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世界中を熱狂させた北中米W杯の余韻が残る8月7日、いよいよJリーグの新シーズンが開幕する。
34シーズン目を迎えるJリーグは、毎年2月に開幕し、12月に閉幕するサイクルが定着してきた。しかし、今年は8月に開幕し、年をまたいだ5月に閉幕する「シーズン移行」が実施され、従来のような「2026シーズン」ではなく、ヨーロッパと同じように「2026-27シーズン」と称される。
日本サッカー界には、以前からJリーグの開催期間をヨーロッパに合わせて「秋春制」に移行しようとする動きがあった。ただ、冬場の12月から2月は降雪エリアをホームタウンとするクラブに競技面と営業面でデメリットが多く、実現には至らなかった。
ところが、2024年からAFC(アジアサッカー連盟)がクラブコンペティションのレギュレーションを変更。AFCチャンピオンズリーグなどの開催を9月から5月までに移行したことが、日本国内で停滞していた「シーズン移行」の動きを活発化させ、その実施に積極的だった野々村芳和Jリーグチェアマンの下、ついに実現に至った。
もっとも、降雪エリアのクラブのデメリットが解決したわけではなく、その対策のひとつとして、12月中旬から2月中旬にウインターブレークを設けることが決定。開幕を真夏の8月に前倒し、従来のオフシーズン期間はリーグ戦を実施しないことになった。Jリーグが今回の「シーズン移行」を「秋春制」と称さないのには、そんな背景がある。
ただ、今回の「シーズン移行」には懸念事項もある。試合実施期間が短縮されたことにより、試合日程が過密になること。ヨーロッパとシーズンを合わせることで選手の海外流出が加速し、フリー移籍(移籍金なし)が増加する可能性が高いこと。
あるいは、スポンサーなど一般企業と会計年度にズレが生じるため、各ステークホルダーとの予算面での調整が複雑になること、などが挙げられる。
一方、Jリーグが強調してきた「シーズン移行」のメリットも見逃せない。
例えば、AFCチャンピオンズリーグエリートといったアジアのクラブコンペティションに参戦するクラブは、過去2シーズンはJリーグの旧シーズンと新シーズンという異なるチーム編成の中での戦いを強いられた。
しかし、シーズンを合わせることにより、監督や選手など同じチーム編成でタイトルを目指すことができるようになったことは、大きなメリットだ。
選手の移籍でいえば、戦力のアップダウンは別として、これまでのようなシーズン中の主力流出が減り、おおよそ開幕前のチーム編成でシーズンを戦うことができる。各監督にとっては、これまでと比べてチームづくりをしやすい環境になった。
また、6月から9月の猛暑の中での試合数が減ったことは、プレーする側にとっても観戦する側にとってもメリットと言えるだろう。とりわけ、気候変動により夏場のパフォーマンス低下が懸念されていた昨今の事情を考えると、選手の健康面で大きな効果が期待できるはずだ。
いずれにしても、今回の変更を固定化せず、今後発生するメリットとデメリットをしっかり分析しながら柔軟に対応、改善していくことが、最も重要なポイントになる。
今年の2~5月に実施された「百年構想リーグ」を制した神戸。新シーズンでも優勝を争うことが予想される
そんな大改革を果たした新シーズンで最大の注目点になるのは、やはりJ1の優勝タイトル争いだろう。現状を見る限り、優勝候補は昨シーズンの優勝チームでもある鹿島アントラーズと、今年の2~5月に実施された「J1百年構想リーグ」の王者ヴィッセル神戸と目される。
鹿島は、百年構想リーグこそプレーオフで神戸に敗れてタイトルを逃したが、東地区「EAST」のリーグ戦では他を圧倒して首位を確保。就任2年目を迎える鬼木達監督の〝負けないサッカー〟も完成度を高めており、J1連覇の可能性は十分にある。
しかも、最後尾にW杯メンバーのGK早川友基が、最前線には昨シーズンの得点王レオ・セアラが君臨。好守の要のふたりをはじめ、戦力をほぼキープできているのが大きい。
このオフには、荒木遼太郎が海外に移籍し、濃野公人もそれに追随することが決定的となった中、ヤン・マテウスとマテウス・ブエノという即戦力を獲得。着々と選手層に厚みを増し、連覇に向けて盤石の陣容を整えている。
神戸と共に優勝候補に挙げられる鹿島は、清水からMFのマテウス・ブエノらを補強し、連覇を狙う戦力を整えている
西地区「WEST」首位の神戸も戦力は充実。宮代大聖がスペインに旅立ち、満田 誠がガンバ大阪に戻り(柏に期限付き移籍中)、広瀬陸斗も鹿島に復帰したため、確かに駒不足は懸念される。
しかし、年間MVPと得点王を2度手にするなど、Jリーグでの実績が十分なFWアンデルソン・ロペスの補強に成功。大迫勇也や武藤嘉紀らベテラン組の負担も大きく軽減されるはずだ。
百年構想リーグでは、就任初年度のミヒャエル・スキッベ監督の堅実な采配も奏功し、安定感はリーグ屈指。確実に優勝争いに加わるだろう。
一方、旋風を巻き起こしそうなチームは、百年構想リーグで「EAST」の2位と躍進したFC東京だ。
指揮を執るのは、かつて攻撃サッカーを植えつけてアルビレックス新潟を躍進させた松橋力蔵監督。FC東京での初年度は苦しんだ印象だが、2年目はそのスタイルが浸透しつつあり、新シーズンで花開く可能性は十分にある。
FC東京が浦和から獲得した本間は、新潟時代に松橋監督の下でプレー。チームのスタイル確立がより進むだろう
戦力的には佐藤龍之介、遠藤渓太ら攻撃の中軸を失った一方、松橋監督が22年に新潟で指導したMF本間至恩と、DFの石原広教を獲得。攻撃的MFの新戦力として、デンマーク代表経験もあるニコライ・ヴァリスも補強するなど、上位を狙えるだけの戦力は整ったとみていい。
果たして、「シーズン移行」後初めてのJ1で優勝するのはどのチームか。開幕が楽しみだ。