「割れたガラスも、倒れた家具も見えない」盲目の芸人・濱田祐太郎が大地震を想像して気づいたこと

撮影/梅田幸太

盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん

R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」

第34回は、7月28日に発生した熊本地震について考えたこと。

* * *

先日の熊本県の地震。被害に遭われた方や、今も不安な思いをされている方に、心よりお見舞い申し上げます。皆さんが少しでも早く安心して過ごせるようになることを願っています。

地震が起きた時間、僕は北海道でロケの仕事をしていました。ロケバスで待機していたら、マネジャーのスマホから突然、「津波にご注意ください」という音声が流れてきたんです。

「なんだろう?」と思って聞いてみると、熊本県で大きな地震があったというニュースでした。

今回の件で改めて、「目が見えない人間は、大きな地震が起きたときにどうしたらいいんだろう。いったいどうなるんだろう」と考えました。

例えば、周りの状況を把握するだけでも、見えている人より難しいことばかりです。

目が見えないと、「食器が落ちて割れていないか」「家具が倒れていないか」「窓ガラスが割れていないか」などがすぐにはわかりません。

手に当たったり、足で踏んだりして初めて気づくわけですが、それが食器やガラスの破片だったら、その時点でケガをしてしまう可能性もありますからね。

ただ、目が見えている人と比べて、ひとつだけ手間を省略できることがあります。

ブレーカーが落ちて停電しても、ライトがいらないということ。ライトがあったところで、結局見えないですからね。

そういえば以前、ファンの方から緊急避難セットを差し入れでもらったことがあります。「どれだけ心配してくれてるんだ」と思いましたよ。

シンプルなリュックの中に、日持ちするパンや水、携帯用トイレ、消毒液などが入っていて、かなり本格的なセットでした。本当にありがたかったです。

ほかにもいろいろ入っていたんですが、その中に小さな笛がありました。最初は「なんで笛? さすがにこれはボケか?」と思ったんですよ。

当時の僕は知らなかったんですが、どうやら防災において笛はかなり重要なものらしいんです。

例えば、がれきの隙間に閉じ込められたり、家の扉が開かなくなったりしたとき。救助の人が近くまで来たら、笛を吹いて「自分はここにいる」と伝えるそうです。

確かに、閉じ込められた状態では、いつ助けが来てくれるかわかりません。むやみに大声で助けを呼び続けると体力を消耗しますし、疲れてだんだん大きな声も出せなくなっていきます。

いざ救助の人が来たときに声が出ず、自分がいることに気づいてもらえなかったら、ものすごく絶望すると思います。その点、笛なら大声を出すよりも体力の消耗が少なく、音も遠くまで届きやすいそうです。

大阪に住んで15年近くになりますが、これまでにも揺れをはっきり感じる地震を何度か経験しました。でも、いざ地震が起きると、すぐには体を動かせないんですよね。

頭の中では、揺れが起きたらテーブルの下に避難するとか、布団やクッションで頭を守るとか、わかっているつもりなんです。

それなのに、実際に揺れが来ると、「うわっ、地震だ」と思ったまま、数秒間、頭の中が真っ白になってしまう。

少し落ち着いてから、ようやく貴重品を持ち出す準備をしたりできるんですが、この最初の数秒間は、かなり大事な気がします。

いざというとき、考えなくても体が動くようにしておく。何かあったときのために日頃からもしものことが起きるかもしれないって意識をするのは大切だと思いました。

●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう) 
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5

★盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の「死角からの一撃」は毎週水曜日更新

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