『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』竹内裕二/YUJI TAKEUCHI編・後編「グラビアはやるつもりがなかったのですが、週プレの編集者さんが何度もオファーしてくださり、もう断れないと(笑)」

取材・文/とり 撮影/佐々木里菜


あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していくインタビュー連載が、週プレ創刊60周年を記念して復活。第四弾となる今回は、放送中の『仮面ライダーゼッツ』に出演しグラビアでも人気を博す小貫莉奈さんのグラビアを手がけるほか、ファッションでも活躍する竹内裕二氏が登場。

初めてのグラビア撮影は、2017年12月11日発売『週刊プレイボーイ52号』で表紙を務めた久松郁実さんの屋久島ロケ。最初はグラビアの仕事を受けるつもりがなかったそうだが、熱烈なオファーを受けて......? 後編では、独立後どのように仕事を広げて行かれたかについて、詳しくお聞きしました!

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――大学時代に通った大阪の写真教室をきっかけに、カメラマンの道を志すことを決め、上京後は写真家のホンマタカシさんに4年師事されたとうかがいました。独立後は、どのようにお仕事を広げて行かれたのでしょう?

竹内 独立当初は全然仕事がなかったので、ホンマさんがよく行かれていたジンギスカン屋でアルバイトをしていました。最初に仕事をいただいたのはファッション誌『PS』(小学館)の巻末取材だったと思います。営業に行ったんですけど、担当編集の方に作品撮りのポートレートを気に入ってもらったんです。2~3年はアルバイトをしつつ、取材系をメインに撮影させてもらっていました。

――すぐにお仕事が軌道に乗ったわけではなかったんですね。

竹内 独立したばかりの頃は、ホンマさんの真似をして4×5(シノゴ)という大判カメラで撮影をしていました。それしか撮り方が分からなかったんです。ただ、当時よく仕事でお会いしたとあるスタイリストの方に「その写真、竹内じゃなくてもよくない?」「竹内って何なの?」と何度も言われたのを機に、「自分(の写真)って何なんだろう?」と真面目に考えるようになって。あるとき、そのスタイリストの方に「モデルにボールを持たせてみたら」と言われたんです。最初は意味が分からなかったけど、次第に、野球という自分の好きなものを通してコミュニケーションを図ることが結果的に自分らしい写真に繋がるということに気付きました。

――というと?

竹内 どちらかというとホンマさんは、カメラを意識させない撮り方をされる方だと思うんです。でも僕は、その人自身と向き合うスタイルが自分に合っている。生い立ちが違えば、アプローチの仕方も異なります。写真は"ルーツ"なんだと思いました。そうやって自分自身について考えるきっかけを与えてくれる先輩が周りにいたことは、間違いなく自分のカメラマン人生に大きな影響を与えています。ボールを持たせるのはきっかけに過ぎないですけど、今も現場にはグローブと合わせて持って行くようにしていますね。

――ボールを持たせられると戸惑いそうですけど(笑)、そこも含めて、コミュニケーションが広がるきっかけになりそうですね。自分らしい写真を見つけられて、その後はどのようにしてお仕事が広がったんでしょう。

竹内 仕事をしていくうちに「面白いカメラマンがいる」と、スタッフさんづてにお仕事をいただく機会が増えていきました。特に転機となったのは『SPUR』ですね。元々草野球友達として親交のあった編集者の方からの依頼で、海にピアノを置き、音に合わせてモデルさんが踊るという内容の撮影をしたんです。撮影当日はあいにくの大雨。撮影続行は難しいと思っていたところ、その編集さんが「チャンスだ!」と言い始めて。その声に押されるがまま、戸惑いつつ海に飛び込んで撮影をしたら、想像以上にエモーショナルな写真が撮れたんです。無理は禁物ですが、どんな状況でも攻めの姿勢でいることは、自分にしか撮れない写真が撮れるチャンスになるんだと実感した瞬間でした。

