【#佐藤優のシン世界地図探索164】「時の流れに身をまかせ」てはならない!? Z旗を掲げた"最後の砦"とは?

取材・文/小峯隆生

高市幕府は日本の絶対防衛圏である最後の砦をぶち壊そうとしている。それは、日本終焉の始まりなのかもしれない......(写真:  )高市幕府は日本の絶対防衛圏である最後の砦をぶち壊そうとしている。それは、日本終焉の始まりなのかもしれない......(写真:  )
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

*  *  *

――日本は世の流れに委ねるべきだと前回前々回で佐藤さんは警告しています。その源流を作ったのはプーチンとトランプの直電会談ですか?

佐藤 そう思います。前回も言及しましたが、お互いの誕生日に電話し合う仲ですからね。

あくまで我々の間にあるのは、立場の違いだけだと。だから、お互いの利益に直接関わることなら喧嘩もやむを得ないけれども、それがないなら省エネでいきましょう、ということです。

――トランプはウクライナのゼレンスキー大統領に「プーチンは停戦に応じる可能性がある」と言いましたけど、これはトランプがゼレンスキーにプレッシャーをかけている?

佐藤 そういうことです。いつでも停戦ができるロシアの状況を伝えたうえで、「お前はもう、継戦する能力がないだろう? 続ければ続けるほど負けるだけだぞ」と伝えているのです。

――電話友達ではない相手には厳しいトランプですね。

佐藤 「人からの借金でずっとパチンコを打っていても絶対に勝てない。だから、パチンコ屋からもう出て行け」と忠告しているんです。

パチンコ台をガンガン叩いて「玉が出ねぇぞ」と文句を叫んでいようが、「金もないんだから、出ていかんかい!!」ということですね。

――ウクライナ最前線は仁義なきパチンコ屋になっていると。ゼレンスキー大統領はその怖さをわかってらっしゃるのでしょうか?

佐藤 あの人は役者ですから、役に徹してなりきっています。要するに、強い大統領を演じていて、匙加減ができないんです。

――日本では、高市幕府の高市将軍は時の流れに身を任せることができていません。もしかしたら、ゼレンスキー閣下も同じなんでしょうか?

佐藤 いや、全く違います。高市氏の背後には、目に見えない日本の神々がついています。だから、ゼレンスキー氏のようにはなりません。

――なるほど。その高市幕府についていうと、自民党候補の落選が相次いでいます。3月の石川県知事選挙から4月中旬までに7連敗と、ヤバい状況です。

佐藤 高市幕府は"大統領選挙"の結果です。ずっとこの連載で言っている通り、大統領選挙と議会制選挙は関係ありません。国民は大統領選だから自民党に入れただけであって、普通の選挙では自民党はまったく人気がないわけです。

――では、幕府は心配御無用と。そして、高市幕府が御庭番となる「国家情報会議」と「国家情報局」の新設が決定しました。

佐藤 一連の議論を注意深くウォッチしました。ただ、インテリジェンスに詳しいという政治家も、そのほとんどが素人。情報源がスパイ小説や漫画からとフィクションの世界だったり、中途半端にしか理解していません。

なので、議論もピントのずれたものでしたね。「基本の基本」を理解していない人間が質問しているんですから。

でも、いいんじゃないですか。これでだんだん慣れてくれば、本当の世界に近づいていきます。インテリジェンスの実際の話を知っておく機会ができるのはいいことですからね。

――これがスタート地点として絶好の機会だと。

佐藤 そういう組織を時代が必要としているわけなんですよ。

――すると、国会の先生方も鍛えられて、インテリジェンスに対する基本、応用を学んで、日本もよくなるということですか?

佐藤 よくなると思いますよ。世の中に本当に怖い世界があると知れば、あまり不用意なことは言えなくなると思います。

――確かに。

佐藤 「口が軽い者は命も軽い」。そういう世界ですからね。

――まずは、知っていいことなのか、知らなくていいことなのか。それを見極める所からですね。そうでなければ、死ぬことになる。

佐藤 「口が軽い奴は命も軽い、気が短い奴は命も短い」。こういうところから入っていくと。

――それがインテリジェンス学校の入学式で言い渡される。

佐藤 はい。どっちの方が怖いですかね?

――両方怖いですよ。『仁義なき戦い』のテーマ曲が聞こえてきます。

......話は大きく変わりますが、政府が2040年までに私立大学を250校削減すると言っています。これ、21世紀の日本の寺子屋システムが崩壊する、超ヤバい事態ですよね?

