森高愛
日本の国民的特撮シリーズとして長きにわたって愛される「スーパー戦隊シリーズ」。

その最新作『王様戦隊キングオージャー』が話題を呼んでいる。去る3月20日に発売された『週刊プレイボーイ14号』は「スーパー戦隊ヒロイン大集合」と題し、歴代のスーパー戦隊ヒロインたちが登場。最新水着グラビアやインタビューを通して、各々のスーパー戦隊シリーズ愛を披露してくれた。

その特集ではすべてを掲載できなかった歴代ヒロイン4名のインタビュー全文を、撮り下ろし写真とともに週プレNEWSで掲載。今回はシリーズ第38作『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014~15年)で、カグラ/トッキュウ5号役を演じた森高愛さんが登場。

カグラは、ちょっと天然ながら想像力豊かで、どんなものにもなりきることで戦う戦士。そのイマジネーションがハマれば無敵の強さを発揮する! 作品から得たものや当時の心境、そしてスーパー戦隊シリーズの魅力を語る。

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――『烈車戦隊トッキュウジャー』に、カグラ/トッキュウ5号役で出演した当時のことは覚えていますか?

森高 クランクインしたときが15歳で、それまではモデルとしての活動が多かったです。もともと演技はしたいと思っていたんですけど、演技経験は少なかったので、未知の世界に飛び込む感覚だったことを覚えています。

――出演前は、特撮ドラマに馴染みがあったんでしょうか?

森高 弟がいるので、『特捜戦隊デカレンジャー』(2004~05年)と『仮面ライダー響鬼』(2005~06年)を見ていました。弟が熱を出したときは、『これで強くなれるよ!』って言って、冷えピタにデカレンジャーの"SPD"(Speial Police Dekarangerの略称)って書いて貼ってあげたこともありました(笑)。なので、少し前に放送された『スーパー戦隊最強バトル』に出演させていただいて、ドギークルーガー(『デカレンジャー』に登場した犬の獣人のような姿をした警察官)と共演させていただいたときはうれしかったです!

森高愛さんが演じたカグラ ©東映森高愛さんが演じたカグラ ©東映

――オーディションのことは覚えていますか?

森高 その日はたまたま会場の外が騒がしくて、私はその外の声に気を取られてしまったんです。でも、私がカグラ役に合格した理由のひとつが、オーディション会場の外に気を取られて集中してなかったかららしくて(笑)。その様子が、天真爛漫で自由なカグラのイメージに合っていたそうです。

――出演が決定したときの心境は?

森高 とにかくワクワクが大きかったです。15歳だったので、仕事が決まったというよりも、これから何か楽しいことが起きるという感覚だったのかもしれません。

――カグラは、たぐいまれな想像力の持ち主で、「私はなれる! 自分はできる!」と強く思い込むことで忍者や映画監督、カンフーガールなどに"変身"し、何にでもなりきって無敵の強さを発揮する特殊能力を持っています。

ちょっと天然なところがある女のコでもあり、ルックス的にはツインテールがトレードマーク。森高さん自身と似ている部分はありましたか?

森高 似ている部分は多かったと思います。かわいいものやピンクが好きという設定も共通していましたし、割とそのままの自分で演じていた感覚です。

ただ、カグラは私より臆病なところがあったので、そこは気をつけました。どう臆病さを表現するかを考えて、何かあったらすぐに隠れる動きをしてみたんです。その動きが監督に「いいね!」と言われて、カグラの定番の動きになりました。

――撮影は1年間の長丁場。大変だったことは?

森高 当時は大変だという感覚はそんなになくて、今思うととにかく元気でした(笑)。スタッフさんもキャストも素敵な方たちばかりで、優しくて家族みたいだったなと思います。

だから、1年間楽しかった記憶しかありません。もちろん愛のあるお叱りはありましたよ。カメラマンさんに「そこのピンク! もっとこっちだよ! そこにいたら写らないことがわかんないのか!」みたいな(笑)。でも、そういうお叱りも前向きに受け止め、お芝居の基本を学んでいった感じです。

当時の私はモデルもやっていたので、カメラがあると無意識でカメラを見ちゃうクセがあったのですが、ドラマは私たちの日常を追うもの。必要な場面以外ではカメラ目線はいけない。そういうことも学びました。

――カグラを演じるにあたって、意識したことは?