その編集さんからは梶井基次郎の小説「桜の樹の下には」のイメージでプラダを撮りたい、と提案を受けたこともありました。「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!」という書き出しの、おどろおどろしい小説なのですが、実際に読んで、僕なりに解釈を深めて、春より少し早く咲く河津桜を背景にプラダを身に付けたモデルさんを撮影しました。すごく手応えがありましたし、表参道の看板にも大きく掲載されて。そうした積み重ねで、ファッション誌を中心にお仕事が広がり、少しずつカメラマンとして食べていけるようになりました。

――前編でお聞きした弟子時代の話もそうでしたが、どんな無茶も毅然と対応されているというか。お話をお聞きして、その真面目さ、タフさが、仕事に繋がっているような印象を受けました。

竹内 師匠然り、当時は突飛だけどセンスのある写真家の方が多く活躍されている時代でした。僕も何かぶっ飛んだことをやらねばと思った時期もあるのですが、どうしても無理してる感じになって、うまくいかないんですよね(笑)。だったら、真面目でいいじゃんって。まずは求められた写真をしっかり納品する。それが自分らしさだと思えたとき、すごく気が楽になったというか。自分が思うやり方で仕事を広げていこうと決めましたね。そうやって駆け出しの頃は色々と模索していました。

――ずっとファッション誌を中心にお仕事されてきたと思うのですが、グラビアを撮るようになったきっかけは何だったんでしょう?

竹内 2013年に長谷川潤さんのフォトブック『Thank you Sun』を撮影させていただいたんですよ。お子さんが生まれた直後の彼女を、生まれ故郷のハワイ島で撮影した一冊でした。ファッション誌で何度か撮影させていただいたご縁で僕に話があったんですけど、このフォトブックを見た週プレの編集さんから「長谷川さんのフォトブックがすごく好きで、この感じでグラビアを撮ってもらえないか?」とご連絡をいただいたんです。ただ僕はグラビアのことを何も知らなかったので、最初はずっとお断りしていました。何度も断ったのですが、繰り返しオファーがあって......。

――ホンマさんに弟子入りするために何度も事務所に電話をかけた竹内さんと同じじゃないですか(笑)。よほど長谷川さんの写真に感銘を受けたんでしょうね。

竹内 さすがにもう断れないと思ってお受けしたのが、屋久島で撮影した久松郁実さんのグラビアでした。しかも表紙だったんです。初めてのグラビアで右も左も分からないまま現場入りしましたが、衝撃を受けましたよ。というのも、僕が指示する以上の動きを見せてくれるんです。実際に現場に行くまで、グラビアは演出込みの作られた世界だと思っていて、生っぽい雰囲気とか、自分に撮れるか不安があったのですが、完全に久松さんに"撮らされ"ました(笑)。

久松郁実『屋久島』より久松郁実『屋久島』より
――2017年のグラビアですね。当時の久松さんは週プレに何度も登場してくださっていましたし、自分なりの表現を既に持たれていたんでしょうね。しかし、まさか週プレの編集者がグラビアの入り口になっていたとは......。

竹内 2回目のグラビアもその方でした。モデルは奥山かずささんで、撮影場所はタイ。グラビアでは初の海外ロケです。現地に到着するや、すぐにヘアメイクとフィッティングが始まり、いきなりプールに飛び込むというスピード感には圧倒されましたね(笑)。

2019年5月7日発売『週刊プレイボーイ20号』2019年5月7日発売『週刊プレイボーイ20号』
――久松さんも奥山さんも、言われてみると長谷川さん的な、かっこよさを兼ね備えた女性という感じがします。

竹内 その編集さんには、いまだに言われますよ。「ハセジュンの写真集、本当にいいよね」って。そろそろ更新したい気持ちもありますが(笑)、ずっとその話をしてくれるのはうれしいですね。

――最近だと週プレ初表紙を飾られた小貫莉奈さんも、かっこいい雰囲気がありますよね。放送中の『仮面ライダーゼッツ』出演を機に、グラビアでも一気に注目度が上がった印象です。グラビアもすごく綺麗でした。

