
坂口孝則
Takanori SAKAGUCHI
坂口孝則の記事一覧
調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!
改名によるリブランディング成功の代表例が王子ネピア「鼻セレブ」(旧称:モイスチャーティシュ)。コラボパッケージの展開も多い(写真は2016年に始まった旭山動物園とのコラボ)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「企業やブランドの改名」について。
* * *
数億円の価値があるノウハウを書く。
私は調達やサプライチェーンに特化したコンサルティングに従事している。セミナーのタイトルなら「調達の 基礎を学べる 3時間」のように、五・七を意識すれば集客が違う。他の商品でもおなじ。ぜひ活用してほしい。もちろん、五・七は一例だ。言い方、伝え方を考えるだけで売れ方が違う。
また会社名の変更も大きな躍進につながるケースがある。商品名も企業名もまずは認知を集めれば売上につながるから、見た目と名称を洗練させるのは重要だ。
このところマルハニチロがUmios、串カツ田中ホールディングスがユニシアホールディングスに社名変更した。以前にはドン・キホーテがパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、さらに遡(さかのぼ)れば富士重工業がSUBARU、松下電器産業がパナソニックに変わった。
このような上場企業の社名変更が増えている理由は、まず大企業化とともに事業の多角化が必然となり、祖業の名称が邪魔になる。たとえば「工業」など、①事業を限定する単語が削除される。凸版印刷もTOPPANホールディングスになった。
そしてグローバルな株主を求めるために、②「日本」などの地域限定単語が削除される。日本人しか読めないフレーズも避けられる。いまをときめく日本電産はニデックになったし、鳥貴族はエターナルホスピタリティグループだし、日本水産はニッスイだ。また、役割の変化から③「ホールディングス」や「テック」とつけるケースも多い。
なお、こうした流れとは別に商品の名称も変わる。新商品の開発には莫大(ばくだい)な費用がかかるが、五・七ネーミングのように打ち出し方を変えることで最小限のコストで売るのは合理的といえる。
有名な成功例は「缶入り煎茶」から「お~いお茶」(伊藤園)、あるいは「モイスチャーティシュ」からの「鼻セレブ」(王子ネピア)だろうか。「カップカレーライス」からの「カレーメシ」(日清食品)もよかった。名称によって話題性が上がり、世間から発見され、売上が変わるのだ。
とまあ景気のいい話を重ねたが、実際には企業名や商品名の変更で収益が上がったケースはほとんどないとされる。おそらく因果が逆で、まず素晴らしい企業や商品があって、名称変更のきっかけで注目されたケースが目立っているだけだろう。
アデランスはユニヘアーに変わったが、またアデランスに再変更した。GAPは名称ではないが、2010年にロゴマークを爽やかにしたらSNS等で猛烈に批判され、ただちに元に戻した。
これらはほんの一例で、さまざまな失敗例があるが、ほとんど記憶されていない。さらにいえば、企業名を変えるケースは看板も広告も名刺も変わりコストがかかる。また既存の企業ブランドが喪失する。
とはいえ、企業は事業転換やグローバル化、あるいはM&Aがさかんになるから、社名変更はこれからも相次ぐはずだ。社名や商品名をいちど決めて終わりではなく、SNS時代にバズるネーミングを試行錯誤する必要もある。その場合も、まずは良い商品が基本なのはお忘れなく。
なお私の社名は「未来調達研究所株式会社」。七・五・七で発見させ中身で記憶に残す。廃業時は実力不足だろう。字余りなく潔く退場する。