超解剖! これが森保ジャパンの「W杯完全攻略シナリオ」だ!!

写真/時事通信社 共同通信社

「凡事徹底」を合言葉にW杯優勝を目指す森保監督。前回カタール大会の経験を生かしたい「凡事徹底」を合言葉にW杯優勝を目指す森保監督。前回カタール大会の経験を生かしたい

アイスランドとの壮行試合を終え、いよいよ決戦の地へ飛び立つ森保ジャパン。史上初のベスト8進出、そして優勝へ――。たどるべき「勝ち筋」を徹底考察する!

【オランダ戦の鍵は三笘不在の左サイド】

開幕迫る、サッカーW杯北中米大会。史上初のベスト8進出とその先の優勝へ――。グループリーグ3試合、そして、決勝トーナメントを勝ち抜くためのシナリオを徹底考察したい。

われらが森保ジャパンは日本時間6月15日にオランダ、21日にチュニジア、26日にスウェーデンと戦う。

今大会は出場チームが32ヵ国から48ヵ国へと大幅に増え、決勝トーナメントは最大5試合。酷暑も懸念される中での長丁場の戦いを制するため、選手を試合ごとに大幅に入れ替えるターンオーバー制を取り入れる可能性はあるのか?

「長距離移動の可能性はあるものの、グループリーグは中4日か中5日。前回カタール大会では移動がなかったとはいえ中3日でしたから、この点で疲労度はだいぶ違います。2、3人の入れ替えはありつつも、軸は大きく変えないのではないでしょうか」

こう語るのは、森保ジャパンの取材を長く続けるスポーツライターのミムラユウスケ氏だ。

まずは大事な初戦、オランダ戦の注目点と警戒点を深掘りしていこう。

「森保一監督としては、大会初戦、しかも強豪オランダ相手ということで、手堅く守備重視で入りたいはず。特に警戒したいのは、右サイドバックから攻め上がってくるデンゼル・ダンフリース(インテル)で、左サイドの守備を手厚くしたいでしょう」

日本の左サイドといえば、三笘薫(ブライトン)が左太もものケガで本大会メンバーから落選。ただ、オランダ戦に限っては、「三笘不在で守備に振り切ることができる」とミムラ氏は分析する。

「もし三笘が出場可能だった場合、大会初戦から三笘を外す消極的姿勢でいいのか、といった不満の声が選手から上がってもおかしくない。ただ、三笘不在により、WB(ウイングバック)の位置に本来は左CB(センターバック)を務める鈴木淳之介(コペンハーゲン)や伊藤洋輝(バイエルン)を割り切って先発起用しやすくなりました」

逆に、「左サイドからの攻撃が重要になる」と語るのは、YouTubeで人気を博し、自身もクラブチーム監督を務めるレオ・ザ・フットボール(以下、レオザ)氏だ。

「ダンフリースは攻撃力が脅威の半面、守備の判断やCBのサポートの動きでは油断や準備不足のときもあります。そこで期待したいのが中村敬斗(スタッド・ランス)。ダンフリースの隙を突いて裏抜けしたり、ドリブルで仕掛けたりすることで、決勝点をアシストしたイングランド戦のような活躍を見せてほしいです」

イングランド戦でアシストを記録した中村。オランダ戦ではマッチアップするダンフリースの裏を狙いたいイングランド戦でアシストを記録した中村。オランダ戦ではマッチアップするダンフリースの裏を狙いたい

攻撃面ではもうひとり、今季オランダリーグ得点王の上田綺世(フェイエノールト)にも注目したい。

「ストライカーとしてオランダ代表でも活躍したロビン・ファン・ペルシー監督の指導によって飛躍した上田が、オランダ撃破の立役者になれば痛快ですよね。

ファン・ペルシー監督は代表発表後のリーグ戦で『W杯も考慮して欠場させる』と上田と渡辺剛を休ませてくれました。ここまで日本に塩を送ってくれたことも、オランダ撃破への布石と考えたいです」

ダンフリースのほかに、オランダの攻撃で警戒すべき選手は誰か?

「身長193㎝のフィルジル・ファン・ダイク(リバプール)のセットプレーをいかに封じるか。多少のマークはものともしない相手なので、マンマークとゾーンを併用してふたりがかりでケアする必要があります。

ただ、ファン・ダイクを意識しすぎるとほかの選手が飛び込んでくる。初戦で当たるのは研究・対策する時間がたっぷりあると考えて臨んでほしいです」

ほかにも世界的選手が並ぶオランダ相手に、日本代表でキーマンとなるのは?

