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『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが5月の連載を激論!
『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!
希代のストーリーテラーのふたりが5月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。
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第531話 パロ・スペシャルの伝授者!!の巻 (5月11日更新分)
第532話 Mr.バラクーダ見参!!の巻 (5月18日更新分)
あらすじ
生死を問わない完全KO決着のみという「ファイナルスタンディングデュエルマッチ」で行なわれることになったロビンマスクVSペシミマンのエクストラマッチ。ウォーズマンに勝利したペシミマンに対し、師としての貫禄を徹底的に見せつけると宣言!対するペシミマンは、ウォーズマンの必殺技パロ・スペシャルを発展させた技でロビンマスクを捻り上げる!!
爪切男(以下、爪) 2026年の5月は、連載は第531話と第532話の2回だけなんですよね。『週刊プレイボーイ』23号分が、『キン肉マン』だけ休載だったから。
燃え殻(以下、燃) でも、この対談、5年近くやってるけど、週プレ本誌の都合ではない休載って初めてじゃない?
爪 そうなんですよ。僕も今回気が付きました、ここまで休載がなかったことに。
燃 そのほうがすごいよね。あのキャリアと年齢で、全然休載していなかったのが。それで、第531話も第532話も、ほんとにえぐい技の応酬だよね。かなり残酷な。
爪 ふたりが「ファイナルスタンディングデュエルマッチ」を望んだから。
燃 でも、ロビンマスクがボコボコにやられたあとに、コーナーポストの中にあったカツラをかぶってバラクーダになる、という展開には、びっくりした。
爪 ねえ? そりゃペシミマンもびっくりするよ。
燃 ここでバラクーダだとは思わなかった。
爪 でも、燃え殻さんがいつも言っている、今の『キン肉マン』は、数年がかりで物語自体を閉じる方に向かっているとするならば、総括の意味で、バラクーダというキャラクターを、一回出しておかないといけなかったんじゃないですかね。でも、これをできるのが、『キン肉マン』という作品のすごいところだとも。
燃 ああ、それはそうだね。
爪 『キン肉マン』だから許される超展開。他の漫画だったらありえない。
燃 この機会に、バラクーダが最初に出てきた頃を、読み返したほうがいいかな、と思って。ウォーズマンとバラクーダの間に、まだ清算されていないことってあったっけ?
バラクーダってどんなキャラだっけと思った方は、JC8巻の中盤から登場です!
爪 いや、思い当たらないですけど、ただ、バラクーダ、鬼コーチでしたからね。当時、バラクーダがウォーズマンをムチで叩いていた画が、第532話にも出ているように。
燃 ロビンマスク、バラクーダの時は、精神状態が鬼になっていた感じなんだろうね。
爪 今もセリフとしては、ロビンマスクの方が、言うこと、やることが残酷ですしね。ペシミマンにパロ・スペシャルをかけながら、「お前はこのまま私に両腕をもがれて、マットに這いつくばるのだ〜〜っ!」。正義超人の言うセリフではない(笑)。
燃 この間、爪さんが言っていた、ロビンマスクの冷たさみたいなのって、読者の人たちも、ずっと感じてると思うんだよね。優等生であるだけに、ロボ超人で出自がよくないウォーズマンに対して圧が強めだった、というか。今の時代で言ったら、相当パワハラだったんじゃないかな。
爪 いや、完全にそうでしたよね。
スパルタ式といえば、ある程度聞こえはいいかもしれないが、正義超人としての自覚に目覚めたウォーズマンにとってそれは、単なる過度な暴力となっている可能性もある(JC8巻)
燃 だとすると、まさかの、『キン肉マン』という物語が、今の時代とリンクして、ロビンが「あれはパワハラでした」と認めるとか。ウォーズマンが「実はあれはイヤでした」と告白するとか。
爪 ああ、なるほど。
燃 で、そのウォーズマンの痛みは、同じロボ超人であるペシミマンにしかわからない、っていう。そう考えると、『キン肉マン』に今っぽいテーマが入ってくるのかもしれない。
爪 で、第532話の後半で、意識を失ったままのウォーズマンが痙攣(けいれん)し始める、それがどういう意味なのかまだわからない、というのも、いいですよね。どういう意味にも取れるから。今のところペシミマンが、ウォーズマンの気持ちを代弁している感じになってるから、「そうだ、そのとおりなんだ」という意味かもしれないし、「違うんだ、ペシミマン」という意味なのかもしれないし、ここで自分が何か言わなきゃ、という気持ちの表れなのかもしれないし。
燃 で、そのあと、ペシミマンの全身が光り始めて──。
爪 友情パワーですもんね、これ。正義超人が出す光だから。時間超人なのに光ってしまった、ウォーズマンに対してそこまでの気持ちがある。ウォーズマン、ペシミマンに負けた時に、「友達になれなかった」って言ってたけど、ここで友達になれたということですよね、友情パワーが発動したっていうことは。
ロボ超人として生きる苦悩を語り合ったウォーズマンとぺシミマン(JC89巻)
燃 ウォーズマンとロビンマスクの代理戦争っぽいよね。
爪 そう。ややこしい三角関係ですよね。ロボ超人同士にしかわからないこともあるけど、ロビンとウォーズマン、師弟関係のふたりにしかわからないこともある。その中でペシミマンが友情に目覚めてしまった。
燃 それで、今のところ、ロビンマスクが劣勢じゃない? ロビン・スペシャルを防がれ、ロビンマスク版パロ・スペシャルも破られ。でも、タワーブリッジが残っている。
爪 そう!
