『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』藤原 宏編・前編「アニメやドラマの影響もあり、青春のキラキラとした世界観にずっと憧れがあります

取材・文/とり 撮影/加藤芽


あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していくインタビュー連載が、週プレ創刊60周年を記念して復活。第四弾となる今回は、『Seventeen』編集部から刊行された小坂菜緒さんの写真集『君は誰?』や、写真集『moe』をはじめ週プレで豊田萌絵さんのグラビアを多数撮り下ろしされている藤原 宏さんが登場です。

アニメ好きで"青春モノ"に憧れが? 前編では、自身を"普通の人間"と語る藤原さんが写真にハマるまでの意外な遍歴をお聞きしました!

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藤原 今日はわざわざありがとうございます。この連載はいくつか読ませていただいたことがあって、皆さん面白いキャリアの方たちばかりだなぁと思っていたのですが、最初に言っておくと、僕はかなり普通の人間です。......大丈夫ですか?

――だ、大丈夫です! "普通の人間"と自分で言うのも何だか変わっている気がしますが(笑)。

藤原 写真はもちろん好きなのですが、いわゆる芸術に触れて生きてきたタイプの人間ではなくて。大学進学まで写真にはほとんど触れてこなかったんですよ。それまではアニメや漫画が好きな、本当に普通の学生って感じで。

――子供の頃はアニメや漫画がお好きだったんですね。

藤原 実家がケーブルテレビと契約していたので、「アニマックス」というアニメ専門チャンネルで色んなアニメが見られたんです。特に好きだったのは1996年に放送されていた『天空のエスカフローネ』という作品。中世ヨーロッパのような世界観で描かれるロボットアニメなんですけど、恋愛要素があって、登場人物の心理描写も丁寧で、いい台詞が沢山出てくるんですよ。小学生の頃に「アニマックス」の再放送で見て、どハマりしました。以来、主題歌を歌っている声優の坂本真綾さんの大ファンです(笑)。

――おぉー、いいですね。

藤原 当時はやっていたこともあり、『新世紀エヴァンゲリオン』も好きでしたね。リアルタイムで観ていたときは、話の内容が難しく理解できないことも多かったですが、大人になって改めてハマった作品のひとつです。漫画は『週刊少年ジャンプ』が好きで、『ドラゴンボール』や『スラムダンク』をよく読んでいましたね。ドラマもよく観ていて、特に高校生の頃に観た『オレンジデイズ』が好きでした。大学生の恋愛を描いた青春モノなのですが、青春のキラキラ感、ストレートな世界観に憧れていましたね。

――青春への憧れ、ですか。実際の学生生活はどうだったんですか?

藤原 普通に友達と楽しく過ごしていましたよ。当時流行っていた漫画『20世紀少年』の影響もあって、実際に友達と夜の学校に忍び込んでは警備の人に見つからないよう逃げ回ったり、廃墟に出かけたり。みんなで花火を打ち合ったりもしたなぁ。

――絵に描いたような青春を過ごしていらっしゃる......!

藤原 とにかく影響を受けやすいタイプだったので、学園モノのアニメやドラマに出てくるような"青春"をちゃんと謳歌したかったんです。とはいえ、クラスの中心的な感じではなかったですよ。みんなを引っ張るタイプでもないし、勉強やスポーツで活躍するわけでもなく。本当に"普通"でした。

――そんな"普通"な藤原少年、当時は将来何になりたいと考えていましたか?

藤原 特に何もなくて。進路のこともあったので、当時は何もない自分に焦っていましたね。目的がないまま大学に進学するのも何か違う気がするなぁって。ただ、そんなふうに悩んでいた高校2年生の頃、漠然と写真に興味を持ちました。きっかけは当時どハマりしていた岩井俊二監督。映画『花とアリス』が好きだったのですが、サントラCD『H&A』に付いていたフォトブックの写真がすごく素敵だったんですよ。映画とは直接関係ないけど、主演の蒼井優さんの写真集『トラベル・サンド』(2005年/ロッキング・オン/撮影:高橋ヨーコ)も大好きで。あと、先ほども名前が上がったドラマ『オレンジデイズ』で、成宮寛貴さん演じる役がカメラマンのアシスタントをしているのを見て、「写真を撮るってカッコいいなぁ」と思いました。

――影響を受けやすいタイプとおっしゃっていましたもんね。実際に、何か写真を撮ったりはされていたんですか?

