中国版TikTokで頻繁にアップされる日本の不動産の内見動画。ライブ配信され、配信中に契約まで進むこともあるとか 中国版TikTokで頻繁にアップされる日本の不動産の内見動画。ライブ配信され、配信中に契約まで進むこともあるとか

半年以上にわたる急速な円安は国内だけではなく、海外にも深刻な影響を与えている。とりわけ象徴的な5つの現場をピックアップし、変化のタネを徹底取材した。【海外現地リポート「悪い円安」に泣いた人、笑った人~Part5】

中国版TikTokで、新たに確立されたジャンルがある。日本の不動産の内見動画だ。日本を訪れることなく、動画だけ見て購入を決断する中国人たちの実態とは?

■板橋区や北区が人気

中国版TikTok(抖音[ドウイン])では今、日本の主要都市で売り出し中のマンションや一戸建て住宅の内部を撮影した動画が毎日のようにアップされている。そして動画の多くは、「購入希望者はDMを」といった文句で締めくくられるのだ。都内の中国系不動産会社の経営者はこう語る。

「中国では売り出し中の不動産をSNSで紹介するのは当たり前のこと。そこで弊社でも、半年ほど前からTikTokやWeChatで日本の物件の内見動画を投稿していますが、3000万~5000万円の物件を中心に、すでに11件が成約しました。いずれも購入者は中国に住んでいて、物件を内見せずに購入しています」

なぜ彼らは日本の不動産を買い急ぐのか。

「円安でお得感が高まっていることのほか、政府の強権化や経済の停滞など、中国に不透明感が漂う中で、賃貸や民泊などで海外に収入源を確保したいと考える人が多いことも影響しています。

購入者の多くは、中間所得層よりやや裕福で、不動産購入は初めてという人たち。タワマンなどの高額物件よりも、中古物件が売れ筋です。例えば東京なら、比較的安い北区や板橋区あたりの4000万円前後で買える1DK~2LDKの中古物件が人気ですね」

目下、SNSの内見動画を頼りに日本の物件を選定中という30代の中国人女性に話を聞くことができた。

「5000万円程度を予算に、山手線の内側、特に中央区や港区、目黒区などで、1LDK、2DKの物件を探しています。しばらくは賃貸に出しますが、いずれは移住して自分で住みたいと思っています。また、諸外国では非居住者が不動産を取得する場合は税金が高くなったりしますが、日本ではそういったことがないのも魅力です」

現地を訪れずに購入してしまう思い切りの良さの半面、中国人が物件を選ぶ上で気にするのが縁起だという。

「中国では自殺や孤独死などの事故情報は公開義務がないのですが、多くの購入希望者は日本に公開義務があることを知っており、必ずといっていいほど聞いてきます。また、広東省など南のほうの人は特に風水を気にする人が多く、方角や水回りの位置などを細かく聞いてくることもありますね」(前出・不動産会社経営者)

一方、前出の女性によると、「幕張や大宮のタワーマンションを『都内中心部』などと宣伝していたり、入居に高額な修繕費が必要なことを隠しているケースがある」と、内見動画の投稿者には悪徳業者も紛れているそうだ。

無事契約までこぎ着けても、その後に問題が起きることも。

「日本にいない中国人はローンを組むことができず、即金で買うことになる。ただ、中国は海外送金を厳しく規制しているので、海外に資産がある人以外、現金を用意することは簡単ではないのです。契約後のキャンセル率も高く、実際に購入に至るのは問い合わせの1、2%くらいです」

今後、中国人による本格的な不動産爆買いへとつながるか!?