大展望! プロ野球後半戦「4つの論点」。セは史上初の同率首位ターン、パは鷹が独走ターン......優勝&CS進出をかけた"真夏のサバイバルレース"の行方は?

写真/時事通信社

セ・リーグは、阪神巨人が史上初の同率首位で前半戦を折り返した。片やパ・リーグは、ソフトバンクが独走態勢を築き、上位と下位が「3強3弱」に割れている。残り2ヵ月を切ったペナントレースの行方を徹底展望する!
※成績はすべて7月26日時点

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【論点① セ・リーグ優勝争い 史上初の同率首位! 阪神vs巨人】

開幕前、セ・リーグ優勝の本命は阪神だった。

髙橋遥人、才木浩人、村上頌樹の先発3本柱に、佐藤輝明、森下翔太、大山悠輔、近本光司、中野拓夢らが並ぶ豪華野手陣。戦力だけを見る限り、独走してもおかしくない陣容だ。

ところが、前半戦を終えてみれば、巨人と並んでセ・リーグ史上初の同率首位でペナントレースを折り返すことになった。

現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏は、〝誤算〟の正体をこう読み解く。

リーグ断トツの得失点差プラス52を誇る阪神。それでも勝ち切れない現状を藤川球児監督は覆せるかリーグ断トツの得失点差プラス52を誇る阪神。それでも勝ち切れない現状を藤川球児監督は覆せるか

「阪神は選手個々のタレント性を見ても、今季の得失点差を見ても、明らかにセ・リーグで頭ひとつ抜けている存在です。それでも勝ち切れない最大の理由は、ブルペンのほころび。石井大智の離脱に加えて及川雅貴も本調子ではなく、ブルペン陣を支えるリリーバーふたりが抜けた影響は深刻です。

さらに主力とベンチメンバーの戦力差が激しく、スタメンに固定された選手たちの疲労の蓄積も気になります。正捕手として君臨してきた坂本誠志郎の配球も研究され、裏をかいたつもりが表になり始めています。チーム全体のモメンタムは、やや下降気味と言わざるをえません」

対する巨人は、昨オフに岡本和真(現ブルージェイズ)が抜け、交流戦直前に阿部慎之助前監督が電撃辞任する厳しい情勢の中、交流戦を10勝6敗2分けで乗り切り、6勝12敗と崩れた阪神との差を一気に詰めた。

電撃的な監督辞任もあったが、前半戦を終え同率首位の巨人。橋上監督代行の手堅い采配が光る電撃的な監督辞任もあったが、前半戦を終え同率首位の巨人。橋上監督代行の手堅い采配が光る

「巨人は打線の火力こそ昨年より落ちましたが、リリーフ陣が軒並み防御率1点台で、接戦を拾う力が非常に強い。

野手ではボビー・ダルベックとトレイ・キャベッジが利いています。ふたりともスイング軌道が大きく、やや下からすくい上げるように振るので、各球団のエース級の落ち球を巻き込んで打てる特性を持っています。実際、阪神の先発3本柱も軒並み打ち崩しました。

また、私が新人時代から評価してきた佐々木俊輔ら若手の台頭も大きい。橋上秀樹監督代行も采配に派手さはありませんが、偏りがなく的確です」

お股ニキ氏が新人時代から評価してきた巨人・佐々木。プロ3年目にして、ついにブレイクを果たしたお股ニキ氏が新人時代から評価してきた巨人・佐々木。プロ3年目にして、ついにブレイクを果たした

もっとも、数字上の差は歴然だ。得失点差は阪神がプラス52でリーグ断トツの成績を残す一方、巨人はプラス5。それでいて勝率が並ぶところに、今季のセ・リーグの〝妙〟がある。

「得失点差と勝敗は完全には比例しません。接戦をものにできるチームは得失点差が少なくても勝利を重ねることができますが、それを可能にするのが中継ぎ陣なのです。

今季の巨人は1試合平均3.22得点と爆発力がなく、投手陣の負担はかなりのもの。後半戦のカギは、投手陣の疲労軽減と、打線があと1点を上積みできるかどうか。阪神との首位決戦が8月に6試合組まれていますが、優勝を左右する大一番になりそうです」

【論点② セ・リーグCS進出争い 得失点差に着目! ヤクルト失速、DeNA浮上】

CS進出をかけたセ・リーグの3位争いも後半戦の注目点のひとつ。現在、その座にいるのはヤクルトだが、得失点差はマイナス61でリーグワースト。快進撃を続けた序盤戦の勢いは失われてしまった。