森高 「トッキュウジャーの5人は、同い年で友だちだよ」と教えられて、演技については「素直であればいいよ」というアドバイスをいただいていました。実際、気負わず、メンバーのことを好きで信頼している状態が常にあったのが良かったのかなと思います。

みんなとは5人でご飯に行ったり、『アナと雪の女王』を映画館に見に行ったりもしたんですよ。私が先に見ていて、『すごく良かったから、みんなで行こう!』と誘ったんですけど、私が撮影現場でアナが歌いながら雪を投げるモノマネをしていたのを思い出して、みんな「映画が全然入ってこなかった」って(笑)。

――演技の上で転機になったのは?

森高 初めてカグラがメインになった、第3話(「思いこんだら命がけ」)ですね。

――ほかの4人とはぐれてしまい、ひとりで敵に囚われる回ですよね。

森高 そうです。それまでは常に5人で撮影していたんですけど、急に1人で撮影する場面が増えて、すごく不安を感じました。あとその回はカグラが成長するストーリー。それなのにカグラの成長に私が追いつけていなくて、自分の中で演技に違和感を感じました。

一生懸命やってるつもりでも、どこかで恥じらいがあってストッパーがかかっていたんですよね。そんな自覚がありました。そしてそれがちょっと振り切れたかなと思えたのが、カグラがけん玉になりきって戦う第7話(「やるせなく、やる気なく」)です。

――ヒカリ(トッキュウ4号/横浜流星)のけん玉を壊してしまったカグラが、すったもんだの末にヒカリと2人だけで敵と戦うことになる回ですね。

森高 そうです。けん玉になるなんて現実ではあり得ないし難しかったんですが、結局は考えてもよくわからない(笑)。だから、振り切るしかなかったんです。それからは、もっと自分の中で「とにかく楽しくやらないと」という気持ちに切り替わりました。

森高愛

――全47話の中で、特に印象に残っているのは?

森高 印象深いのは、第30話(「誕生日のお祝いは」)です。あるとき、脚本家の小林靖子さんに「カグラは想像して思い込むことでいろんなものになれるけど、これから何になりたい?」って聞かれて、私はすぐに、「パティシエールです!」と答えました。私には、本気でパティシエールを目指したいと考えていた時期があったので、そう答えたんです。

それは、芸能活動を続けながらお菓子の専門学校に行くのは無理だと知り、泣く泣くあきらめた夢でした。その夢を小林さんがかなえてくれたんです。しかも、カグラが作ったケーキをみんなが「おいしい!」と言ってくれるストーリー。本当にうれしかったです。

――物語の裏に森高さんの個人的な思いが込められていたんですね。

森高 ちなみにその回の「大切なのは(ケーキの)見た目じゃない。中身(味や思い)だよ」というセリフは、今も心に刻まれています。何事もどんなに見た目を取り繕っても、必ずボロが出る。だから、人として中身を大事に生きる。そのセリフから学んだ人生の教訓です。

――『トッキュウジャー』を通して森高さんが学んだこと、得たものを教えてください。

森高 私が本当に楽しめば、観ている方も一緒に楽しんでいただけるんだということを学びました。たくさんのものを得ましたが、自分の中で特に大きいのはトッキュウ3号のミオを演じた(小島)梨里杏と出会ったこと。

撮影を通してすごく仲良くなって、今もほとんど毎日のように連絡を取り合っています(笑)。多いときは週に1回、少なくとも月に1回は会ってるんです(笑)。かけがえのない友人です。

――森高さんにとって、『烈車戦隊トッキュウジャー』とは?

森高 一番ワクワクしたし、爆破シーンなど初めての経験がギュッと詰まった作品です。何も言われず霧吹きで衣装に水をかけられて、「爆破で焦げないように」って言われたこともいい思い出です(笑)。

ほこりだらけの怪しげな工場とか、普通は行かない場所で撮影したり、毎日のように非日常的な経験をしていたので、本当に初めてのことや楽しいことがいっぱいあったなーって思いますね。

――その経験があるから、今も演じ続けている?

森高 はい。こんなに楽しいことはないなって思います。演技の世界にある非日常的なことや初めてのことにあるワクワク感を、最初に体感させてくれたのが『トッキュウジャー』です。そのワクワク感を何度も感じたくて、演じ続けています。

(ヘアメイク/横山雷志郎)

森高愛

●森高愛(もりたか・あい)
1998年1月14日生まれ 埼玉県出身
○最新出演映画『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』が2023年公開予定