
堂本光一
Koichi Domoto
堂本光一の記事一覧
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】
「アントネッリ選手は、どことなくアイルトン・セナに似た雰囲気を感じる」と語る堂本光一
今週末の第12戦オランダGP(決勝8月23日)から、シーズンの後半戦がいよいよ始まる。
前半戦はF1参戦2シーズン目の19歳、キミ・アントネッリがチャンピオンシップをリードしてきたが、このままタイトルを獲得すれば、セバスチャン・ベッテル(23歳134日、2010年)が持つ史上最年少王者の記録を大きく更新することになる。
そのアントネッリを追随するのはF1参戦20シーズン目を迎えた41歳のルイス・ハミルトン。チャンピオンになれば、単独で史上最多となる8度目の王座に輝くことになる。果たして、シーズンの最後にはどんな結末が待っているのだろうか。
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シーズン前半戦を振り返ると、フェラーリのルイス・ハミルトン選手の奮戦が印象に残りましたが、一番のサプライズはメルセデスのキミ・アントネッリ選手の躍進でした。
開幕戦のオーストラリアGPでは28歳のジョージ・ラッセル選手が優勝を飾り、「2026年シーズンはラッセルの年だよね」と誰もが思っていたはず。
今年から導入された新レギュレーションに対して、メルセデスのマシンが抜きん出ていたというのもありましたし、F1参戦8シーズン目でドライバーとしてのキャリア、成熟度という点を考えても、今年のチャンピオン争いの本命はラッセル選手だろうと予想する人が多かった。
そんな中でデビュー2年目のアントネッリ選手が前半戦の11戦中6勝を挙げ、ランキングのトップに躍り出ました。僕も正直ここまでの成績を残すドライバーだとは思っていませんでした。彼のすごさは、新レギュレーションのマシンにうまく適応していることに加え、デビュー2年目とは思えない冷静さを保っていることだと思います。
レース中の無線を聞くと、エンジニアの言うことを聞いて、マシンを少しでも速く走らせようと努力しています。レース後のコメントもしっかりとしています。決して浮かれることなく、自分の良かったところと悪かったところを分析して、次のレースに生かそうとしています。その姿勢が好結果を生んでいると思います。
あとアントネッリ選手が勝ち始めた頃から言っていますけど、彼が優勝するとみんなが幸せそうなんですよね(笑)。マックス・フェルスタッペン選手やルイス・ハミルトン選手などの先輩ドライバーが「よく頑張ったね!」という感じで、祝福する姿が見られます。そんな光景は本当に珍しい。
アントネッリ選手は、本当にキラキラと輝いています。どことなくアイルトン・セナに似た雰囲気があるように感じます。
これからアントネッリ選手が苦労したり、悩んだりしながら頂点に立てば、セナが持っていたような哀愁を帯びた表情になっていくのかもしれませんね。
そうすれば、さらなるカリスマ性やオーラをまとうようになると思います。アントネッリ選手がこれからどんな成長をしていくのか? ひとりのF1ファンとしてすごく楽しみです。
シーズン前半の11戦中6勝を挙げて、王座争いをリードしてきたアントネッリ。後半戦のスタートとなるオランダGP決勝の2日後に20歳になる
前半戦、19歳のアントネッリ選手とともにレースを盛り上げたのは41歳のハミルトン選手です。「アントネッリ選手が勝てばみんなが幸せになる」と先ほど言いましたが、ハミルトン選手に対しても同じような空気感がありますよね。
ハミルトン選手はミハエル・シューマッハと並ぶ史上最多タイの7度のワールドチャンピオンに輝いていますが、メルセデス時代はハミルトン選手が優勝すると「またハミルトンか......」と多くのファンが口にする時代がありました。
その後、フェラーリに移籍したハミルトンは苦労し、今シーズンになって元気な走りを見せ始めると、世界中のファンが「またハミルトンが勝つ姿を見たい!」と彼を応援する雰囲気になっています。本当に1ファンはワガママですよね。
そのようにハミルトン選手が世界中のファンに応援されているのは、F1の象徴でもあるフェラーリに加入したというのも大きいと思います。ハミルトン選手の力でフェラーリを勝たせてほしい、と思っている人も多いでしょうね。
その一方で、イタリア人のアントネッリ選手も内心では、いつかは母国のチーム、フェラーリで走りたいと思っているはず。その夢が実現するのはもう少し先かもしれませんが、後半戦は年齢の離れた新旧のスタードライバーがどんなバトルを見せてくれるのか?
