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短時間でも疲労感に差が出るという網膜への紫外線暴露。鉄道職員や警察官にも勤務中の着用許可が広まっている
炎天下で激しい運動をしていないのに、夕方になるとぐったり疲れてしまう――。その原因は、目から入る紫外線が自律神経を狂わせる"脳の日焼け"かもしれない。この狂った酷暑を生き抜くための、正しいサングラス選びのコツを伝授!
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「サングラス元年」――今年、この言葉がメディアや眼鏡業界をにぎわせている。背景にあるのは年々厳しさを増している気候だ。
地上に届く紫外線量は年や地域によって変動があるものの、国内の観測では近年高い水準で推移しており、そのリスクへの懸念は高まっている。
それにもかかわらず、国内大手眼鏡チェーン「眼鏡市場」を展開する、メガネトップが実施した調査データ(2024年)では、国内でのサングラス所持率はわずか12.1%。加えて、街中での実際の常用率となるとさらに低いのが現状だ。欧米諸国での所持率60~80%と比べると雲泥の差だ。
では、無防備な裸眼の状態で紫外線を浴び続けると、われわれの目には何が起きるのか。眼科医師の有田玲子氏は、大きく「急性の炎症」と「蓄積による疾患」のふたつに分けて説明する。
「急性のものでいうと、まず紫外線角膜炎(いわゆる雪目)です。角膜の表面に細かい傷が無数にでき、強い痛みと視力低下が起こります。
多くは数日で治りますが、重症の場合や繰り返した場合には角膜が濁り、視力が戻りにくくなることもあります」
ユニクロの公式サイト。トレンドのナロータイプなどが並ぶ。「トレンドを押さえたいならユニクロのラインナップを見ればいい」と眼鏡ライター・伊藤美玲氏
長期的にダメージが蓄積すると、白内障や翼状片(よくじょうへん)といった疾患のリスクも上がる。
「白内障は蓄積型の代表格。紫外線を多く浴びる環境で過ごしてきた人ほど、発症が早い傾向が報告されています。
翼状片は、白目の組織が黒目側に伸びてくる病気で、漁業・農業の従事者など屋外で仕事をする人や、プロゴルファーなどアウトドアスポーツをする人に多い。
進行して黒目の中心部にまでかかると、乱視を引き起こしたり視力そのものを妨げたりします。蓄積型疾患は進行に気づきにくいので、特に注意が必要です」
有田氏が健康被害としてさらに強調するのが、"脳の日焼け"(紫外線疲労)だ。
「目の日焼けは、目そのものの組織が障害を受けるもの。一方で脳の日焼けは、目を通して脳が紫外線ダメージを受けることで自律神経に負荷がかかり、全身の疲労感につながるものです。
網膜は『外に飛び出た脳の一部』ともいわれます。紫外線そのものが脳に直接届くわけではありませんが、目に強い紫外線を受けるとその刺激が神経を介して脳に伝わり、体をストレス状態にすると考えられています。
自律神経や体温調節、体内時計をつかさどる中枢が乱れることで、強い疲労感や熱中症のリスク上昇につながるのです。炎天下でそこまで激しい運動をしていないのに夕方ぐったり疲れてしまうのは、この"脳の日焼け"が一因と考えられます」
目を通して脳に入る強い紫外線が刺激となり、自律神経などが乱れ、強い疲労感や熱中症リスクの上昇につながるという
どの程度の紫外線暴露で脳疲労につながるのか、明確な基準はまだ解明されていないが、有田氏は参考になる研究として次のような例を挙げた。
「以前、筑波大学の体育科学系の研究発表で、UV(紫外線)カットのサングラスをかけてフルマラソンを走った場合と、UVカットが施されていないサングラスで走った場合とで、ゴール後の疲労の程度に明確な差が出たという報告がありました。
2~4時間ほどの紫外線暴露でも、蓄積する疲労感に差が出るようです」
そこで紫外線から目を守る有効な手段としてサングラスが挙がるわけだが、有田氏が医学的観点からのサングラス選びで最重視すべきと指摘するのは「UVカット率」だ。
「最近は99.9%カット、会社によっては100%とうたっているものもありますが、当然、カット率は高ければ高いほどいいと考えてOKです。
逆に注意したいのが、UVカットの表記がないのに濃い色をしたレンズ。いわゆるファッショングラスです。これはUVカットがほとんどされていない可能性が高い。
レンズの色が暗ければ瞳孔は開いてしまいます。それなのにUVカット機能がなければ、かえって裸眼でいるとき以上に多くの紫外線を目の中に取り込んでしまうので、要注意です」
レンズカラーの濃さについては、次のようなアドバイスもあった。