序盤の躍進を支えたヤクルト・山野。セ・リーグ先発投手部門で球宴ファン投票1位で初選出された序盤の躍進を支えたヤクルト・山野。セ・リーグ先発投手部門で球宴ファン投票1位で初選出された

「序盤戦では山野太一ら若手投手の活躍もあり、戦前の予想を上回る勢いがありました。しかし、暑さによる疲労、ケガ人の増加などが重なって5月末以降は失速。オールスターを挟んで35試合連続で屋外球場での試合を強いられるなど、夏場は厳しい戦いがまだまだ続きそうです。序盤が出来すぎだった分、本来の実力に収束してきたとも言えます」

チームを勢いづかせているDeNA・エンカーナシオン。出場19試合で5本塁打、21打点と大暴れチームを勢いづかせているDeNA・エンカーナシオン。出場19試合で5本塁打、21打点と大暴れ

そのヤクルトに代わり、後半戦で3位浮上を目指すのが4位DeNAだ。今季途中からチームに加わった新外国人ヘラル・エンカーナシオンの存在がカギになりそうだ。

「DeNAはリーグ最多の361得点を誇り、首位巨人をも超える得失点差プラス8を記録。7月上旬にエンカーナシオンが打線に加わってから明らかに強くなりました。まるで〝ケガで離脱しないタイラー・オースティン〟。エンカーナシオンが出続けているだけでチームの勢いは変わります。山﨑康晃の不調など誤算もありますが、それを補って余りある打撃力です」

では、下位に沈む広島と中日はどうか。

「前半戦終了時点で最下位に沈んだ中日ですが、巡り合わせの悪さで落とす試合が多く、得失点差マイナス14は順位ほど内容が悪いわけではないことを示しています。ケガや不調でなかなか選手がそろい切らないですが、戦力自体は整いつつあります。

むしろ、厳しいのは広島。両リーグ最少の266得点で得失点差もマイナス48。投手陣が試合をつくっても、1試合平均3得点を下回る打線では逆転する展開に持ち込めません。

野球以外の問題も少なくなく、坂倉将吾、床田寛樹、森下暢仁と今オフFA行使が濃厚な主力も多い。期待の若手が多いヤクルトや戦力が整いつつある中日と比べ、明るい未来を描きにくい状態だと言わざるをえません」

【論点③ パ・リーグ優勝争い ハイレベルで盤石なソフトバンクが独走モード突入!】

パ・リーグでは、昨季日本一に輝いた王者ソフトバンクが58勝34敗で独走態勢に入っている。

2位に5.5ゲーム差をつけて前半戦を折り返したソフトバンク。小久保裕紀監督の下、日本一連覇を目指す2位に5.5ゲーム差をつけて前半戦を折り返したソフトバンク。小久保裕紀監督の下、日本一連覇を目指す

「440得点、313失点で得失点差はプラス127。2位西武がプラス35、3位日本ハムがプラス48なので、総合力では圧倒的に抜けています。しかも、数字以上に試合内容が盤石。野手全員のレベルが高く、細かいプレーひとつとっても完璧にこなしています。

特筆すべきは、長年蓄積してきたデータやバイオメカニクスの使い方が、ここにきて確立されたこと。スーパースターではなかった選手を一線級に仕立て上げる能力が、チームとして相当上がっています。

打球速度188キロを記録した正木智也はリーグ屈指の打者へと成長し、栗原陵矢は前半戦だけで30本塁打を記録。もはや〝魔改造〟の域です」

打球速度188キロを誇るプロ5年目のソフトバンク・正木。今季はすでにキャリアハイの15本塁打を記録打球速度188キロを誇るプロ5年目のソフトバンク・正木。今季はすでにキャリアハイの15本塁打を記録

投手陣にも隙がない。

「藤井皓哉が離脱しても、ロベルト・オスナ、松本裕樹、杉山一樹という強力な勝ちパターンが完成。特に杉山は復帰後の奪三振率(9イニング当たりの奪三振数)が15を超えており、今季MLBを席巻する剛腕を引き合いに出して〝鷹のメイソン・ミラー〟と称賛したくなるほどです。

先発陣も大津亮介や上沢直之に加え、若手左腕の前田悠伍が著しく成長し、便利屋だった上茶谷大河がローテーションで結果を出し始めた。その上でリバン・モイネロを温存しているわけなので、隙はまったくありません」

この絶対王者を追うのが、西武と日本ハムだ。

球団初の交流戦優勝を達成したが、その後は失速気味の西武。リーグ屈指の投手陣を西口文也監督は生かせるか球団初の交流戦優勝を達成したが、その後は失速気味の西武。リーグ屈指の投手陣を西口文也監督は生かせるか

