大阪・西成の伝説のホルモン屋「やまき」。休業中の店を復活させたふたりのボクサーの心意気と運命の物語【前編】

取材・構成/ボールルーム 撮影/加藤慶

復活した西成「やまき」の外観復活した西成「やまき」の外観
2026年4月15日(水)14時。約3年前から休業していた大阪市西成区の名物ホルモン店「やまき」が復活オープンした。以前から西成で一、二を争う行列のできる名店だったが、2023年夏ごろから店主が体調を崩して休業。店は閉まったままだった。

3年の時を経て、復活を成し遂げた立役者は現役最年長プロボクサーの恵良敏彦(えら・としひこ)さん(51歳)と元プロボクサーの李明浩(り・みょんほ)さん(43歳)。ふたりに名店再オープンまでの道のりを聞いた!!

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実は3年前にやまきが閉まって間もないころ、記者はよく西成を取材していた。閉店したやまきの前を歩いていると、よくスマホの地図を見ながら、お目当ての「やまき」が見当たらないと右往左往する人をよく見かけた。その都度、閉店したことを伝えるとみんながっかりした表情で肩を落としていた。中には「週末を利用して東京からきたんですが、残念!」と悔しがる人もいた。それほど全国にファンのいる人気店だった。

再オープン当日は大行列!再オープン当日は大行列!
そんな人気店の復活オープンの当日4月15日は開店の午後2時時点で、なんと60人ほどが行列を作っていた。先頭に並んでいた30代の女性は「めっちゃおいしい。前の店の味を正確には覚えてないけど、こんな感じやった。明日もまた来て食べたい!」と大喜び。

そして、やまきが復活することを知って、わざわざ福岡から西成まで足を運んだという50代の男性も。

「店が開いていたころは年に2、3回、ここのホルモンを食べるためだけに西成に来てました。仕事を辞めたら西成に引っ越して暮らすのが夢だったんですが、やまきが閉店してどうしようか迷ってたんです。でも、復活してくれたんで予定どおり定年後は絶対西成に引っ越して住みます。やまきの再オープンのおかげで決心が固まりました」

復活したやまきのホルモンを何年かぶりに味わい、店から出てきた人に感想を聞いていった。

「うまい。『まんま』のひとこと。あのころの味そのまんまです」(30代男性)
「よかった、なんも変わってない。大好きな味です」(40代女性)
「あのころが、よみがえってくる。店を復活させてくれた人には感謝しかないです。ありがとう!」(40代男性)

と、復活したやまきの味は昔と変わらない味だと感激の声を上げていた。

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そんな名店はいかなる復活劇を遂げたのだろうか。店主の恵良敏彦(えらとしひこ)さん(51歳)、 李明浩(りみょんほ)さん(43歳) のふたりに話を聞いた。

最初に恵良さんがなんとか復活させたいと動き回っていたが、飲食店経験が少ないため飲食店や調理経験のある李さんを誘って復活オープンにこぎつけたそうだ。

店主の恵良敏彦(えら・としひこ)さん(左)と李明浩(り・みょんほ)さん(左)店主の恵良敏彦(えら・としひこ)さん(左)と李明浩(り・みょんほ)さん(左)
恵良さんが語る。

「僕が西成に足を運び始めたのは今から30年前、バブルが弾けたころからです。そのころからすでに先代の方がやまきをやってて、よく仕事終わりに食べに行っていました。

最初はみんなが鉄板を囲んでいるのをどうやってその囲みの中に入って注文して食べるのかすらわからなかったですから。あとで、囲んでいる人の輪の中に上手に入る方法とかを常連さんに教えてもらって......。そんな感じで馴染んでいきました。

そのあとにユーチューブを始めて、ユーチューブの取材だけでも、先代やまきを3、4回取材しました。そのころはまだ行列なんてできていなかったんです。そうこうするうちに、SNSやテレビなどで初代やまきが伝えられると次第に店の前には行列ができていき、やまきは西成有数の人気店となっていったんです」(恵良さん)

初代やまき店主が焼くホルモン初代やまき店主が焼くホルモン
しかし、店は前述のように23年8月に突然閉店。初代店主の体調不良が理由だった。閉店から1年が経ったころ恵良さんはこう思ったという。

「このままにしておいたらあかんなと思うようになりました。というのも僕自身がこの町(西成)で暮らしていて、中でもこの店、やまきを中心に盛り上がってたところもあるんです。

例えばやまきのような西成の店に行くと、ボクシングで勝ったりした後は知らない人からも『おめでとう』『応援してるで』『よっ!チャンピオン』と声をかけられるんです。他の街、他の店ではこんなことありません。

そんなことを思うとこのままこの店が潰れたままではいかん、なんとか復活させたいと思い始めたんです。どうにか人をたどっていって先代やまきの関係者とお話させていただくことができました」(恵良さん)

【前店主の他界で、復活を決意】

恵良さんが続ける。

「最初はこの店の大家さんから当たることから始めて、たどっていくと最終的にたどり着いたのが鶴橋のお肉屋さんだったんです。やまきはこの店からホルモンやお肉を仕入れているだけでなく、このお肉屋さんがやまきのオーナーもしているということがわかったんです。このお肉屋さんのことはミョンちゃんが詳しいので......」(恵良さん)

ということで、恵良さんとコンビを組んで復活させたもうひとりの立役者「ミョンちゃん」こと李明浩(りみょんほ)さん(43歳)に続けて話を聞いた。

「僕は元ボクサーなんですが、ボクシングの試合前に減量する時、必ず貧血になるんで困ってたんです。そんなとき、やまきのレバーを食べると貧血にならずにすむことがわかって、それ以降減量するとき、もちろんそうでないときでも、よく来てレバー食べていました。そんな客のひとりでした」(李さん)

と、先代やまきとの思い出を語る。また恵良さんとの関係をこう話す。

「ボクシングを引退したあと、2年前まで西成でラーメン屋台をやっていたんです。そのころから恵良さんが店に来てくれたりして、しょっちゅう顔を合わせるようになって仲良くさせていただくようになっていったんです」(李さん)

現役最高齢プロボクサーでユーチューバーの恵良さんと、人気のラーメン屋台の店主だったミョンちゃん。ふたりとも西成を舞台に活躍する者同士として顔を合わせるうちに仲良くなっていった。そんな恵良さんからミョンちゃんに突然連絡が入ったという。昨年の万博が終わりかける9月か10月のころだった。ミョンちゃんが語る。

「『やまき、ずーっと閉まってるけど、あのおっちゃん亡くなったんやて。やまき復活させたいんやけど、しっかりした人に引き継いでほしいから、やまきやってくれへんか』と、そんな連絡でした。そらびっくりしました。僕がそんなやまきを引き継いでやるとか考えたこともなかったですから。

でも、昔よく通った店で、減量で苦しんでるときに助けてもらった思い入れもある店。そんな昔のことを思い出すと、だんだんやってみたいなという気持ちに変わってきたんです」(李さん)

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