前半戦では実現しなかった、ハミルトン選手とアントネッリ選手がガチンコで勝負する場面を見てみたいですね。
マシンのアップデートを成功させ、着実に競争力を上げてきたマクラーレン。シーズン開幕直後はちょっと苦労しましたが、第11戦のハンガリーGPでランド・ノリス選手がついに今季初優勝を挙げました。
後半戦はメルセデス、フェラーリ、マクラーレン三つ巴の優勝争いになるだろうと前回の連載で話しましたが、本当はレッドブルも加わってくれると、もっと面白くなるんですけど、トップ3からはやや離されているという印象です。
今年のレッドブルはアイザック・ハジャ選手が第5戦のカナダGPから第11戦のハンガリーGPまで7戦連続入賞中で、そんなに出来の悪いマシンではないと思います。フェルスタッペン選手も優勝はありませんが、前半戦で4度も表彰台に上がっています。
ですが、フェルスタッペン選手は無線で、「こんなマシンは運転できない。最悪だ」などと、よく不満を口にしています。
レッドブルは長い間、フェルスタッペン選手の希望通りにマシンを開発してきました。その結果、速さはあるのですが、彼以外のドライバーが扱うのが難しい、極端な特性のマシンになっていた。
でも今年からレギュレーションが変更され、新しいマシンはどちらかといえばフラットな特性に仕上がった。だからハジャ選手が結果を出せていますが、フェルスタッペン選手にとっては違和感があるのでしょう。
今年のレッドブルとフェルスタッペン選手の戦いぶりを見ていると、レッドブルは自分たちのマシンがいいのか悪いのか、よく見えていないんじゃないかなと感じます。同じことはフェルスタッペン選手にも言えるかもしれません。個人的にはフェルスタッペン選手は一度、レッドブル以外のチームで走ってみてもいいのではないかと思います。
レッドブルとレーシングブルズの両チームでリザーブドライバーを務めている角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手が、第12戦のオランダGPにレーシングブルズから参戦することが急遽決まりました。
レッドブルのハジャー選手が、夏休み期間中にトレーニングをしている際に手首を負傷してオランダGPを欠場することになり、レーシンングブルズのリアム・ローソン選手がフェルスタッペン選手のチームメイトとしてレッドブルから出場することになりました。
そしてレーシングブルズの空いたシートに角田選手が収まり、昨年12月のアブダビGP以来となるレース復帰を果たすことになったのです。まずはハジャー選手のケガが早く治ることを祈っていますが、角田選手が久しぶりにF1をドライブする姿を見られるのはうれしいです。
ローソン選手がトップチームのレッドブルから、角田選手がレーシングブルズからそれぞれ出走することになったのは、角田選手が今年のレギュレーションのマシンで実戦を走るのは初めてなので、そういう判断になったのだと思います。
でも今年のレーシングブルズのマシンは中団勢のトップに位置しており、角田選手にとってはよかったのかなと思います。角田選手とローソン選手は来年の動向が確定していないので、ふたりにとっては今後のF1でのキャリアを占うレースになるかもしれません。
角田選手を応援するファンのひとりとしては、印象に残るレースができることを願っています。
ちなみに日本メーカー以外のエンジンが搭載されたマシンに日本人が乗るのは小林可夢偉(かむい)選手(2010年~13年ザウバー・フェラーリ、2014年ケータハム・ルノー)以来となります。
それも今後にどんな意味を持つのか、興味深いですし、何よりもオランダGPが待ち遠しいです!
2007年にF1でデビューを果たし、今年で20回目のシーズンを戦っているルイス・ハミルトン。フェラーリで史上最多の8度目のワールドチャンピオン獲得を目指している。
「後半戦はハミルトン選手に頑張ってほしい。夏休み前の数戦はフライングスタートや他車との接触でペナルティが多かったですが、それだけ限界で攻めている証拠だと思います。
今後フェラーリとして難しいのは、ドライバーズ・ランキング2位のハミルトン選手(169ポイント)と、ドライバーズ・ランキング4位のルクレール選手(138ポイント)のどちらを優先していくのか。チームのマネージメントは大変だと思います。
ここ数戦、ふたりが近いところでバトルをするシーンが見られましたが、フェラーリ同士で激しくやり合ってしまったら、ポイントリーダーのキミ・アントネッリ選手(219ポイント)とメルセデスが楽になるだけですから、そこはフェラーリはうまくやってほしいですね」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア