プロでじっくり成長する「高卒捕手」というロマン【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第222回

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

高卒の捕手について語った山本キャスター高卒の捕手について語った山本キャスター

先日、ヤクルトの鈴木叶選手が出場選手登録を抹消されました。

今年の彼は開幕から一軍にいて、捕手の中では古賀優大選手に次ぐ23試合に出場(6月11日時点)。リーグで首位を争うチームのベンチにいた時間は、高卒3年目の鈴木選手にとってかなり意味のある時間だったはずです。

ヤクルトで捕手登録されている支配下選手には今、高校卒業後にプロ入りした選手が3人います。古賀選手と鈴木選手、そして中村悠平選手です。年齢もキャリアも違いますが、今季の投手陣を、チームをずっと支えてきました。

先日、古賀選手にインタビューをする機会があったのですが、捕手同士で配球のことを常に共有していると聞きました。「捕手の成長には何よりも経験が重要」とも言われますが、捕手を固定しないヤクルトにおいて、選手同士の風通しがいいことが大きくプラスに働いているのだと思います。

鈴木選手の1軍公式戦デビューは、2024年の交流戦でした。PayPayドームでのソフトバンク戦で、私は仕事で現地に行っていました。

高卒1年目の彼がスタメンマスクを被り、山野太一投手とバッテリーを組んで、7回を1失点。打っても初ヒット、初タイムリーを含む2安打2打点。正直、度肝を抜かれました。

後日、山野投手にその試合のことを聞いたら、「サインに首を振ったら、鈴木に首を振り返された」と笑っていました。先輩の要求を突っぱねるその精神力は頼もしくもありますが、その様子を想像したらなんだかおかしくて、ずっと忘れられないエピソードになっています。

ベンチでも、先輩にぐいぐい絡んでいく姿が印象的でした。物怖じせず、人懐っこい。それでいてどこか、スター然とした雰囲気がある。まだ20歳ですし、ファームで経験を積んで、さらに大きくなって戻ってきてくれる日が楽しみです。

先ほども言いましたが、捕手というポジションは経験がモノをいうポジション。リード、体力、試合を読む力。どれも一朝一夕で身につくものではないでしょう。だからこそ、若いうちから一軍にいることの意味が、他のポジション以上に大きいんじゃないかと思います。

第222回、めでたいゾロ目回です! いつもありがとうございます。第222回、めでたいゾロ目回です! いつもありがとうございます。

今の12球団の一軍登録捕手を見てみると、首脳陣から「"チームの顔"になってほしい」と目をかけられてきた、もしくはそう願われている高卒の捕手が多いことに気づきます。

日本ハムの田宮裕涼選手は、成田高校から入団6年目の2024年にブレイク。オリックスの若月健矢選手は花咲徳栄高校から入団12年目の昨季、ベストナインとゴールデングラブをダブル受賞し、WBCを戦う日本代表にも選ばれました。ロッテの寺地隆成選手は鈴木選手と同じ学年で、明徳義塾高校を卒業して2年目の昨季にオールスターに出場し、規定打席にも到達しています。

セ・リーグでは、DeNAの松尾汐恩選手は大阪桐蔭高校からドラフト1位で入団して、今年で4年目。同じ大阪桐蔭出身の森友哉選手(オリックス)のような、圧倒的な存在感を放つ選手になっていくことを期待されているでしょう。他にも、中日の味谷大誠選手(花咲徳栄高校/5年目)も、広島の持丸泰輝選手(旭川大学高校/育成選手として入団し7年目)も、着実に経験を重ねていますね。

大学や社会人を経た選手は経験が豊富で、そこで得た肉体的な頑健さや精神的なゆとりは大きな武器になるでしょう。一方で高卒の選手は、より長くプロで経験を積むことができます。

ヤクルトの古賀選手は明徳義塾高校からプロ入りし、気がつけば10年目。マスク越しの表情、投手へのジェスチャー、肩の強さ、リードなど、中心選手としてチームを引っ張っているシーンが多く見られます。今年は選手会長も務めるなど、頼もしい限りです。

ただ、若い頃の古賀選手を知る人には、「古賀が選手会長かあ」と、しみじみした顔をされるそうです。五十嵐亮太さんもファームで一緒に汗を流していた時期もあるひとりで、古賀選手の成長に目を細めていました。

試合を俯瞰で見る力、空気を読む力、広い視野......。捕手の成熟は、目に見える成績やプレーだけに表れるものではありません。長い時間をかけて、チームの柱になっていく。そういった物語を紡いでいくポジションだと思います。鈴木選手を含め、多くの捕手の今後が楽しみです。

それでは、また来週。

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週金曜日朝更新!

  • 山本萩子

    山本萩子

    やまもと・しゅうこ

    1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン。

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