(左)2026年6月15日発売『週刊プレイボーイ26号』/(右)デジタル写真集写真集『この日のために』(左)2026年6月15日発売『週刊プレイボーイ26号』/(右)デジタル写真集写真集『この日のために』
竹内 小貫さんの担当編集さんは、最初に声を掛けてくれた編集の方とは別の方なのですが、「ファッションとグラビアは違うぞ」という厳しさを、要所要所で感じさせてくれる方なんです。言葉数は少ないのに、時々ボソっと鋭い指摘をされるノムさん(野村克也)みたいな(笑)。小貫さんは前にも一度撮らせてもらったことがあったのですが(2023年10月16日発売『週刊プレイボーイ44号』掲載/デジタル写真集『空まで、もっと高く。』に収録)、久々にご一緒して、ガラッと雰囲気が変わっていて驚きました。『仮面ライダー』の影響か、すごく自信に満ちている印象を受けたんですよね。沖縄ロケで天候にも恵まれ、個人的にも手応えのある撮影ができました。

――最初はお断りしていたとうかがいましたが、実際にグラビアのお仕事をされてみて、印象は変わりました?

竹内 そうですね。楽しいです。ファッションと違って、モデルさん自身を撮らせてもらえるじゃないですか。駆け出しの頃、スタイリストさんに「モデルにボールを持たせろ」と言われたという話をしたと思いますが、その言葉はまさにグラビアで活きています。人それぞれ、色んな球を投げるわけですよ。ストレートがいいと思いきや、意外とカーブも投げられる、みたいな。それをそのまま写真に投影できるのが、グラビアの面白いところだと思います。何なら、モデルさんがホームランを打てるよう、勝利を目指して試合を進めるのがカメラマンの役割。すごく野球に近い感じがして、面白いんですよね。

――なるほど。ファッションの現場とは、やはり違いますか?

竹内 違いますね。グラビアは、とにかくカメラマンが舵取りする場面が非常に多い。ファッションではスタイリストさんや編集者さんから指示が飛んできますが、グラビアは基本的に自分の判断で進められます。それはつまり、モデルと真正面から対峙しているカメラマンが、モデルさんのテンション感やロケーションの具合を見て、現場をハンドルできるということ。人として撮らせてもらえる、というわけです。ファッションは編集者さんやスタイリストさんが「こうしたい」と思った絵が撮れるまで終われないのですが(笑)、グラビアはちゃんと試合を抑えさえすれば、全てのボールを全力で打ち返す必要はないわけです。戦略の立て方が全然違いますね。

――とにかく例えが野球ですね(笑)。

竹内 独立して「自分とは何か?」を考え始めた頃、実はかなり野球に救われたんです。大人になってから始めた草野球ではサードを守ることが多いのですが、結構難しいんですよ。いちばん速い球が来るポジションなので、少しでも日和(ひよ)ったらエラーしてしまう。攻めの姿勢でいないと、抑えられないんです。その感覚がすごく写真を撮ることとリンクして。それ以来、仕事で迷ったときは野球に置き換えることで考えを整理してきたような気がします。やっぱり野球はいいですね。


●竹内裕二(たけうち・ゆうじ)/YUJI TAKEUCHI(BALLPARK) 
1976年生まれ、広島県出身。 
趣味=草野球
写真家・ホンマタカシ氏に師事し、2004年に独立。2016年に株式会社 BALL PARK設立。ファッション誌や広告を中心に、数々の俳優、モデルを撮影。長谷川潤ファーストフォトブック『Thankyou Sun』(ワニブックス)や広瀬アリス写真集『born to be happy』(ワニブックス/他、撮影:藤代冥砂、佐野方美)、など写真集も手がけ、2017年頃からグラビアの撮影も増加中。自身の野球観戦の記憶=ROOT(ルーツ)を撮影した作品集『ROOT ROOT ROOT』(ワニブックス)発売中。

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