「UVカット率さえ高ければ、色は極端に濃くなくて大丈夫です。むしろ、ある程度まぶしさを感じるくらいの薄さのほうが、瞳孔が収縮して、ピントも合いやすくなり、目に入る紫外線量も少なくて済むのです。鏡で見て、自分の目の形がうっすらわかるくらいの濃さが目安ですね」
また、紫外線対策としての「目薬の過剰な点眼」は逆効果になりうるという。
「涙は『透明な血液』とも呼ばれ、タンパク質やビタミンA、免疫グロブリンなど目を保護する成分を豊富に含みます。
市販の人工涙液の目薬は生理食塩水に近い組成の液体で、必要以上に差しすぎると、もともとの涙に含まれる、傷を治す力や殺菌力を持つ成分まで薄まることがあります。ただし、治療のために処方された点眼薬は別です。
紫外線を浴びた後のケアとしては、目薬よりもまばたきを増やして自分の涙を出すようにしたり、目元を冷やしたりするほうが効果的です」
有田氏は日本人の目の健康意識の低さも問題視している。
「かつて特定健診は市区町村の無料健診に眼底カメラ(眼底写真)検査が含まれていましたが、今は自治体によってオプション扱いになっているところもあります。
体の健康診断は多くの人がしているのに、目の健康診断はほとんどされていないのが現状です。
目の老化は気づきにくく、症状が出たときにはかなり進んでいることも多い。40歳以上の方は、年に1度は眼底検査を含めた眼科検診を受けるのがオススメです」
近年のサングラスブームの背景について、眼鏡ライター・伊藤美玲氏が解説する。
「Zoffが23年WBC日本代表のラーズ・ヌートバー選手やアイドルの目黒蓮さんを起用し、PRに力を入れ始めたのに加え、電車の運転士や警察官、消防士といった『お堅い職業』でも着用が導入されるようになったのが後押しになりました」
実は運転士や駅係員のサングラス解禁には、サングラスブランドによる各鉄道会社への地道な働きかけも影響を与えたという。
そこから警察・消防、さらには高校野球にまで着用の空気が広がった。そうしたところへ今年、ユニクロなどが低価格・高品質のサングラスを本格投入したことで、「サングラス元年」として一気に普及が進んだわけだ。
「ユニクロにはスケールメリットがあるため、価格以上の品質を担保できる。『安かろう悪かろう』ではなく、コスパは良いと言えるでしょう」
眉が真っすぐの人は逆台形のウェリントン型、アーチ形の人は丸みのあるボストン型が似合いやすいという。初心者はまずはここから試したい
今年のトレンドは横長の「ナロー型」など2000年代に流行したY2Kスタイルのリバイバル系だ。ただし伊藤氏は「初心者がいきなり個性の強いトレンド品に手を出すと難しい。定番ですが、ボストン型やウェリントン型が一番失敗は少ない」とアドバイスする。どちらを選ぶかは眉毛の形が目安になる。
「直線的な眉はウェリントン型、丸みのある眉はボストン型が調和しやすいですね」
レンズの色は初心者にはグレーかブルーが無難で、濃度は20~40%程度が見え方としてもファッションとしてもなじみやすいという。
色のついていないUVカット機能付きの「クリアレンズ」も、まぶしさは防げないものの紫外線はしっかりカットできるため、ビジネスシーンなどでは重宝するそうだ。
また、デザインより先に「用途」を決めるのもコツだ。
「休日にたまにかける程度なら安価なものを試すのもアリですが、毎日長時間かけるなら快適さに投資する価値はあります。
アウトドアで使うなら上下左右を覆う大きめのタイプを。用途を決めずに選ぶと、結局、年に数日しか使えないものになりがちなんです」
顔とサングラスの隙間から紫外線が入り込むこともあるため、フィッティング調整ができる眼鏡専門店で選ぶと安心とのことだ。
プラスチックフレームも、板から削り出す伝統的な「アセテート」と、型に流し込んで大量生産する「軽量樹脂」とでは、艶や質感が異なる。
「フレームは装飾的な要素もあるので、価格が高いほど機能的になるとは一概に言えませんが、レンズはクリアな視界が得られるので、ドイツの光学メーカー・ZEISS(ツァイス)製など高価格でも高品質なものを思い切って買うのもアリですね」
また、お手入れも意外と見落とされがちだ。
「せっけんはコーティングが剥がれるのでNG。水洗いしてから眼鏡拭きで仕上げるのがベストです。それと、やりがちですが車のダッシュボードに置きっぱなしにするのも劣化をかなり早めるので厳禁です」
サングラス選びは、もはや酷暑が深刻化する日本において、大切な「目」と「脳」の健康を長期的に守り抜くための必須の自己防衛デバイスなのだ。サングラス元年ムーブメントに乗じて、生涯の相棒となる一本を見つけよう。