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発足から半年が経過した高市政権だが、いまだ高い内閣支持率を誇る。それだけに高市早苗首相も自身の振る舞いについて「このままでいい」と思っているのかも
執務室にこもりがちで、独断専行が目立ち、それゆえやらかしも多い。自民党の内部では、そんな高市首相を"卑弥呼(ひみこ)"と評する声もある。
でも、高い支持率を維持しているなら無問題!と、油断できるのは今のうちかも。高市首相の足場を揺るがしかねない危機は、年内に3回訪れる!
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5月初旬の高市早苗内閣の支持率は74・2%(5月2~3日、JNN調べ)。4月の同調査から2.7ポイント上昇した。この数字に旧安倍派の自民党議員が目をむく。
「自民党の全議員へ計1000万円超のカタログギフトを配布した問題、20億円もの被害を与えた『サナエトークン』の関与疑惑、最近では野党候補へのネガキャン動画大量投稿騒動でも物議を醸した。
なのに、政権発足から半年がたってもこの高支持率。こんな首相、見たことありません。衆院選の大勝直後、あまりの権勢ぶりに党内の一部では『高市首相は自民党にとっての"卑弥呼"になった』というささやきが聞こえたものです。党内を見回しても、表立って高市首相に意見できるような人はいません」
卑弥呼といえば『魏志倭人伝』に記された邪馬台国の女王......なのだが、高市首相が党内でそのような人物と重ね合わされるのは、ある種の皮肉が入り交じっているからだ。
卑弥呼は人前に出ることはめったになく、弟を通して民衆に言葉を伝えた―このよく知られた伝承と、高市首相の執務スタイルは少し近いものがある、とイメージされている。官邸内を知る元キャリア官僚のひとりが証言する。
「歴代の首相と比べると、高市首相は明らかに政治家や官僚とのコミュニケーションが少ない。
夜の宴席に顔を出すことはほぼなく、午後6時過ぎには公邸に戻ってしまう。週末の土日も外出が少なく、終日公邸におこもりということも珍しくありません」
首相就任以来の半年間で、外交以外で確認されている首相の会食シーンは後見人である麻生太郎自民党副総裁との食事会など、わずか6回きり。
高市首相にとっては「後見人」の麻生太郎自民党副総裁(手前)だが、会食の機会は多くない
ほぼ毎晩、政財界のキーパーソンと会食をこなし、人心掌握に努めていた麻生太郎、安倍晋三、菅義偉(すが・よしひで)といった歴代の元首相に比べるとかなり異質な宰相だ。
内閣府に出向経験のある別のキャリア官僚もこう話す。
「高市首相は一番身近な秘書官らとも密なコミュニケーションを避けたがると聞いています。
首相のスケジュールは分刻み。そのため、秘書官はランチタイムや車での移動時間を利用して首相に情報を上げたりするものですが、高市首相は、ランチはもっぱら孤食を好む。というか、そもそも昼食を抜くことも珍しくないので、情報を上げるチャンスがない(苦笑)。
また、首相は公用車への秘書官の同乗も拒否することが多く、大切な情報を耳に入れようとしても『口頭での説明はいらない。メモか資料をちょうだい』と断られることもしばしば、だそうです」
そんな高市首相の本領が発揮されたのが、4月23日に都内のホテルで行なわれた衆院選初当選組59人による懇親会。周囲からの強い要望もあり、久々の顔出しとなったものの、その滞在時間はわずか15分間だけだった。
「初当選の59人はいわば、高市チルドレン。高市首相は自分のグループを持たない。普通なら党内基盤強化のチャンスとばかりに高市グループ結成を目指してリクルートにいそしむものですが、首相はテーブルごとに記念写真を撮ると、そそくさと公邸へ帰ってしまった。
