盲目の芸人・濱田祐太郎は、芸人の営業の定番「僕たちのことを知ってるよって人は手を挙げてくださーい!」をどうしている?

撮影/梅田幸太

盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん

R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」

第33回は、街中でコラムの読者と遭遇したときの話。

* * *

この間、講演会の仕事で、兵庫県に行きました。ベルディーホールという会場で、500人ぐらいのお客さんが見に来てくれて、とてもありがたかったです。

でも、500人の前でしゃべるのは緊張しましたね。まあ、500体のお地蔵さんの前でしゃべるよりはマシですけど。

それはもう緊張とかじゃなくて怖い。笑い声でも聞こえた日にはビビってちびりますよ。

その講演会で、僕が500人のお客さんに思わず大声でツッコんでしまう出来事がありました。

講演会は60分間の予定だったのですが、僕ひとりがしゃべりっぱなしだとお客さんも疲れるだろうなと思い、参加型のトークと質問コーナーもやったんです。

参加型というのは、芸人が学園祭などの営業でよくやる「僕たちのことを知ってるよって人は手を挙げてください。わあ、こんなにたくさん。ありがとうございます。今、手を挙げなかった人の顔は覚えましたからね」みたいなやつですね。

ただ、僕は目が見えないのでお客さんに手を挙げられてもわからない。だからお客さんに拍手をしてもらう形でやりました。

そのときに事件が起きたんです。

「この中で濱田祐太郎のことを知ってるよって人は拍手してください」と言ったら、本当にたくさんの人が拍手してくれて。

その拍手の感じも歓迎してくれてる、興味を持ってくれてるっていうのが伝わってくるような温かい拍手だったんです。たぶん8割くらいの人が拍手してたんじゃないかなあ。

それで「じゃあこの中で、僕のエッセー『迷ったら笑っといてください』(太田出版)を読んだよっていう人は拍手してくださーい」と言ったら、まさかのゼロ拍手。思わず「誰も読んでないんかーい!!」と絶叫しましたよ。

あれだけ温かい拍手だったから、500人のうち少なくとも30人くらいは拍手してくれると思って言ったのにゼロだったからめっちゃ恥ずかしい気持ちになりました。

でも、その後の質問コーナーは子供からおっちゃんまで幅広い年代の人が興味を持って質問してくれたので楽しかったです。

その中で特に印象深かったのが、普段使ってる「白杖」について質問をしてくれたおっちゃんです。簡単に言うと「杖にはどんな種類があるの?」みたいな内容の質問でした。

白杖には折り畳み式のものと、そうじゃないのがあるんですけど、そんなことはどうでもよくて。

僕は普段から白杖のことを「杖」とか「棒」と呼んでます。そのほうが周りに伝わりやすいし僕も言いやすいから。

ただ、視覚障害のある人や福祉の仕事をしている人の中には「正しくは白杖だから」とつっかかってくる人がたまにいます。正直、僕はそれをうっとうしいと感じるくらい、相手に伝われば正しい呼び方をしなくてもいいと思っているんですけど。

そんな僕でさえ気になったのが、そのおっちゃんが白杖のことを「その白杖杖(はくじょうづえ)」と呼んでいたこと。それが妙に面白かったんですよ。

僕もついつい「それは同じことを2回言ってますよ」とツッコんじゃいました。マルゲリータピザピッツァみたいなことだと。たらこパスタスパゲティみたいなことだと。海鮮丼丼みたいなことだと。

そしたらおっちゃんもほかのお客さんも笑ってくれていたので良かったです。いやー、楽しい講演会でした。あっそうそう、皆さんも僕のエッセーまだ読んでなかったらぜひ読んでみてくださいね。

●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう) 
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5

★盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の「死角からの一撃」は毎週水曜日更新

盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の「死角からの一撃」盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の「死角からの一撃」

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