「監督代行」の難しさと注目すべき理由【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第224回

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

監督代行について語った山本キャスター監督代行について語った山本キャスター

監督代行という立場について、最近ちょっと考えさせられることがありました。

きっかけは、5月26日に巨人の阿部慎之助監督が退任し、橋上秀樹さんが監督代行に就いたこと。シーズンの途中からチームの指揮を執るのはとても大変だろうな、と思った方も多いのではないでしょうか。

今回は異例でしたが、シーズン半ばでの監督交代は成績不振が理由であることが多いですね。リーグ最下位と苦しんでいる楽天も、6月10日に三木肇監督の休養を発表し、塩川達也ヘッドコーチが監督代行を務め、現在は吉井理人新監督が指揮を執っています。つまり、チームの状態がいい時に引き継ぐケースはほぼないということです。

ヤクルトの監督を通算6年務め、2025年までGMを務めた小川淳司さんも、2010年5月27日に監督代行に就任。借金が19あったチームの打線を立て直し、まさかのCS出場を果たします。ヤクルト製品のミルミルになぞらえて、「メークミルミル」と呼ばれ話題になりましたが、これはかなり珍しいケースです。

監督代行の難しい点のひとつは、前任の監督の方針をどこまで踏襲するのか、どこから自分の色を出すか、というバランスだと思います。結果が出なかったから前の監督は退いたわけですが、かといってガラッとすべてを変えるわけにもいかないですよね。

自分が来年も続投するのかどうか、本人がわからないまま采配を振るうこともあるでしょう。残りの試合を来年への布石にするのか、目の前の一勝を取りにいくのか、という判断にも悩むはずです。

巨人で監督代行を務める橋上さんは、現役生活にはヤクルトで、指導者としては楽天で野村克也さんに師事した方。巨人の歴史の中で、生え抜き以外の選手が監督になったケースは初めてです。

最近の1枚。私をイメージして作ってくれた花束だそうです。嬉しい。最近の1枚。私をイメージして作ってくれた花束だそうです。嬉しい。

来季の監督候補としては、桑田真澄さんなど多くの巨人OBの名前が挙がっています。ただ、橋上さんは相当燃えているんじゃないかと思います。

コーチとしてのキャリアは長いけれど、プロ野球監督としての実績は前職のオイシックス時代のみ。そして2025年、コーチとして2012~14年以来となる巨人への復帰となりました。今シーズン、監督代行として結果を残せるかどうかが次のキャリアに直結しますから、"就活"のような側面もありますね。

巨人は交流戦で勝ち越すなど、貯金を増やしています。橋上さんはデータを重視し、状況を見極めてから動くノムさん仕込みの采配が持ち味ですね。

選手起用にも変化がありました。ベテランも含め、調子のいい選手を使うようになったと言われています。それまで出場機会が少なかった選手にとっては、大きなアピールのチャンス。それがチームに与える影響は大きいかもしれません。新しい風が吹いてチームの空気が変わり、パフォーマンスが上がる可能性も十分にあると思います。

ちなみに、監督代行はMLBでも見慣れた光景です。エンゼルスのフィル・ネビン監督は、大谷翔平選手が所属していた2022年シーズンの途中から監督代行を務め、翌シーズンには正式に監督となりました。

また、現在フィリーズを率いるドン・マッティングリー監督代行(暫定監督)は、今年の4月28日から指揮を執っています。MLBは名監督であっても、結果が出なければ容赦なく交代になるケースも。フィリーズも4月末での監督交代でしたから、本当に大変なお仕事ですよね。

監督代行は、どうしても"つなぎ"というイメージで見られがちです。しかし先ほども言ったように、チームとして一番動きが生まれる時期でもありますから、その点でも目が離せません。現在セ・リーグで、阪神と1位の座を争う巨人ですが、成績不振での交代ではない上に、好位置から引き継いでいるということで、他球団からすれば戦いにくいでしょうね。

監督が変わったチームは面白い。シーズンの後半戦も、プロ野球から目が離せません。

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週金曜日朝更新!

  • 山本萩子

    山本萩子

    やまもと・しゅうこ

    1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。

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