ある1回生議員は『当選後、首相と会話をしたことがまだ一度もない。首相の看板政策である積極財政について具申したいこともあったのに、そのチャンスもなかった』とこぼしていました」(自民党関係者)
首相の言動で目立つのが、周囲の意見に耳を貸さず、独断で物事を進めたがるという点だ。前出の内閣府への出向経験があるキャリア官僚が続ける。
「高市政権になって、国会答弁に備えた官僚らによる首相へのレク(事前説明)はなくなりました。理由は簡単。首相はとにかくトップダウンが好きで、なんでも自分で決めたがる。だから、事務方が答弁や政策の整合性を巡り、あれこれと口を出してくるレクが気に入らないんです」
そんな高市首相の手持ち書類は付箋と書き込みでいっぱいだという。
「公邸に帰宅すると、深夜まで秘書官らから受け取ったメモや資料を熱心に読み込んでいるんです。そうして翌朝の正副官房長官会議で矢継ぎ早に指示を飛ばす。
安倍元首相のように秘書官ら周囲の進言を大胆に取り入れたり、政策づくりを全面的に任せたりといったことはしません。ほぼ高市首相の独壇場です。
某省庁の幹部も『わが省からも官邸に秘書官を送り出しているんだけど、スムーズに首相へ情報を上げることができずに困っているようだ』と当惑気味でした」
そんなレクを無視した答弁があだとなり、昨年11月に首相の台湾有事関連発言が飛び出ることとなったとも言える。内閣官房が準備した答弁書には台湾有事について「政府としてコメントすることは差し控える」と明記されていたにもかかわらず、独断で「台湾有事は存立危機事態になりうる」と持論をぶち上げ、日中関係を悪化させた。
そして今、自民党関係者がひそかに恐れているのは、高市首相の人事での采配だ。
自民党安全保障調査会長に起用される一方、衆院議院運営委員長の座からは退いた浜田靖一議員
「高市首相は澄まし顔で驚くような党内人事をやってのけるんです。特に浜田靖一(やすかず)衆院議院運営委員長、逢沢一郎衆院選挙制度協議会座長の交代人事は衝撃的でした。
浜田氏は国会運営で野党に寛容すぎる点、逢沢氏については『いきなり定数削減は論外』とXに投稿するなど、維新と約束した衆院定数削減に後ろ向きな点で、首相は不満だった。
とはいえ、浜田、逢沢両氏は超のつく大ベテラン。その重鎮をあっさりと更迭してしまう強権ぶりに、首相に逆らうと人事で干されるという恐怖心が一気に党内に広がりました」(前出・自民関係者)
現在、首相が思案中とされるのが参院自民の人事だ。「予算審議には熟議が必要」と、身内である参院自民の石井準一幹事長らの抵抗によって国会日程がタイトになり、高市首相がこだわった年度内予算成立が頓挫したからだ。
「そのため首相は、議員会長、幹事長など参院幹部の人事は総裁でなく参院が決めるという党ルールを変えようとしている。狙いは石井幹事長の追い落としです。
その前段階として、首相は予算成立後の恒例である衆参両院予算委メンバーをねぎらう会食について、衆院メンバーとはテーブルを囲む一方で、参院側との食事はスルーしたままです。参院に対する高市首相の見せしめ、報復のようで、党内は凍りついています」
東京・永田町にある首相官邸の外観。この建物の5階に、首相執務室や首相応接室などがある
これらの首相の振る舞いに、ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう懸念する。
「政策にこだわり、トップダウンで実行に移そうという高市首相の姿勢には信念を感じます。ただ、そこまでのプロセスが良くない。トップダウンであればあるほど、国民への説明が必要なのに、国会での首相の答弁時間は異様に短い。
この6ヵ月間で首相がぶら下がり取材に応じたのは39回だけ。岸田文雄元首相の107回、石破茂前首相の66回に比べても見劣りします。こもらず、避けず、高市首相はもっとコミュニケーションを取るべきです」
このまま首相が現在のスタイルを押し通すと、どうなるのか?
