熊本地震でも発動! 命をつなぐJAPANローミング完全入門

取材・文/直井裕太 写真/総務省 Wi-Biz TCA 法林岳之

通信障害となったA社のキャリアの端末を、B社のキャリアの基地局に接続することで通信を利用できるJAPANローミングのシステム通信障害となったA社のキャリアの端末を、B社のキャリアの基地局に接続することで通信を利用できるJAPANローミングのシステム

使用中のキャリアの電波が通信障害になったとき、一時的にほかのキャリアに接続して通信を確保できる4キャリア合同の取り組みが「JAPANローミング」。

熊本地震でも発動されたこの新サービスの仕組み、使用前後の設定、そのほかにも災害時に使える通信手段などを解説します!

【大規模災害でも通話やSMSが利用できます!】

7月28日に発生した令和8年熊本地震。キャリアの基地局も被害を受け、スマホの通信が次々と圏外となる中、現場の通信環境の安定に大きく貢献したのが、国内4キャリア合同のプロジェクトである「JAPANローミング」。

この新通信サービスの仕組み、事前の設定、その他の緊急通信との違いなど、ITジャーナリストの法林岳之(ほうりん・たかゆき)さんにお聞きします。

――JAPANローミングとは、どのような通信サービスなのでしょうか?

法林 大規模災害などで自分が契約する通信キャリアが利用できなくなった場合、通信施設が被災していないキャリアが電波を提供して通信を確保する非常時用の事業者間ローミングサービスです。

例えば、NTTドコモの通信施設が被災して圏外となった場合は、無事だったほかのキャリアの回線をNTTドコモのユーザーに開放してスマホの通信を確保する仕組みになっています。

4キャリアだけでなく、それらの電波を利用する格安SIMことMVNOでも音声・SMSの契約があれば利用できます。通信料金は自分が契約する通信プランの料金が適用され、別途サービスの契約も必要ありません。

――これは最近始まったサービスなのですか?

法林 2022年7月に起きたKDDIの大規模ネットワーク障害を契機に、総務省や4キャリアが中心になって災害時にも活用できる「事業者間のローミング技術」として研究・開発が進められました。今年の4月1日からサービスが開始され、令和8年熊本地震や6月の台風6号の接近時などでも発動されています。

現在では、大規模災害時に4キャリアのホームページ、公式XなどからJAPANローミングが発動中のエリアや利用方法などが告知されるようになっています。

ただ、ローミング方式の違いや、ローミング利用前後に必要な設定などもあるので、ユーザーは災害対策として知っておいたほうがよいこともいろいろあります。

――ローミング方式にはどのような違いがあるのですか?

法林 110や119を含めた緊急通報や一般通話、SMS、データ通信が行なえる「フルローミング方式」と、緊急通報だけに対応する「緊急通報のみ方式」の2種類があり、災害時に4キャリアで協議し、どちらを発動するのかを決定します。

ここで注意したいのがフルローミング方式のデータ通信で、通信速度は最大300kbpsに設定されています。LINEやメールでのテキストの送受信は問題ないですが、Xで災害状況を確認しつつ、JAPANローミングの使用方法を調べるといった使い方にはやや厳しい速度です。

それもあって、JAPANローミングについて事前にある程度知っておくべきだと思っています。

――スマホの設定はどのようなことを行なうのですか?

法林 まず、iOS、Android共に基本となるのがOSを最新の状態に保っておくこと。iPhoneの場合は、JAPANローミング発動時にそのまま自動接続されますが、そのためにOSは常に更新されていることが重要です。

古いOSや一部のAndroid端末では、手動で接続する必要があります。この場合は設定からローミングを「オン」にする。自動・手動どちらでも、スマホの画面上部に【JPN-ROAM*】(*は接続されたキャリアによって異なります。ネットワーク名の表を参照)と表示されればJAPANローミングに接続された状態となります。

――利用中の注意点はありますか?

法林 災害時、緊急通報の発信はつながりにくくなりますが、つながるまで繰り返し発信を行なってください。また、緊急通報のみ方式では、端末によってスマホ画面に【圏外】と表示されている場合でも発信が可能です。

ただし、着信通知はできず緊急通報先からの折り返しもできませんので、つながるまで繰り返し発信し続ける必要があるのです。

そして、JAPANローミング利用後の再設定も重要になります。

――どのような再設定があるのですか?

