいトップ争いを演じながらレースをリードしていたのですが、29周目に突然のマシントラブルでストップ。アントネッリ選手は勝利を手にしました。

前人未踏の初勝利から4連勝を達成したアントネッリ。チームメイトのラッセルに40点以上の大差をつけて、チャンピオン争いをリードする前人未踏の初勝利から4連勝を達成したアントネッリ。チームメイトのラッセルに40点以上の大差をつけて、チャンピオン争いをリードする

アントネッリ選手は"持っている"なあと感じましたが、F1の世界ではラッキーなだけで4連勝はできないと思います。ホント、末恐ろしい19歳です。シーズンが始まる前には、28歳のラッセル選手が今、一番熟成していて、タイトルにもっとも近い存在だと話しましが、そのラッセル選手を抑え込んで、チャンピオンシップをリードしています。

カナダGP終了時点で、アントネッリ選手とランキング2位のラッセル選手のポイント差は43。結構、大きな差が開いてしまいましたね。だからこそ、ラッセル選手はトラブルでマシンを停めたときに感情を露わにして、ヘッドレストをコースサイドに投げ捨ててしまった。

これが危険な行為としてレース後に5000ユーロ(約90万円)の罰金を科されていますが、ラッセルの気持ちはわかります。執行猶予はつきましたが、あれで罰金という裁定はどうなのかなあって感じましたね。

【美しい場面の裏側には別の感情がある!?】

カナダGPではアントネッリ選手とともにハミルトン選手(2位)とフェルスタッペン選手(3位)の3人が表彰台に上がりました。ふたりの偉大なチャンピオンがレース後、今年のF1に誕生した若きスターを祝福するのは美しいシーンでした。

でも、この美しすぎるシチュエーションにちょっと危機感を覚えるんです。ふたりのチャンピオンが年の離れたアントネッリ選手を讃えて、可愛がっているように見えるのですが、その裏には別の感情もある気がするんです。

僕の深読みですが、今年のマシンではどうせ自分たちはタイトル争いに加わることができないし、だったらラッセル選手よりも新しい登場した若いスターのアントネッリ選手がチャンピオンになったほうが盛り上がるよね......という感情がチャンピオンのふたりの中にはあるんじゃないのかなって。

それは今年のレギュレーションが影響しているのかなと感じます。やっぱり限界まで攻めて戦うことができるマシンだと、「俺が誰よりも速い」というドライバーとしての本能が騒ぐと思うんです。

でも今年はエネルギーマネージメントの勝負みたいなところになっているので、どこかまだ本気になれないっていうか、ドライバーとしての本能に火がついていないような感じがします。

特にフェルスタッペン選手はそうなのかなと感じます。それが僕の偏見というか、変な目で見すぎちゃっているのかもしれませんけど。

【メルセデスのチームメイト対決が見どころ】

今シーズンのハミルトン選手は好調で、カナダではフェラーリ移籍後のベストリザルトとなる2位表彰台を獲得しました。今年のフェラーリのマシンは車体の性能は悪くないと思いますが、ほかのチームに比べると、タイヤに対してちょっと厳しいという印象を受けます。逆にメルセデスは温度を管理するノウハウがあるようで、タイヤをうまく使っています。

メルセデスはPUの性能でライバルを上回っていますが、カナダで車体の大型アップデートを入れてきたことで、完全に頭ひとつ抜けだしたような印象です。ただメルセデスにとっては今後、いかにドライバーふたりをコントロールするのかが重要になってくるでしょうね。

これからのレースでは毎戦、チームメイト同士でバチバチの争いになると思います。特にラッセル選手にとっては、正念場です。ここでデビュー2年目のアントネッリ選手に大差で負けてしまったら、彼のキャリアは大きく変わっていかざるを得ない。だから絶対に負けられません。

ただし前回も言いましたが、アントネッリ選手がこのまま順調に勝ち続けるとは思えません。この数戦を振り返っても、彼にとっていいタイミングでセイフティカーが出たり、ライバルにトラブルが出たりと、ラッキーが続いていますが、長いシーズンにはつまずくときが必ず出てきます。

困難に見舞われたとき、デビュー2年目の19歳がどう対応するのか。そこが楽しみですし、チャンピオン争いの大きなポイントになると思います。

【モナコはフェラーリの今季初勝利に期待】

今週末にはモナコGPが開催されますが、安全性を考慮して、前後のウイングを可変させる空力システム"アクティブエアロ"の使用を禁止し、MGU-K(運動エネルギー回生システム)の出力を落として最高速を制限すると発表しています。