「高市首相を支えるチームが機能しなくなることを心配しています。政治は首相がひとりでいきり立っても進まない。国会で法案を通すには党との連携が必要です。
それだけに党とのパイプ役、さらに時には耳が痛いことを進言するご意見番、首相に代わって厳しい役回りを引き受ける汚れ役も必要となる。ところが、高市首相にはそのチームが見えない。
このやり方ではいずれ行き詰まるときが来ます。それは頼みの支持率の低下にもつながりかねないでしょう」
高い支持率を背景に政治力を肥大させながら、政府・与党内ではそれに見合った支持・人望を得られずにいる。それが高市首相の現状だろう。
実際、自民党を取材すると、「高市首相を誠心誠意支える」と歯の浮くようなセリフがしきりに聞こえてくる一方で、ひそひそ話の段階ではあるが、"ポスト高市"の予測話が飛び交っている。
発信源は旧派閥だ。この旧派閥が来年9月の次期総裁選を見据え、ポスト高市への動きを強めているのだ。
その現状をざっくりと紹介してみよう。まずは高市政権の生みの親であり、先の衆院選で60人超の大所帯となった麻生派から。前出の自民関係者が解説する。
「麻生派の基本は"高市推し"です。ただ、本心からではない。主流派として党を支配したくて総裁選で高市さんを担いだだけ。高市さんの支持率が下がれば、手のひらを返して別の玉を担いで主流派の地位を維持しようとするはず。
そのポスト高市候補は茂木敏充外相と小林鷹之政調会長です。先月、武田良太元総務相が旧二階派を中心に22人の政策グループをスタートさせたのに、同じ旧二階派だった小林氏は合流を見送った。党内では麻生派の支援を受けて来年の総裁選に出馬すべく、武田グループと距離を取ったとの見方がもっぱらです」
麻生太郎副総裁がポスト高市の有力候補として目をつけているらしい「コバホーク」こと小林鷹之政調会長
その武田グループが急接近しているのは旧岸田派の林芳正総務相だ。旧岸田派は、旧菅グループと共に小泉進次郎氏を推す岸田元首相、木原稔官房長官らのグループと、林支持派に分裂している。
岸田元首相との関係が冷え込む林氏と、落選から国会に復帰し、旧二階派をまとめて党内基盤を固めたい武田氏が基盤の強化を図るべく、合従連衡の動きを見せているというわけだ。
「ポスト高市」がひそかに噂される中で、いまだ待望論として、その名前が挙がることが多いのが林芳正総務相だ
さらにはこんな動きも。
「岸田元首相の再登板説、あるいはこのところ存在感を高めている片山さつき財務相の名前もポスト高市候補として浮上しています」
となると、気になるのはポスト高市の動きがいつ表面化するのかだ。
それが意味することは高市政権の支持率が急落し、存続の危機に陥るときと言ってもよい。そして、そのタイミングは年内だけで少なくとも3度訪れる可能性がある。経済産業省の元官僚、古賀茂明氏がこう指摘する。
「まずは今月にも危機があります。中旬に予定されている米中首脳会談で、習近平主席とのG2ディールで成果を上げたいトランプ大統領が、関税の緩和や、航空機や大豆などアメリカ産品の大量購入などと引き換えに、アメリカは台湾に関与しない、あるいは関心がないなどの対中協調的なメッセージを出せば、中国と対立を深める高市首相はたちまち窮地に陥ってしまう。
トランプ氏のハシゴ外しに際し、首相が台湾有事発言を取り消すなど柔軟な対応を取れなければ、支持率が急落してもおかしくありません」
5月14、15日に開かれたトランプ米大統領(左)と習近平中国国家主席(右)の米中首脳会談の中身によっては日本の立場が危うくなる可能性も
2度目の危機は8月だ。前出の元キャリア官僚がこう予測する。
「石油、ナフサに加えて、8月になると中国が禁輸しているレアアースの国内備蓄が底を突くんです。それまでにこの3品目の代替輸入がクリアできればいいのですが、不首尾に終わると、日本経済は確実に失速する。積極財政策が裏目に出て市場が日本売りに出れば、円安、株安、国債安のトリプル安になる恐れもある。
高市首相は石油もナフサも備蓄はあるから節約は不要、南鳥島沖のレアアース泥の採取にも成功したので心配ないと強弁してきた。その政策判断が間違いだったとなれば、高市内閣の看板である積極財政策も信認を失うでしょう。そうなれば、政権は危機に陥ります」
11月に中国・深圳(しんせん)で予定されるAPECも高市首相にとっては鬼門だ。
「今回のAPECは中国がホスト国。当然、高市首相と習主席との会談もセッティングされるはず。そこで日中関係をうまく改善できないと、高市さんでは外交を上手にマネジメントできないとの失望が表面化することになる。
実際、私が接触した中国政府関係者も台湾有事問題で妥協はなく、高市首相側からの譲歩が必要との立場を崩していない。このAPECを高市首相がどう乗り切るかによって、政権の将来が決まると予測しています」
やらかしが見えても高い支持率をキープしている高市首相だが、この先、数々の落とし穴を突破できるのか、注目したい。