日本バレーがロス五輪の切符獲得へ!! アジア選手権に向けてチームは充実

取材・文/小宮良之 撮影/能登 直(a presto) 写真/共同通信社 アフロ

VNLで6年連続の決勝トーナメント進出を決めた女子代表。キャプテンの石川真佑(左から3人目)を中心に粘りのバレーを高めるVNLで6年連続の決勝トーナメント進出を決めた女子代表。キャプテンの石川真佑(左から3人目)を中心に粘りのバレーを高める

バレーボール日本代表は男女とも世界の強豪の一角で、2028年に開催されるロサンゼルス五輪でのメダル獲得も夢ではない。

ひとつの機運がある。それは2024年10月に開幕したSVリーグで、プロ化の波が大きな刺激をもたらした。特に、男子の観客動員は飛躍的にアップ。フランス代表のアントワーヌ・ブリザールのような世界トップの外国人選手も来日し、競争力が向上した。リーグが活性化し、強化の土台になっているのだ。

女子は6月から7月にかけて行なわれたバレーボールネーションズリーグ(以下、VNL)で、和田由紀子の〝爆裂〟スパイクなどで勝利を重ね、6年連続で決勝ラウンドに進出。世界5位のポーランドにフルセットの末に勝利する姿は感動的だった。

準々決勝で世界2位のブラジルに屈するも、フェルハト・アクバシュ監督の下で「失敗を恐れず、攻めていこう」という姿勢が徹底されている。高さやパワーでは世界に劣るが、守勢から挽回できる伝統の粘り強さは健在だ。

「ポーランドは『早く決めたい』ってところでミスも出たんだと思います。そこが〝日本らしいバレー〟ですね」

リベロの福留慧美がそう語っていたように、まさに粘り勝ちの方程式だった。

「ラリーが長くなりましたが、それが自分たちの戦い方です。ラリーに持ち込むと相手がミスしてくれるから、無理に打ってシャットされるんじゃなくて、点数にならなくても(ボールを)上げること。そうすると相手も『次も拾われるかも』と迷うし、ほかの選手がブロックしたり、拾ったりということにつながるので」

大柄ではない日本人が、世界と渡り合うための戦術だろう。ブロックディフェンスでコースを絞りながらスパイクを拾い、自分たちのボールになるまで我慢する。緻密さ、丁寧さが必要な、辛抱強い連係戦術だ。

海外でのプレーを経験している選手が多くなっていることも、成長に拍車をかけている。キャプテンでエースの石川真佑はイタリアでプレーし、ハイセットの難しいボールを相手コートに叩きつける技術がさらに上がった。

ほかにも、新鋭アタッカーの秋本美空、セッターの関 菜々巳、リベロの小島満菜美といった主力は海外組。佐藤淑乃、和田、宮部藍梨、岩澤実育らも、新シーズンは海外のリーグでプレーすることが決まっている。日常的に高さ、パワーのある選手たちとプレーを重ねることで、状況にいち早くアジャストできるのだ。

VNL準々決勝で、ブラジル相手に1セット目を先取しながら逆転されたように、相手も日本の戦いに適応してくる。打ち砕くようなスパイクや、聳え立つようなブロックを仕掛けてくるだろう。

乗り越えるのは簡単ではないが、それをはね返すスパイカーは石川、佐藤、和田がいて、ロス五輪までには北窓絢音や秋本も食い込んでくるだろう。セッターが彼女たちにお膳立てし、ミドルブロッカーが機動力を生かしたブロードなどで攪乱できたら......。

「チームとして戦う感覚」

そう言う石川自身が誰よりも攻守で躍動し、日本女子を高みに導くはずだ。

VNLでチームを牽引した髙橋 藍(写真)。昨季は代表活動を休養した西田有志らと共に得点を積み重ねたVNLでチームを牽引した髙橋 藍(写真)。昨季は代表活動を休養した西田有志らと共に得点を積み重ねた

男子も、キャプテンの石川祐希(石川真佑の兄)が中央大時代からイタリアでプレーし、世界屈指の強豪ペルージャで欧州王者に輝くなど、海外組の道を切り開いてきた。

それに続くように、今はSVリーグでプレーする西田有志や宮浦健人らも海外リーグを経験。髙橋 藍、小川智大も新シーズンからポーランドリーグに挑戦するなど、SVリーグで研鑽を積んで世界に挑む流れが活況になりつつある。

今回のVNL予選ラウンドでの12連勝という快挙も、その一端だろう。

「ロス五輪までは一切、妥協しない」

若きエースの髙橋がそう誓うように、全員が同じ方向を向いているのは大きい。特にVNLのイタリア戦を、フルセットの末に逆転勝利できたのは実力の証左だ。

「日本が勝っていくには、自分も含めて〝大事な場面で決め切る〟ことが必要。自分は(トスが)上がってくれば決めますし、決める自信を持つことが大事です。(ロラン・)ティリ監督も『大事な場面で全員がボールを欲しがり、自分たちから攻めていけるように』と言っていますが、本当にそうだと思います」

髙橋の決意は際立ったものがある。VNLの全日程を終え、総得点数は全体の4位。一方でディグ(スパイクレシーブ)も同3位と、攻守両面のオールラウンダーぶりは唯一無二だ。特筆すべきはサーブで、ショートで崩す技術は出色だったが、スパイクサーブも強烈だ。VNL全体で2位の24本のサービスエースを記録した。

男子代表のキャプテン・石川祐希(後列左から3人目)は早くからイタリアでプレー。多くのタイトルを獲得した男子代表のキャプテン・石川祐希(後列左から3人目)は早くからイタリアでプレー。多くのタイトルを獲得した

アルゼンチン戦では、石川がエースの風格を見せた。スパイク成功率は80%以上。守備でも味方を支え、決めるべきところで決めた。

一方でカナダ戦では、〝控え組〟だった宮浦健人、大塚達宣、富田将馬が高い決定力を誇り、フルセットでの逆転勝利に貢献。さらにベルギー戦では、チーム最年少の身長2mの大型アタッカー、甲斐優斗が豪快なスパイクを叩き込み、ストレート勝利をもたらした。

「(オポジットが)ふたりいるのは気持ちが楽というか、僕がダメでも宮浦さんがいるし、宮浦さんがダメでも僕がいる。そんな関係性になっていると思います」

西田が同じポジションの宮浦についてそう語ったように、選手層が厚くなってチーム力が上がっている。VNL予選ラウンドは1位通過。決勝ラウンドでは激闘の末に中国を下し、アメリカにはフルセットで惜しくも敗れたが、4位と奮戦した。石川は淡々とこう言っている。

「ピークはあくまで、(ロス五輪出場権をかけて9月に福岡で開催の)アジア選手権(女子は8月に中国で開催)。それを忘れてはいけない」

最終的な目標はロス五輪でのメダルで、今はそのプロセスにある。〝石川きょうだい〟が、その物語の主役のひとりであることは間違いない。

  • 小宮良之

    小宮良之

    こみや・よしゆき

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。ジャンルを超えた活動を続け、小説に『ラストシュート 絆を忘れない』『氷上のフェニックス』(角川文庫)。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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