「佐野海舟(マインツ)です。彼のボール奪取能力と、奪った後の前への推進力。オランダ相手でも佐野がマインツで見せているような支配的な動きができれば、攻守両面においてチーム全体のクオリティが一段レベルアップできると思います」

【中村俊輔コーチ就任の真の狙い】

グループリーグ最大の強敵オランダ戦の後も、アフリカ予選無失点のチュニジア、北欧の雄スウェーデンと難敵続き。どんな戦いになりそうか?

「オランダ戦の結果次第で2戦目以降の戦略は変わるので、展開予想は難しい。ただ、チュニジア戦では日本がボールを保持する時間が長くなるはずで、前回大会のグループリーグ第2戦、コスタリカ戦がヒントになります」

コスタリカ戦では引いた相手を攻めきれず、0-1で敗戦。同じ轍を踏まないため、鍵を握る選手は誰か?

「3バックの両脇の選手ですね。相手は中央から固めるので、サイドの低い位置が最も自由になります。ただ、コスタリカ戦では日本が急遽システムを変えた影響もあり、この位置からの配球がうまくいきませんでした」

そのコスタリカ戦に左SB(サイドバック)として出場し、厳しい評価を受けたのが伊藤だ。

「伊藤はこの4年で前線への配球力が非常に伸びました。伊藤個人としても、チーム全体としても、4年間でどれだけ成長したかを示す一戦になります。

左だけでなく、右にも配球力の優れた冨安健洋(アヤックス)がいますが、コンディション的に連戦は厳しいので、オランダ戦で出すか、チュニジア戦に温存するか。悩ましい選択になりそうです」

今大会は左WBとしての起用も見込まれる伊藤。前線への配球力はこの4年間で飛躍的に向上した今大会は左WBとしての起用も見込まれる伊藤。前線への配球力はこの4年間で飛躍的に向上した

では、グループリーグ最終戦スウェーデン相手に警戒すべきことは?

「アントニー・エランガ(ニューカッスル)、ビクトル・ギェケレシュ(アーセナル)、アレクサンデル・イサク(リバプール)と、長い距離のカウンターが得意な選手が多い。日本がどうしても勝たなければならない展開になれば、カウンターを浴びる危険性が高まります。第2戦までにグループリーグ突破を決めておきたいですね」

どの試合も日本が先にリードを奪えればいいが、先に失点して追いかける展開も想定される。どうしても1点が欲しい場面で、日本はどのように攻めればいいのか?

「ベースは上田の1トップでしょうが、3月のスコットランド戦でも試した2トップと、クロス精度の高い右サイドの菅原由勢(ブレーメン)をセット投入するプランも考えられます。

上田が参考にするほどクロスへの合わせ方がうまい小川航基(NEC)、相手守備陣を引きつけて仲間にスペースをつくれる後藤啓介(シントトロイデン)、ゴール前での嗅覚がピカイチの塩貝健人(ヴォルフスブルク)とそれぞれ個性があり、どの組み合わせも面白い。展開次第ではツインタワー、スリータワーもアリでしょう」(ミムラ氏)

共にフェイエノールトでプレーする上田(左)と渡辺(右)。オランダ撃破の立役者となれるか共にフェイエノールトでプレーする上田(左)と渡辺(右)。オランダ撃破の立役者となれるか

そして、W杯でいつも鍵を握るのがセットプレーだ。

「4月に名キッカーだった中村俊輔さんを代表コーチに迎え入れました。表向きはPK担当ですが、セットプレー強化も担っているのは間違いありません。

セットプレーキッカーの1番手は久保建英(レアル・ソシエダ)ですが、久保は以前からテレビ番組で中村コーチと共演してフリーキックを語り合ったり、セットプレーでの蹴り方を教わったりしているんです。その関係性も含めて期待したいです」

名キッカーとして名をはせた中村コーチ(右)。名波コーチ(左)と共に攻撃をデザインしてくれそうだ名キッカーとして名をはせた中村コーチ(右)。名波コーチ(左)と共に攻撃をデザインしてくれそうだ

セットプレーでのキッカーは久保以外にも、菅原、堂安律(フランクフルト)、伊東純也(ゲンク)、鈴木唯人(フライブルク)らが務めることになりそうだ。

「これまで名波浩コーチが作ってきた攻撃のルールに、中村コーチが〝最後の味つけ〟を加えるのではないでしょうか。質問すれば最適解を返すAIのように、中村コーチの頭の中には無数のアイデアがあり、経験もある。代表の新たな武器がここから生まれてほしいです」