アクティブエアロも電動化の比率を上げることも、今年のレギュレーションの目玉として導入したのに、それらをモナコでの使用を制限する。はっきり言って拍子抜けです。だったらなんのために、このレギュレーションを導入したのかなと思いますよね。

カナダではフェラーリ移籍後の最上位の2位表彰台を獲得したハミルトン(左)。優勝したアントネッリを持ち上げて祝福するが、モナコでは2024年の母国イギリス以来の勝利への期待がかかるカナダではフェラーリ移籍後の最上位の2位表彰台を獲得したハミルトン(左)。優勝したアントネッリを持ち上げて祝福するが、モナコでは2024年の母国イギリス以来の勝利への期待がかかる

今年のモナコもオーバーテイクは難しいかもしれませんね。もちろんモンテカルロ市街地コースは壁に囲まれたチャレンジングなサーキットなので、何か大混乱が起こって予期せぬドラマがあるかもしれません。でも何もなければ、追い抜きのない"パレードラン"のようなレース展開になる可能性が高い。

勝負は予選とスタートですね。モナコはエンジンパワーへの依存度が低いサーキットなので、車体性能に優れたフェラーリは今季初勝利のチャンスがある。予選でポールポジション、あるいは2列目ぐらいまでにつけて、スタート性能の良さを生かしてトップに立てば、あとはミスをしないようにコンサバな走りをしても......。それがモナコの戦いです。

面白いレースになりそうなのは、モナコGPの翌週に開催されるスペインGPですね。舞台となるバルセロナのカタルーニャはマシンの総合力が問われるサーキットです。新しいレギュレーションの下、バルセロナで各チームのマシンの実力がはっきり出るはず。

長いストレートがありますが、ハードブレーキングのポイントは少ないので、電気エネルギーのマネージメントも厳しいと思います。コーナーが多いのでタイヤにも負担がかかるので、どのマシンがタイヤをうまく使えているのか、というのもわかります。いろんな観点で各チームのマシンの実力が見られます。

スペインGPはある意味、シーズン前半戦の集大成になるかもしれないですね。マシンやPUの実力が問われるサーキットでどんなレース展開になるのかを見て、レギュレーションの今後の方向性を関係者みんなでいい方向に決めていってほしいと思っています。

シーズンが開幕したとき、ドライバーがコーナーを全開で攻められないとか、バッテリーの残量で追い抜きが決まる"ヨーヨーレース"だとか、懸念されていたことがいろいろありました。

でも主催者側がドライバーやファンの声に応え、レギュレーションを少しずつアップデートしてきました。そこにチームがしっかりと対応してきた結果、レースは間違いなく面白くなってきています。カナダではワクワクするバトルがたくさんありました。さすがF1だと思いました。

でも、これでいいじゃんとなってほしくない。やっぱりレース中にドライバーに何が起きて、何をしているのかが、われわれファンには見えてこない。そこがわかるようになれば、もっとレースが面白くなると思います。F1がさらにいい方向に進むことを期待しています。

☆取材こぼれ話☆

フェラーリが初の電気自動車、LUCE(ルーチェ)を発表した。5人乗りで、価格は64万ドル(約1億円)。デザインを担当したのは元アップルデザイナーが設立した「LoveFrom」だが、世界中の自動車ファンや関係者の間で賛否両論を巻き起こしている。フェラーリファンでオーナーでもある堂本光一の印象とは?

「正直言って、見た目に関しては『おっと、何をやってくれたんだ』って思いました(笑)。ガッカリした気持ちが大半です。フェラーリ史上初の4ドア4シーターのプロサングエ(2023年販売開始)は、世の中のトレンドがスポーツカーよりもSUVやミニバンに流れていく中で、『SUVは作らない』と宣言するフェラーリが提示してきた最高の妥協点というか落としどころだった。

プロサングエはV12を搭載し、フェラーリの伝統を引き継いでいるし、僕もカッコいいと思いました。でもルーチェに関しては、妥協も何もないっていうか、もう過去の伝統とかは無視して、EVだったらこんなデザインでいいよねっていうフェラーリの回答だと僕は捉えています。

フェラーリの創設者エンツォ・フェラーリは『フェラーリを買うということはエンジンを買うことだ』と言っているんです。でもルーチェはエンジンが搭載されていません。だからエンジンを冷やすためのグリルや排気口も必要ないので、高性能エンジンを搭載した歴代のフェラーリのようなデザインである必要性もないんです。それがルーチェという車なんだと思います」

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア

★不定期連載『堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web』記事一覧★

  • 堂本光一

    堂本光一

    Koichi Domoto

    1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
    公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

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