佐藤 この連載でも過去にBF(ボーダーフリー)大学の重要性を説明しましたが、現状は極めてヤバいですよ。政府のエリート官僚は実態を知らないんですよ。

このいわゆるFランク大学では、四則演算やパーセントの計算、そして常用漢字を勉強しています。いままで遊び呆けてきた学生たちが、ここでものすごい一生懸命勉強しているんです。

――若者とはいえ今後の人生、後がありませんからね。

佐藤 ここで、漢字が読めるようになって、九九と簡単なパーセント計算ができないと、中小企業の正社員になれません。自立できず、いつしか貧困層になってしまうと危機感を持っています。

逆に企業も、正社員として使えるようになるためには、このFランク大学でしっかり学んでもらわないとならないんです。でないと、労働力が確保できない状況だからです。

――だけど、政府のお偉いさんは「大学で小中学校で学ぶ内容を教えているのはおかしい、全て潰してしまえ」と。

佐藤 だいたい、お母さんが子供に怒りだすのは小学4年生頃からなんです。子供が「お母さんこれ教えて」と聞いても、「そんなの学校の先生か塾の先生に聞きなさい」と拒絶するわけですね。

だから、Fランク大学に行く学生の多くは、高校生までは小学3年生レベルの知識で日常を生きてきたんです。

――その流れに任せて生きてきた小学3年生レベルの大学生が、最後に中卒並みになるのが栄光のFランク大学卒業の日になると。

佐藤 そうです。京都大学名誉教授の山極寿一先生が言っているように、人間とゴリラの違いは、思春期と老齢期にあります。

思春期の人間は、生殖能力はありますが子供は作りません。人間は社会化するのに教育などが必要で、時間がかかるためです。

しかし、メスのゴリラは生殖能力をなくすと2~3年で死にます。人間は生殖能力がなくても20~30年は生きますよね?

――はい。

佐藤 それは、思春期の連中の面倒をみるためだからです。なので、思春期は伸び縮みします。昔は16歳で結婚できたから、思春期は5年ほどでした。

しかし現代では、30歳ぐらいまでが思春期です。30歳まで親から仕送りを受けている子供なんていくらでもいますよね。

――そりゃ、もちろんです。

佐藤 そして、真面目に勉強する子は成績がそれほど良くなければ、ちゃんと商業科や工業科、もしくは園芸科などの農業系に進学します。将来を考えて手に職をつけるんですね。

一方、不真面目で徹底的にサボろうと思っている子は、普通科に行きます。

――自分はそのサボりまくりの普通科でした。

佐藤 彼らが行く普通科の多くは教育困難校です。アルファベットが読めず、pとqの区別ができません。先生方はコンビニのメニューを見せながら必死に教えています。私の高校時代の同級生が勤める高校では、偶数と奇数の違いがわからない生徒が少なからずいたそうです。

こういう学生たちがFランク大学に行って、もう後がないと一生懸命勉強するんです。だから、落第生にとってFランク大学はZ旗を掲げた"最終決戦地"なんですよ。

そして、そういった若者たちは日本を支える労働力になっています。それを潰すのは間違えた話です。エリート官僚たちがいかに世の中を、現実を知らないかということなんです。

――確かに。

佐藤 Fランク大学こそ、大切にしなければならない"最後の砦"です。自ら手を挙げて中小企業に行くのは、地方のFランク大学の卒業生たちです。彼らが日本のモノ造りを支えているんです。

――Fランク大学とは、流れに身を任せずに再起を図る場所。その最後の砦を潰せと言っているエリート官僚たちは、日本の絶対防衛圏を知らない方々だと?

佐藤 その通りです。

次回へ続く。次回の配信は6月19日(金)を予定しています。

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  • 佐藤優

    佐藤優

    さとう・まさる

    作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞

  • 小峯隆生

    小峯隆生

    こみね・たかお

    1959年神戸市生まれ。2001年9月から『週刊プレイボーイ』の軍事班記者として活動。軍事技術、軍事史に精通し、各国特殊部隊の徹底的な研究をしている。日本映画監督協会会員。日本推理作家協会会員。元同志社大学嘱託講師、元筑波大学非常勤講師。著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)、『蘇る翼 F-2B─津波被災からの復活』『永遠の翼F-4ファントム』『鷲の翼F-15戦闘機』『青の翼 ブルーインパルス』『赤い翼アグレッサー部隊』『軍事のプロが見た ウクライナ戦争』(並木書房)ほか多数。

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