燃 と考えると、最終的にはロビンが勝利を収めるけど、ロビンとウォーズマンの間のわだかまりは残る。それで、前に爪さんが言っていたように、ペシミマンは死ななくて、この物語の中に残るんじゃないかと。
爪 そうですよね。ここまでウォーズマンと近い存在になったのに、死んで物語から消えるとは思えないから。痙攣しているウォーズマンが、意識を取り戻してから、ロビンマスクかペシミマンか、どっちに付いても感動しそうですよね、我々は。
燃 うん。しかし、考えてみたら、ウォーズマンくらい細かく掘り下げられている超人、ほかにいないかもね。出自、もともといた家、マスクが取れた顔、30分しか闘えないという弱点、ロビンマスクとの関係性。
爪 確かにね。ほかの超人、たとえば、テリーマンだと......。
燃 物語でリアルタイムに描かれたことしか知らないもんね。出生とか親とかは掘り下げられていない。
爪 それこそキン肉マンぐらいしかいないかも、ウォーズマンくらいバックボーンを描かれてきた超人は。
燃 アシュラマンもちょっと描かれていたけど、深さが違うもんね。そう考えると、ゆでたまご先生の、ウォーズマンに対する思いの強さがわかる。あと、ここからロビンマスクが、自分のことを吐露し始める、という展開があるのかもしれない。 ロビンマスク、自分のことを語っているようで、語ってないじゃない? という中で、一番迫れたのは、バラクーダの時だったのかも。
爪 ああ、そうかもしれない。
燃 実はあれが本当のロビンマスクの姿だった、っていう。
爪 だとしたら、この試合でもっとも救われるのはロビンマスクなのかもしれないですね。
燃 バラクーダの時が本当のロビンマスクで、それ以外の時はずっと貴公子を演じていなければいけないと思っていた。そうすると、今のペシミマンとの闘いが、残酷試合になっているのも......1回目の「超人オリンピック」の時、キン肉マンとの試合で、ロビンマスクがかなり残酷な闘い方をして、会場が引く、みたいなシーンがあったじゃない?
第20回超人オリンピック決勝戦キン肉マンVSロビンマスク、ロビンマスクの「死のコース」第二弾となる残虐ファイトに会場が凍りつく(JC第4巻)
爪 あったあった。
燃 という時と同じ、やりすぎてしまうロビンマスクを観れるのが、この試合なのかもね。
爪 ロビンマスクの本性がむき出しになると、そういう試合になるという。
燃 ロビンマスク、本当にそうなると、鎧を脱ぐんだけどね。
爪 ああ、そうだ。久々に見たいな。それこそマスクも脱ぐとかね。昔、新日本プロレスの「ベスト・オブ・ザ・スーパー・ジュニア」の決勝で、エル・デスペラード選手と高橋ヒロム選手が当たった時、デスペさんが途中で覆面を脱いで素顔に戻って、裸でぶつかり合って──。
燃 あったねえ。ああいう感じで、ロビンマスクの本性を見れたら、おもしろいよね。
爪 そう考えると、ペシミマンの本当の姿は、どういうものなんでしょうね。
燃 帽子やコートを全部脱いだら、めっちゃウォーズマンになるんじゃない?
爪 ああ!
燃 ここまで激しい試合をしながら、コートも帽子も全然乱れないじゃない? この先に全部脱ぐための、今のこの状態なんじゃないかな。
爪 あと、考えられるのが......ウォーズマンって今まで、負ける時ってえげつないことになる場合が多かったじゃないですか。
燃 ああ、機械の素顔を見られたり。
爪 もしペシミマンがロビンマスクに負けるのであれば、そういうことになるんじゃないかな。確かに今のところ、格好が全然乱れていないから。もしロビンが勝つのであれば、ひどいやられかたをするかもしれない。ペシミマンがロボであることが視覚的にはっきりわかるような。
燃 ロボ超人的な壊れ方を。
爪 マスクの下の顔が見れるとか。ゆでたまご先生は、パピヨンマンの時に、えげつない正体を見せてくれたから。
燃 ああ、イモムシね。
爪 あれくらい残酷な描かれ方になれば、それだけ、ペシミマンの抱えている悲しみも伝わるだろうし。楽しみですね。
●燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、『明けないで夜』(マガジンハウス)など多数の著作がある。最新著は『これはいつかのあなたとわたし』(新潮社)、『ブルーハワイ』(新潮文庫)。ラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:30~27:00)もチェック
●爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』も発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化。最新刊は、『愛がぼろぼろ』(中央公論社)