「西武は両リーグトップの防御率2.86を誇り、ソフトバンクとの直接対決も9勝8敗と勝ち越しています。球団初の交流戦優勝も果たしましたが、それ以降はチームとしての疲れも見えて失速してしまいました。

日本ハムは122本塁打、394得点と、打線の破壊力では西武を上回りますが、対ソフトバンク戦で2勝12敗と大きく負け越しています。残る直接対決は11試合。そこで9、10勝しない限り、この差はなかなか縮まりません」

12球団断トツの122本塁打を記録する日本ハム。新庄剛志監督は苦手ソフトバンク対策を講じられるか12球団断トツの122本塁打を記録する日本ハム。新庄剛志監督は苦手ソフトバンク対策を講じられるか

日本ハムの課題は、守備だけでなくブルペンの運用にある。

「投手を12、13人登録できて、先発が6人なら、中継ぎは6、7人は必要。ところが、日本ハムは信頼できる3、4人に偏重した起用で疲弊させ、打たれると2軍降格。そして、補充した投手は1軍で使わず、成功体験を積ませることもできない。ワークシェアが成立せず、ブルペン全体の底上げにつながりません。シーズンを重ねる中でリリーバーを着実にそろえてくるソフトバンクとは対照的です。

また、何年も前から期待されてきた日本ハムの清宮幸太郎や野村佑希よりも、ソフトバンクの正木や栗原のほうがはるかに伸びている以上、なかなかその差は埋まらないでしょうし、逆転優勝はかなり厳しいと言わざるをません」

【論点④ パ・リーグCS進出争い オリックスは勝率5割も......実態は「3強3弱」】

最後の論点は、パ・リーグのCS争い。セ・リーグと比べて上位と下位がきれいに分かれ、「3強3弱」状態となっている。

「得失点差は4位オリックスがマイナス46、5位ロッテがマイナス35、6位楽天がマイナス71。上位3球団はすべてプラスですから、明暗がくっきり分かれています」

下位で唯一、借金がないのが勝率5割のオリックスだ。ただし、ホームでは32勝13敗1分けなのに対し、ビジターでは14勝33敗1分けと〝内弁慶〟ぶりが際立っている。

「ビジターでの成績を五分近くまで戻すことが、CS進出の絶対条件になります。しかし、3位日本ハムとの相性が悪く、直接対決は6勝12敗。宮城大弥や山下舜平大といったエース級の離脱、リリーバー宇田川優希のケガなど、故障者が絶えないチーム事情もあり、なかなか浮上のきっかけをつかめません」

ロッテと楽天への見方は、さらに厳しい。

前半戦で早くもキャリアハイの17本塁打をマークしたロッテ・山口。6月、7月は月間打率3割を記録前半戦で早くもキャリアハイの17本塁打をマークしたロッテ・山口。6月、7月は月間打率3割を記録

「ロッテは打率.238、防御率3.61と投打共に課題が多い。生きがいいのは17本塁打の山口航輝、打率.296をマークする西川史礁くらい。WBCに出場したエース種市篤暉が、4月下旬に左アキレス腱断裂の大ケガをしてしまったことも痛手となりました。

楽天の294得点、防御率3.81は共にリーグワーストで投打共に本当に厳しい状態です。交流戦明けから前ロッテ監督の吉井理人監督に代わり、中継ぎの酷使を避けるなど戦い方に変化が見えます。ただし、全ポジションに穴がある以上、地道にドラフトでいい選手を当てていかないとなかなか再建できないでしょう」

交流戦明けから指揮を執る楽天・吉井監督。両リーグワーストの防御率3.81の投手陣を鍛え直せるか交流戦明けから指揮を執る楽天・吉井監督。両リーグワーストの防御率3.81の投手陣を鍛え直せるか

今季MLBでは、シーズン途中で監督解任のあったレッドソックスが、球団タイ記録の15連勝を記録。どん底からの大復活は日本でも起こりえるのだろうか。

「日本にそこまで戦力が整った下位チームは存在せず、ロッテや楽天が後半戦であれほど勝ちを重ねられるとは思いません。単純に連勝という点では、ソフトバンクがさらに強くなるか、巨人が打線を爆発させれば、可能性はあります。

ただ、日本シリーズも巨人が勝ち上がってこようが、阪神が勝ち上がってこようが、ソフトバンクに勝つイメージはなかなかできない。それくらい今のソフトバンクは隙がなく、圧倒的な野球をしています」

お股ニキ氏がそう言い切る王者を止める球団は現れるのか。頂点へ向けたサバイバルレースから目が離せない。

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