メモリー半導体はなぜ高騰? 小学生でもわかる超解説!

AIを動かす最新のロジック半導体(GPUやTPU)のパワーを最大限発揮させるためのメモリー半導体(HBM)に生産資源が集中。それ以外のメモリー(DRAMやNAND)が高騰している(写真はイメージ)AIを動かす最新のロジック半導体(GPUやTPU)のパワーを最大限発揮させるためのメモリー半導体(HBM)に生産資源が集中。それ以外のメモリー(DRAMやNAND)が高騰している(写真はイメージ)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「メモリー半導体の高騰」について。

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「土下座してでも買ってくる」。私が入社予定の電機メーカーで内定式を迎えた2000年。半導体不足で、半導体メーカーを接待して売ってもらっていると社員から聞いた。

ところが入社した2001年にはITバブルが崩壊。逆に半導体商社のひとから「土下座しますから買ってください」といわれた。

この変わりよう。とくに広い産業で使われるメモリー半導体は景気に左右される水物だ。先輩がいっていた。メモリーは、好景気=酔いがまわっているときは、どんちゃん騒ぎして暴れる。でも、不況=酔いが覚めると、激しい二日酔いと前日の後悔に襲われるのだと。

そこから幾星霜(いくせいそう)。現在、またもメモリー半導体の不足と高騰だ。AIデータセンター需要が旺盛で、先端・汎用(はんよう)メモリーともに数ヵ月待ちから1年待ち。大企業を中心に取り合いになっている。価格も昨年比で4倍のものもある。バブル再び、だ。

ところで、メモリー半導体とかロジック半導体とかいう種類と用途がわからないひとは多いのではないか。こう覚えておくといい。

学校の教室を想像しよう。ロジック半導体は数学の先生で、メモリー半導体が黒板だ。

先生はひたすら話し続けて計算するが覚えていられず、記録用に黒板に書く。先生=ロジック半導体を設計しているのがエヌビディアやアップルで、作っているのはTSMCだ。ひたすら頭の回転がいい先生を生み続ける。

いっぽう日本が以前得意だったのが黒板=メモリー半導体で、DRAMと呼ばれる。大きな黒板であるほど先生の作業域が広がるから役割は大きい。

なお、その後、板書を消す前に「ここ重要だからな」と先生が命じたらノートを取る。このノートがもう一種類のメモリーで、NAND(ナンド)と呼ぶ。SSDとかUSBといった記憶する媒体がNANDだ。

いまはこのDRAMとNANDが足りない。

このところ、先生がめちゃくちゃに優秀になった。よく知られているCPUにくわえてGPUとかTPUが出てきた。これらはAIを動かすロジック半導体で、エヌビディアやグーグルが設計している。とにかく計算が早く、大量に出荷されている。

ただし、せっかちで膨大な計算をこなす先生が動いても、黒板が小さいと力を発揮できない。そこで出てきた新たな黒板がHBM(High Bandwidth Memory)。DRAMを縦方向に積んだ最先端メモリー半導体だ。書きやすく広い黒板で、先生は圧倒的に高速な授業が可能となる。

メモリー市場のほとんどは韓国勢のサムスン、SKハイニックスと米国のマイクロンが握っている。カルテルで摘発された歴史があるほどだ。

彼らはDRAMの生産を抑える代わりに、AI向けのHBMに注力した。するとDRAMは高騰。もちろんHBMは引き続き高く売れており、好業績にわいている。われわれメモリーを調達する側は、これをハルマゲドンならぬ"ラムマゲドン"と呼んでいる。

広島でマイクロンの先端工場が稼働し始める2028年からはまだマシになるが、現状では日本はRAM不足をROMってる(ただ見てる)だけ。次の暴落を待つしかない。

しかし、こんなに必死でかき集めてきたメモリーを使うChatGPTで、みんな恋愛相談とかしてるんだよな。「その恋、脈なしです」なんていわないから、会話は長くなるし。

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  • 坂口孝則

    坂口孝則

    Takanori SAKAGUCHI

    調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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