法林 Android端末を手動でローミングオンに設定した場合、再び設定をオフに切り替える必要があります。再設定を行なわなかった場合、自分が契約するキャリアの通信ができません。なので、JAPANローミングを利用後は設定画面のローミング項目を必ず確認してください。

もしもつながらなかった場合は!? JAPANローミングの事前設定。(左)設定から【ローミング】で検索して、使用している端末のSIMの【ローミング】のオンオフ切り替え画面を表示する。(右)ローミングがオフの場合はオンに切り替え。JAPANローミング終了後は再びオフに切り替える。オフにしなかった場合は、通常の回線が通信不可となるので超注意!もしもつながらなかった場合は!? JAPANローミングの事前設定。(左)設定から【ローミング】で検索して、使用している端末のSIMの【ローミング】のオンオフ切り替え画面を表示する。(右)ローミングがオフの場合はオンに切り替え。JAPANローミング終了後は再びオフに切り替える。オフにしなかった場合は、通常の回線が通信不可となるので超注意!

写真左上の【JPN-ROAM S】に注目。こちらはNTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー、楽天モバイルのSIMが設定されたAndroid端末から、ソフトバンク回線にフルローミング方式で接続された状態の表示写真左上の【JPN-ROAM S】に注目。こちらはNTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー、楽天モバイルのSIMが設定されたAndroid端末から、ソフトバンク回線にフルローミング方式で接続された状態の表示

【衛星通信や公共Wi-Fiとの違いは?】

――現在、大手3キャリアが米Starlinkと提携して衛星通信サービスを提供していますが、JAPANローミングとの違いは?

法林 JAPANローミングは屋内でも通信できますが、キャリアが提供する衛星との直接通信は、〝空が見える見晴らしが良い場所〟で使用するという条件があります。なので、倒壊した建物内に孤立した場合などは、基本的に通信不可と考えるべきです。

――そのほかに違いはありますか?

法林 JAPANローミングのメリットは、対応する端末が多いことで、よほど古い端末でない限り接続が可能です。衛星との直接通信サービスに未対応の端末やSIMフリー端末でも利用できます。

ただし、一部のキャリアの〝専売モデル〟の端末の場合は、JAPANローミング発動時にほかのキャリアの電波を利用することができません。自分のスマホが専売モデルかどうかも事前に確認すべきでしょう。

――では現在、災害時に衛星通信はどのように運用されているのですか?

法林 地震の影響で断線したキャリアの基地局は、そのままでは利用できません。断線したケーブルを修復するのではなく、基地局に直接Starlink端末を接続して一般のスマホ用電波に変換して利用されています。この電波がJAPANローミングにも活用されています。

このStarlinkを基地局に接続する「バックホール回線技術」は24年の能登半島地震から始まり、以降は災害現場の通信の安定に大きく貢献しています。

――このほかにも災害時の新しい通信手段などはありますか?

法林 東京都は既存の公衆電話や自動販売機に国際的なWi-Fiローミング基盤である「オープンローミング」を採用した通信機器を設置しています。これは一度設定すれば自動で接続され、災害時にも活用できます。

さらに5Gの基地局、Wi-Fi機能を備えた「スマートポール」の設置も進められています。

そして、コンビニ大手のローソンはKDDIと協力して「災害支援ローソン」を今年から開店しました。Starlinkをバックホール回線に利用した小型基地局機能、発電機によるスマホをはじめとする電子機器の充電。

もちろん、食料や飲料水の備蓄も行なわれています。通信、電力、食料の確保などを備えた災害支援店舗は、30年度までに100店以上を設置することを目指しています。

現在、東京都内に設置される公衆電話は、「オープンローミング」に対応。公衆電話に張られているQRコードからスマホの接続設定を行なえば、場所を移動してもオープンローミング対応の公衆電話付近なら自動で接続。2028年までに1500ヵ所の設置を目指している現在、東京都内に設置される公衆電話は、「オープンローミング」に対応。公衆電話に張られているQRコードからスマホの接続設定を行なえば、場所を移動してもオープンローミング対応の公衆電話付近なら自動で接続。2028年までに1500ヵ所の設置を目指している

今年2月に千葉県富津市の第1号店がオープンした「災害支援ローソン」。災害時の通信回線を確保するためにStarlink端末が設置され、臨時の基地局としても機能。食料・飲料水、災害時トイレの備蓄、さらには地域住民への避難誘導などを目的としたドローンも配備。今後は全国で展開される予定だ今年2月に千葉県富津市の第1号店がオープンした「災害支援ローソン」。災害時の通信回線を確保するためにStarlink端末が設置され、臨時の基地局としても機能。食料・飲料水、災害時トイレの備蓄、さらには地域住民への避難誘導などを目的としたドローンも配備。今後は全国で展開される予定だ

災害支援ローソン災害支援ローソン

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――最後に、これらの災害用の通信機能をユーザーが利用する前の注意点は?

法林 どれも災害時に使う緊急用の通信手段です。ですから、日常的にスマホで行なっているようなことは、通信速度やセキュリティ面で難しいということを認識しておきましょう。

――まずは、もしものときに備えて端末の事前設定をしっかり準備しておきましょう!

  • 直井裕太

    直井裕太

    なおい・ゆうた

    ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。

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