精度の高いクロスに期待がかかる菅原。どうしても1点が欲しい場面での切り札になりそうだ精度の高いクロスに期待がかかる菅原。どうしても1点が欲しい場面での切り札になりそうだ

【PK戦も「凡事徹底」。試される運営力】

グループリーグを無事に突破できたとして、森保ジャパンがまず目指すのは悲願のベスト8進出だ。32チームが決勝トーナメントに進める今大会では、2回以上勝たなければならない。

日本はこれまでW杯で決勝トーナメントに4度進んだことがあるが、いずれも初戦敗退。どうすれば新たな歴史をつくれるのか?

「過去4度挑んだ決勝トーナメント初戦、2試合はPK戦での敗退で、残り2試合が1点差負け。1点を争うシビアな展開は必至で、森保監督も『2、3試合はPK戦になる想定をしている』と語っています。PK担当として中村コーチを就任させたのも、PKを重視している証しです」

PK戦といえば、かつて日本代表を率いたイビチャ・オシム氏が「PKは運だから見ない」とベンチ裏に引き上げていた姿も思い出される。だが、ミムラ氏は「運だけではない」と興味深いデータを示す。

「2006年以降のW杯と森保監督が率いた東京五輪を調べると、トーナメント戦を戦う高体連出身選手がPK戦を決めた確率が77.8%なのに対し、リーグ戦の多いユース出身選手は60%と大きく差が出ています」

今回の代表26人中、高体連出身は半分の13人。ただ、ユース出身だからといって、一概にPKを苦手としているわけではない。

「要は、PKの準備をどれだけしたか。前回大会ではチームで一番うまい選手が担当することの多い試合中のPKでは成功率73.9%だったのに対し、苦手な選手も蹴る可能性があるPK戦では成功率63.4%と、10ポイントも下がっていました。

ロシア大会(18年)でPKを決めた香川真司(現セレッソ大阪)も『PKは練習。普段から自信を持って蹴れるようにしておくと本番で生きる』と語っています」

今回の代表選手で普段からPKを蹴り、得意としている選手は誰なのか?

「上田はこれまで代表戦でPKを外したことがないですし、クラブではPK戦に臨む際の1番手キッカーを務め、成功率81%とかなり高い数値を誇ります。

ほかにも、小川はプロになってからPKを外したことがないと言っていますし、後藤はベルギーへ移籍した24年1月以降、試合中のPKを5本中4本決めています。森保監督は今大会、キッカーを指名制にすると言っているので、ベンチワークも重要になります」

プロ入り後、一度もPKを外したことがない小川。エース上田が参考にするほどクロスへの合わせ方がうまいプロ入り後、一度もPKを外したことがない小川。エース上田が参考にするほどクロスへの合わせ方がうまい

そのほか、決勝トーナメントを勝ち上がるために重要な要素は何か?

「W杯を勝つ上で必要なのは、選手の力、監督の力だけではなく、日本サッカー協会の運営力だと思います。森保監督はよく『凡事徹底。当たり前のことを当たり前に準備する』と言っていますが、それを協会としてもやり抜けるか。

例えば、移動の負荷をいかに減らすか。選手のストレスをいかに軽減するか。こうしたコーディネート力は日本人の得意分野のはず。選手でもW杯を経験した宮本恒靖さんが会長をやっているわけですから、そこは大丈夫と期待したいです」(レオザ氏)

191㎝の高さを誇り、今季ブレイクした20歳の後藤。ベルギーリーグ移籍後、PKを5本中4本決めている191㎝の高さを誇り、今季ブレイクした20歳の後藤。ベルギーリーグ移籍後、PKを5本中4本決めている

つまり、これまで日本サッカーが積み重ねてきたことそのものが問われている、とも言える。

「森保監督はW杯メンバー発表会見で、『日本サッカーの歴史の一部だと思って監督を務めている』と語っていました。過去大会での失敗も成功も踏まえ、世界レベルの選手がそろってきた今、結果を出せなければこの先も厳しい。そのくらいの姿勢で臨んでほしいです」

アイスランドとの壮行試合も終わり、初戦のオランダ戦まで残り2週間。最高の景色を目指す戦いがいよいよ始まる!

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