
濱田祐太郎
はまだ・ゆうたろう
濱田祐太郎の記事一覧
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5】
盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん
『R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」。
第29回は、同じ"見えない芸人"と共演したときの話。
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ワールドカップ、真っ只中ですね。
アルゼンチン代表のメッシが、38歳でハットトリックを達成したことも話題になりました。W杯でのハットトリック最年長記録。〝神の子〟も38歳。もう神の子というより、神のおじさんですよね。
まあ目の見えない僕にしてみれば、走りながら球を蹴るなんて、それだけで神業やんと思いますけど。
さて、僕はというと先日、目の見えない落語家・桂文太さんと仕事でご一緒しました。大阪にある寄席のイベントで、僕が漫談をして、文太さんが落語をやって、その後MCの芸人さんと3人でトークコーナーをやるという流れでした。
読者の皆さんは「目の見えない者同士、話も合うんだろうな」と思うかもしれませんが、これがまったく話が合わなかったんです。
まず驚いたのは、文太さんは70代なんですが、電話は家の固定電話だけで、スマホを持っていないんです。
僕が「見えなくても音声読み上げの機能があるから、スマホも使えますよ」と言っても、「いやいや、もう怖いねん」って。
今の話のどこが怖かったんやって思いましたよ。確かに使い慣れるまでは面倒で大変ですけどね。でも怖くはないって。
スマホの画面から手がバーッて飛び出してきて鼻をギューッてつねってきたりしたら怖いですよ。でもそんなことはありえないですから。
それで笑ってしまったのが、文太さんの家では1階にその固定電話があって、自分の部屋は3階にあるらしいんです。だから電話がかかってくると、階段を下りて取りに行くんですが、年齢と目が見えないこともあってスムーズには下りられない。
ようやく1階にたどり着く頃には、電話が切れちゃうらしいんです。さすがベテランの落語家さん。話が仕上がっています。
ほかにも、家で個包装のせんべいが置いてあるところに、フリーズドライの味噌汁も置いてあったらしく、気づかずに味噌汁のほうを食べてしまったそうです。
「変な味のせんべいやな」と思いながら、それが口に入ったままさゆを飲んだら、「あっ、味噌汁か」と気づいたんですって。
お客さんには大ウケだったんですけど、さすがにこの話はしらじらしいくらい仕上がりすぎていて、僕とMCは苦笑いでした。
それで「濱田さんもそういう失敗あるでしょ」と話をふられたので、ここは思い切ったことを言ったほうがウケそうだなと思って、「さすがに俺はそこまでアホなミスしないですよ!」と言ったら、文太さんもすぐツッコんでくれて。お客さんにもウケたので良かったです。
その後も、文太さんは下ネタでも笑いを取って、トークコーナーで笑いのハットトリックを決めていました。メッシの倍くらいの年齢ですから、これはすごいですよ。もちろん落語も爆笑でした。
これを書きながら、ふと思い出したんですけど、僕は周りの人からやたら、「落語とか、めっちゃ聴いてそう」と言われるんです。実際にはあんまり聴かないんですけどね。
でもまあ、落語は言葉で伝えることがメインだから、目が見えなくてお笑いをやっている僕は、落語が好きそうなイメージになるんでしょうか。
それとも、いつも楽屋で正座して、独特の口調で昔の話をしゃべったりしているからでしょうか。それはもう落語家やん。
それとも、いつも楽屋で黒酢の瓶を股に挟んで、稲川淳二の口調で人工芝についてしゃべったりしているからでしょうか。それは何語家やねん。
●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5】