メンバー左から、なお(Dr)、椎名ちゃん(Vo&Gt)、かほ(Ba)、まれ(Gt)

いま、ライブハウス界隈で最も注目されている女性4人組バンド、それが東京初期衝動だ。

2018年に椎名ちゃん(ヴォーカル&ギター)を中心に結成。その激しすぎるライブパフォーマンスと生々しいサウンド、そしてルックスのよさがS N Sで話題となり、2019年11月に2000枚限定で発売されたファーストアルバム『SWEET 17 MONSTERS』は、発売4ヶ月で完売した。

新世代バンドシーンを疾走する東京初期衝動とは一体どんな存在なのか? 椎名ちゃんを直撃した。

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――東京初期衝動、いまライブハウス界隈で「一番ルックスがいい」なんて声もありますけど、本当に皆さんチャーミングですね。

椎名ちゃん(以下、椎名) 私もそう思います(笑)。でも、"そっち系"に見られるのはイヤなんですよ。

――いわゆるアイドルバンドというか。

椎名 そうそう。そもそも女だからどうこうってのは意識してないので、ガールズバンドって言われ方も好きじゃないです。実際、ライブを見れば違うってわかってもらえると思いますから。

――確かに。先日、ライブを拝見しましたけど、相当に壮絶でした。生々しいサウンドを轟音で鳴らしまくり、椎名さんはマイクを握りながらお客さんへダイブ。会場を圧倒していました。

椎名 つい、カーッとなっちゃうんですよ。でも、クールなライブになることもありますけどね。私、情緒不安定なので(笑)。

――予定調和にはならないと。もともと椎名さんの呼びかけで結成したバンドだそうですけど、きっかけは?

椎名 ヒマだったんで、中古ギターを買ったんです。でもなかなか弾けなかったんでバンドをやろうかなって。みんなで練習するから弾けるようになるし。で、ライブハウスで知り合った友達と始めました。やがて曲も作り始めました。

――ユルい始まりだったと。もともとはどんな音楽を?

椎名 大きかったのは尾崎豊さんです。中学の時、親が『17歳の地図』を聞かせてくれたら「なにこれ!? ヤバッ!」となって。他にはRADWIMPSとかBUMP OF CHICKINなどのロックから、浜崎あゆみさんやAKB48まで聞いてました。ジャンルを問わず、みんなが聴いて愛される音楽が好きなんです。

――少し前に長渕剛さんのことをつぶやいてましたね。

椎名 最近、聞くようになったんです。『しゃぼん玉』とかすごいです。長渕さんや尾崎さんの曲は何かと戦ってきたのがわかるし、自分の気持ちをむき出しのまま歌っているところに惹かれます。

――バンド名の「東京初期衝動」って、銀杏BOYZの前身のGOING STEADYが以前つけたイベントタイトルからだと思うんですけど、銀杏は?

椎名 もちろん好き。『夢で逢えたら』を聞いたら、メロディの美しさにしびれて。ライブも衝撃でした。峯田(和伸)さんがお客さんに向かってダイブしたり、トラブルで演奏が中断したり、事件みたいで。その時が初めてのライブハウスで、格好も厚底靴にミニスカートだったんですけどパンチラとか関係なく、最前列で見てました。

――なるほど、東京初期衝動の音もそれらに通じている気がします。しかも昨年リリースのアルバム『SWEET 17 MONSTERS』は、感情をむき出しにしたサウンドと胸キュンな青春感が混じってて魅力的です。

椎名 一曲一曲に対する特別な思い入れはそんなにないんです。思いついたものをバンバン出しているので。言っちゃえば、自分が生きている瞬間を切り取ってるようなものというか。

――アルバムの中で特に印象に残っている曲は?

椎名 『ロックンロール』かな。

――「ロックンロールを鳴らしているとき、きみを待ってる」ってサビがなんだか甘酸っぱいパンクですね。

椎名 最初、「ロックンロール」って言葉が思い浮かんでサビを作ったんですけど、スタジオに行ってもそれ以外の詞ができてない。どうしようってなったけど「高校生ってお題で書くぞ」と決めたら「教室」とか「制服」が浮かんで、10分で出来ちゃった!

――10分! すごい!『再生ボタン』って曲には「元カノの匂い」とか「クソみたいな写真」っていう詞がありますよね。他の曲にもそういう情景描写が出てきますけど、自分の経験を書いてます?

椎名 そういう時もあるし、友達の話を書く時もあるし、大体は両方、詰め込んでいます。書く時、カッコはつけないようにしてますね。ボロが出ちゃうんで(笑)。

――最新EP『LOVE&POP』(4月29日発売予定)の『愛のむきだし』は「私はスピードで生きてる」「お前のために生きてない」ってありますけど、すごく挑戦的というか。

椎名 それはいまの自分の感情そのままです。リリックは3日間のレコーディングで4~5回すべて書き変えました。

――曲もポエトリーリーディング調でバンドの進化を感じます。

椎名 今までと違う曲調のものを作りたくて。いろんな音楽を聞いているので、ひとつに絞られたくはないんです。

東京初期衝動2ndED「LOVE&POP」(チェリーヴァージン・レコード)4月29日発売

――ちなみに、椎名さんはカリスマ的な人気があり、いろんな噂がありますね。昔、ギャルだったそうですけど、本当ですか?

