トルシエ氏が日本代表のW杯を展望。「過去最高のベスト8には進める」

取材・文/佐久間秀実 撮影/立松尚積 写真/アフロ

フィリップ・トルシエ 1955年3月生まれ、フランス・パリ出身。自身もサッカー選手としてプレーした後、指導者の道へ。1998年から日本代表の監督を務め、「フラット3」の戦術を武器に、2002年日韓W杯で史上初のベスト16へと導いた。その後も多くの国やクラブで指揮を執った名将フィリップ・トルシエ 1955年3月生まれ、フランス・パリ出身。自身もサッカー選手としてプレーした後、指導者の道へ。1998年から日本代表の監督を務め、「フラット3」の戦術を武器に、2002年日韓W杯で史上初のベスト16へと導いた。その後も多くの国やクラブで指揮を執った名将

アメリカ、カナダ、メキシコの共催で行なわれる2026 FIFAサッカーW杯北中米大会。グループFの日本代表は6月15日(日本時間。以下同)のオランダ戦を皮切りに、21日のチュニジア戦、26日のスウェーデン戦の3試合で決勝トーナメント進出を目指す。

そんな〝森保ジャパン〟の戦いについて、2002年の日韓W杯で日本代表の指揮を執ったフィリップ・トルシエ氏に聞いた。

* * *

――まずは、5月15日に発表された日本代表メンバーの印象をお聞かせください。

「成熟度と経験という面で、バランスがいいメンバーだと思います。海外でプレーする選手が大半を占めていて、世界の頂点を目指すチームの土台はできている。ケガ人が出るなど、不測の事態も想定しての選考だと感じました。

森保一監督はこれまで、自身の判断が正しく、結果につながることを証明してきました。彼は状況に応じて、攻撃の形を柔軟に変化させる采配力がありますから、本番も期待しています」

W杯での活躍が期待された三笘は、現地時間5月9日の試合で左太ももの裏を負傷。全治約2ヵ月と診断されてメンバー外にW杯での活躍が期待された三笘は、現地時間5月9日の試合で左太ももの裏を負傷。全治約2ヵ月と診断されてメンバー外に

――三笘 薫選手(ブライトン)がケガで選外になったのは残念です。

「同じくケガがあった南野拓実選手(ASモナコ)も含めて確かに残念ですが、今の日本は2選手に依存しているチームではありません。

痛手ではあっても、決して致命傷ではない。親善試合でも、ブラジルやイングランドなど世界の強豪相手に強さを示してきました。チームとして、欠けた部分を補いながら勝つエネルギーを十分に備えています」 

――攻撃陣で期待する選手を教えてください。

「やはり、久保建英選手(レアル・ソシエダ)ですね。彼は攻撃で大きな違いを生み出す才能があります。この4年間で劇的な進化を遂げましたし、今大会は〝久保の大会〟になるかもしれません」

――ほかに注目している選手はいますか?

「長友佑都選手(FC東京)、遠藤 航選手(リバプール)、冨安健洋選手(アヤックス)です。W杯は、肉体的にも精神的にも厳しい大会です。だからこそ、彼らの経験とリーダーシップは極めて重要になると思います。

また、今回はメンバー外となりましたが、藤田譲瑠チマ選手(ザンクトパウリ)と佐藤龍之介選手(FC東京)は若くてポテンシャルが高く、次回以降の大会に向けて楽しみな存在ですね」

トルシエ氏が注目選手に挙げた、(左から)遠藤、久保、長友。経験豊富なメンバーがお互いをカバーして勝利を目指すトルシエ氏が注目選手に挙げた、(左から)遠藤、久保、長友。経験豊富なメンバーがお互いをカバーして勝利を目指す

――日本が入ったグループFの印象を教えてください。

「全チームに勝ち上がるチャンスがあるので、初戦からすべてをかけた戦いになるでしょう。今回は各グループの1位、2位と3位の中で上位8チーム(12チーム中)の32チームがGLを突破できますが、安易に『3番手でもいい』と考えてはいけません。

すべてのチームにチャンスがあるということは、最後の最後まで過酷な戦いが待ち受けているということです。

選手交代、セットプレーなど、決断の積み重ねが勝敗を左右します。勝ち点3を取ればGLを突破できる可能性が高まるので、一試合一試合が重くのしかかってきますね」

――日本はGLを突破できるでしょうか?

「突破できると思います。日本の最大の強みは、組織力の高さと、非常に速いテンポでプレーできる能力です。強度の高いプレッシャー下でも落ち着いてパスを回し、素早い動き出しとコンビネーションで相手の陣形を切り崩すことができる強さがあります」

――初戦のオランダ戦の予想をお願いします。

「非常にタフで、厳しい試合になるでしょう。オランダには大舞台慣れした選手が多く、国際的な実績やネームバリューでも日本を上回ります。しかし、今の日本は同じく世界のトップレベルですから、十分に対抗できるはずです。

すべてのチームに言えることですが、初戦で負けないことが重要なので、お互いがリスクを冒さずに牽制し合う、実力者同士のボクシングのような展開を予想します。結果は引き分けが現実的ですね」

――チュニジア戦、スウェーデン戦はいかがですか?

「日本にとって最も重要な試合は、チュニジア戦です。万が一、日本が初戦で敗れてしまうと、チュニジアに勝つことがほぼ絶対条件という状況に追い込まれますからね。

ただ、日本はチュニジアとスウェーデンに勝てるとみています。両チームよりも機動力、組織力、技術で優れていますから。日本は安定したボール保持から素早くパスを回し、スピード感あふれる攻撃で相手の守備ブロックを崩しにかかるでしょう」

――日本はどこまで勝ち進めると思いますか?

「世界の強豪国と対等に戦える実力がありますから......目標は優勝ですが、最低でも過去最高のベスト8には進めると思います」

――ご自身が日本代表の監督を務めていたとき、どんなことを意識していましたか?

「W杯までの4年間は失敗と成功の繰り返しでしたが、私が主に取り組んだのは『チームマネジメント』『チームのアイデンティティをつくること』『選手が自信と信頼を持つこと』の3つです。

当時のチームは、W杯やオリンピック、アジアカップでの経験を通じて、どんどん強くなりました。監督は、指揮者であり〝料理長〟でもあります。選手という〝素材〟をどう生かし、どう演出するのか。それ次第でチームは最高の一皿になる、という考えでチームを率いていました」

――日本代表を再び指揮したいですか?

「男子もいいですが、日本代表の女子チームにも興味がありますね。女子サッカーは世界的にも大きく成長していて、日本には戦術や要求に応えられる選手が多い印象があります。機会があったら、私がこれまで培ってきた経験を生かしてみたいですね」

――最後に、日本代表へのメッセージをお願いします。

「日本がW杯で高いレベルのパフォーマンスを発揮してくれることを期待しています。今のチームには、明らかに大きな自信が芽生えている。彼らがベスト16の壁を突破して、日本サッカーの歴史に新たな一ページを刻んでくれることを願っています」

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