藤原 父親が持っていたオリンパスのOM-2というフィルムカメラを借りて、色々撮るようになりました。と言っても、本当に"ただ撮ってみる"って感じでしたけど。結果的に高校卒業後は東京工芸大学の写真学科に進学するのですが、写真の勉強をしようと決意したのは、高校2年生の夏休みに大阪芸術大学の写真学科が高校生向けに開催していた1週間程度のサマースクールに参加したことが決め手になりました。いわゆるオープンキャンパスみたいなもので、写真学科の授業を体験することができたのですが、当時の僕は写真に興味を持ち始めたばかりで何も知らなかったので、教わることの全てが新鮮で楽しかったんです。写真作家と呼ばれる人たちの作品にも初めて触れたし、一緒に授業を受けている同級生の"作品"として撮られている写真を見て、同い年なのにすごいなと、刺激を受けました。ただ、僕は神奈川県の相模原市出身なんですけど、"大阪のノリ"についていけない場面があって(笑)。大阪芸大のAOも合格はしていたのですが、東工大の進学に決めました。

――いきなり「写真の学校に行く」と言って、親御さんは理解してくれたんでしょうか。

藤原 うちはみんな理系なんですよ。父は化学の先生、母と祖母と妹は薬剤師。僕も学生時代は理系のクラスにいました。でも、僕は家族の中でも勉強が出来ないほうだったというか......。父はそのまま理系で進学してほしかったと思いますが、自分には考えられなかったですね。あと、母が背中を押してくれたのは大きかったです。というのも三者面談で担任が「写真で食っていけるわけないだろ!」と僕に強く言ってきた時に、「やってもいないのに何でそんなことが言えるんですか!」と言い返してくれたんです。母が他人に怒っている姿を初めて見て、後には引けないなと思いました。サマースクールで感じた同級生との差を少しでも埋めたくて、予備校に行く道中にスナップを撮ったり、卒業アルバム制作委員に推薦されたこともあり、積極的に友達の写真を撮ったり。一気にカメラ漬けの日々になりましたね。

――お母さん、カッコいいですね。それにしても、一気に写真一色に染まりましたね。

藤原 われながら素直というか。ハマるとそれしか見えなくなるタイプではありますね。大学進学後は写真のことを一番に考えられる環境だったので、さらにのめり込んでいきます。同級生に、今、写真作家として活躍している小浪次郎くんがいて。彼は学生時代から飛び抜けていましたし、他にも実家が写真館の子がいたり、自分がいちばん出遅れている自覚があったから、授業だけでは周りに追いつけないと、泊まり込みで写真をプリントしている写真部(カラー写真部)にも入部しました。写真部は意識の高い人たちが集まっていたので、そこで教わることも多かったですね。部活は2年で終わりだったのですが、その頃には、入学当初に感じていた周りとの差はほとんど無くなっていました。

――充実しているのが伝わってきます。ちなみに、当時はどんな写真がお好きだったんですか? 

藤原 大学に入っていちばん最初に好きになったのは、植田正治さんでした。あと、ニュー・カラー(1970年代のアメリカを中心に、カラーフィルムで写真表現に挑んだ流れのこと。日常風景を撮ることが多かった)と呼ばれるジャンルの写真が好きで、その影響を強く受けている鈴木理策さんも好きでしたね。風景写真ばかり見ていましたが、今思うとそれは、人を、女性を撮るためのコミュニケーション能力がなく、一歩を踏み出せなかったから、風景に逃げていただけのような気もします。『花とアリス』や『トラベル・サンド』みたいな写真を撮りたい気持ちは、ずっとありましたから。もちろん、風景写真も好きではあったんですけどね。

――人を撮る時は相手との関係性が大事ですもんね。その距離の詰め方、コミュニケーションの取り方も含めて、写真になるというか......。

藤原 一応、在学中からポートレートも撮ってはいたんですけどね。あまり手応えは感じていなかったです。とはいえ、将来的には商業の世界でやっていきたかったので、やっぱりポートレートは頑張りたいと思いました。毎日新宿でルミネの広告を見て、「かっこいいな」「こんな写真をいつか撮りたいな」と憧れていたんです。その一方で、大学4年生の頃には就職課に来ていた募集をもとに自民党写真室のインターンに参加しました。就職氷河期だったこともあり、あぶれないようにと思って。ちょうど麻生さんが組閣した頃でしたね。

――ルミネの広告とは全然世界の違う、超お堅い場所に!

藤原 そうなんですよ(笑)。「青春モノのキラキラとした世界観が好き」というのが僕の原点。最初から分かってはいましたが、僕が撮りたい写真が撮れる場ではなかったので、結局就職はしませんでした。卒業後はTA(ティーチング・アシスタント)として先生の手伝いをしつつ就活をし、1年遅れで小学館のスタジオに入社しました。同期にカノウ(リョウマ)くんがいましたね。


●藤原 宏(ふじわら・ひろし) 
1986年生まれ、神奈川県相模原市出身。 
趣味=テニス 
東京工芸大学写真学科卒業後、小学館スタジオに2年間勤務。その後、倉本侑磨氏に師事し、2014年にPYGMYCOMPANYに所属。『CanCan』や『Seventeen』など、女性ファッション誌を中心にキャリアをスタート。2021年に発売された小坂菜緒(日向坂46)ファースト写真集『君は誰?』を皮切りに、アイドル写真集やグラビア誌にも活動の幅を広げる。上村ひなの(日向坂46)『そのままで』、田村真佑(乃木坂46)『恋に落ちた瞬間』、五百城茉央(乃木坂46)『未来の作り方』などの写真集を撮影しているほか、週プレでは写真集『moe』をはじめ、声優・豊田萌絵のグラビアを全て撮影している。

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