椎名 はい(笑)。小6の時に渋谷の109の服を徹夜で並んで買って、中1からは渋谷のサークルのミーティングに参加してました。当時は2枚つけまして、ウイッグ被ってと、かなり気合を入れてましたね。まぁ、今、考えるとかなりヤバいですけど(笑)。

――高校時代まではわりと奔放だったとか。

椎名 それなりに(笑)。私の家はおおらかで親からは「若い時しか遊べないから、死ぬほど遊んでこい」って言われていたんですよね。でもその後はいっぱい勉強して資格を取り、今は看護師として働いています。ニートじゃないですよ。

――Twitterが凍結されて、わざわざツイッター社に出かけ、解除をお願いしに行ったなんてエピソードもありますね。

椎名 あははは。援交を持ちかけられたんでブチ切れたら、その言葉が悪すぎてバンされちゃって。直接、話して許してもらおうとしたけど門前払いでした。帰り道、少しでも好印象をと駅周辺を掃除してアピールしたんですけど、やっぱりダメでしたね。Twitter使えなくて、相当病みましたよ。

――やっぱりエゴサなんてするんですか?

椎名 めっちゃします。でもそれって自分が何言われてるか気になるってより、コメントをしてくれた人に「いいね」を押してあげたくて。ちゃんと届いてるよって伝えたいんですよね。

――コメントに凹んだりは?

椎名 それはないけど理不尽なコメントは論破します。でもそうやって反応するから、自分はファンと近いと思いますね。

――椎名さんのTweetを見てると、よくジムが出てきますよね。

椎名 いま週に3~4回、仕事前に総合格闘技ジムに通ってキックボクシングをやってるんです。男に囲まれて一緒にスパーリングしたり、千本ノック(ミット打ち千本)やったりしています。

――すごい! 格闘技好きですか?

椎名 純粋に体力作りです。前にエンジニアさんからプロのミュージシャンが毎日10キロ走ってると聞いて、自分も運動するようになりました。精神的に鍛えられるし、努力してると自信になるし。あとライブも格段に良くなります。パソコンとにらめっこして音楽作ってる人とか、やたら飲み会に出てるバンドマンとか、気合いの足りない奴らには絶対負けないです。

――ストイックなんですね。あと聞きたいことがあるんですけど、ある時期からアイドルシーンが盛り上がり、昔ならバンドやってたような女のコがアイドルをやることも多いですよね。椎名さんはアイドルを目指そうとは?

椎名 まったく。だって自分の曲じゃないと歌えない。アイドルに限らないけど、他人が作った曲を楽しそうに歌うなんてダサいなって思っちゃう。誰かに媚びたくもないし。

それにバンド、楽しいですよ。みんなで音を出す時なんてワクワクする。あと曲が必要になると私の家で合宿するんですけど、寝てる奴がいて「何しに来たんだよ」ってキレることもあるけど、そういうのも面白いし。

――この先、バンドとしてはどこに向かうんですか? メジャーに行こうとか?

椎名 メジャーはまったく考えてないです。大勢の人と関わるのが苦手なんですよ。でも配信じゃなく、CDって形でたくさん売れたいとは思いますけどね。自分の歌をいっぱい作って、自分で歌って、それを届ける。それをとにかくやり続けることが大事なんじゃないかと思っています。

東京初期衝動
椎名ちゃん(Vo&Gt)、まれ(Gt)、かほ(Ba)、なお(Dr)による4人組バンド。2018年4月、椎名ちゃん、まれ、かほが集まりバンド結成。7月なおの加入によりライブが本格始動。2019年4月29日に初の正式CD音源として1stED『ヴァージン・スーサイズ』を 発売開始。11月にはファーストアルバム『SWEET 17 MONSTERS』を自主レーベルから発売し、4ヶ月で2000枚を完売する。4月29日には2ndED「LOVE&POP」をリリースする。詳しくは「東京初期衝動」公式HPへ【https://tokyosyokisyodo.jp

■東京初期衝動 LIVE情報
初の全国ツアー『東京初期衝動の全国逆ナンツアー』
3月29日(日) 仙台FLYING SON ※ゲスト THE ARNOLDS
4月4日(土) 名古屋HUCK FINN ※ゲスト キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
4月11日(土)大阪Pangea ※ゲスト 愛しておくれ
4月29日(水)札幌SPIRITUAL LOUNGE ※ワンマン
5月1日(金)東京・新代田FEVER ※ワンマン
チケット:前売り2,500円(税込)ドリンク別