MJ(マイケル・ジャクソン)完コピに人生を賭けた芸人、マイコーりょうが語り尽くすMJの偉大さとモノマネ裏話「ジャニーズでマイケルのダンスが一番うまかったのは......」

取材・文/尾谷幸憲 撮影/榊 智朗

マイコーりょう 元はプロのバックダンサーで、モノマネ芸人・コロッケの専属バックダンサーでもあった。2006年8月からマイケル・ジャクソン専門のインパーソネーター(モノマネパフォーマー)として活動を開始。『エンタの神様』(日本テレビ系)などに出演し、『崖の上のポニョ』をMJ風に歌うネタで話題に。14年から所属事務所を離れフリーランスとして、結婚式などの各種イベントでの営業を続けているマイコーりょう 元はプロのバックダンサーで、モノマネ芸人・コロッケの専属バックダンサーでもあった。2006年8月からマイケル・ジャクソン専門のインパーソネーター(モノマネパフォーマー)として活動を開始。『エンタの神様』(日本テレビ系)などに出演し、『崖の上のポニョ』をMJ風に歌うネタで話題に。14年から所属事務所を離れフリーランスとして、結婚式などの各種イベントでの営業を続けている

1980年代から90年代にかけて世界を熱狂させた〝ポップスの王様〟マイケル・ジャクソン。この歴史的なスターの音楽伝記映画『Michael/マイケル』が公開中だ。今回、有数の〝マイケルなりきり〟タレントであるマイコーりょう氏を直撃。その偉大さを深掘りしようとしたら......思いもよらぬ業界の裏話、エモい話が聞けたぞ!

* * *

【音楽エンタメの原点】

――マイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael/マイケル』が世界的なヒットを記録しています。それに合わせて音楽配信サービスSpotifyと米ビルボードのアーティストランキングも同時に1位を獲得していました。今、マイケルが盛り上がりを見せています。

マイコーりょう(以下、マイコー 感慨深いですね。改めて思うのは、マイケルは時代を先取りしたアーティストだったということ。卓越した歌唱力と華麗なダンスで観客を熱狂させるエンターテインメントは、そもそもマイケルが広めたようなものなんです。

マイケル登場以前の音楽ステージは、真ん中にシンガーがいてしっかり歌って、周囲のダンサーが踊って花を添えるのが普通でした。マイケルはそれらをすべてひとりでやり遂げることで、彼ならではの世界観をつくっていた。

実際、エンタメ業界でのマイケルの影響力はとても大きく感じました。僕は10代の頃(1980年代初頭)にジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)に所属していて、少年隊などと一緒にレッスンを受けていたんですけど、当時も所内でマイケルは〝神〟扱いされてました。

東山紀之君がマイケルのダンスをコピーするのが本当に上手でね。僕もそれなりにできるほうだったんですけど、それでも僕が驚くレベルでマイケルを再現できていたのは東山君だけでした。

キング・オブ・ポップの伝記映画『Michael/マイケル』大ヒット公開中!キング・オブ・ポップの伝記映画『Michael/マイケル』大ヒット公開中!

――では、今の男性ダンスボーカルグループは基本的にマイケルの影響下にある、と?

マイコー そう思います。あとは、MVを積極的に制作したことも後の音楽シーンに大きな影響を与えました。一番有名なのが名曲『スリラー』(82年)のMVで、マイケルが狼男になったり、ゾンビになったりしてみんなと一緒に踊りまくる約14分の作品です。

今でこそいろんなアイドルやパフォーマーがYouTubeやTikTokでMVやダンス動画を公開してますが、そのスタイルをスタンダードなものにしたのはマイケルだと言っても過言ではないです。

日本で初めて『スリラー』のMVを放送したのは『ベストヒットUSA』(テレビ朝日系)という番組で、僕はリアルタイムで見ていたのですが、司会の小林克也さんによる「すごいMVが届きました」の前触れとともに流れたそのMVは、本当に衝撃で......。あのときの感動は今でも覚えています。

【苦難がにじむマイケルモノマネ道】

――マイコーさんがマイケルのインパーソネーター(モノマネパフォーマー)として活動し始めたのは2006年ですが、そのきっかけは?

マイコー 僕はいろんなタレントさんのバックダンサーをやりまして、その中で出会ったのがモノマネ芸人のコロッケさんでした。

コロッケさんにはいろいろお世話になったんですが、中でも思い出深いのが彼の米ラスベガス公演(06年)に同行したことです。会場が同地でナンバーワンのホテル「シーザーズパレス」で。普通のタレントは、ラスベガスのこんな大きな会場でライブなんてできません。

そこで改めてコロッケさんの偉大さにも気づいたし、翻って自分の人生も考えさせられた。コロッケさんのようなモノマネ芸人になれば、もっと自分の可能性を広げられるのではないかって。

じゃあ、これまで培ってきたダンス技術や経験を生かしてやりたいモノマネって誰の?ってなったとき、それはやはりマイケル・ジャクソンでした。

――ただ、マイコーさんがデビューした06年あたりって、マイケルが表舞台で活躍していたイメージがないですね。

マイコー おっしゃるとおり。当時、マイケルは全然注目されてなかったですね。ショーパブで「初めまして、マイコーです。マイケル・ジャクソンのモノマネをやっております」って言うと、先輩芸人に「え、いまさらマイケル?」とか言われました(笑)。

タレント事務所の募集に応募した際も、ご丁寧に不採用の手紙に「ほかのモノマネもやるようになったらもう一度」と書かれていた。つまり、「マイケル・ジャクソン専門じゃ取らない」ってことですね。

――それでも、自分を曲げようとは思わなかった。

マイコー はい。でも、トリビュートパフォーマー(見た目やダンスなどを極限まで本人そっくりに再現するアーティスト)の路線は限界がありました。やはり、日本のテレビに出るためには「お笑い」を混ぜないとダメだ、と。

――マイコーさんは『エンタの神様』(日本テレビ系)をはじめ、数々の番組で人気になりましたね。

マイコー 「もしもマイケル・ジャクソンが『きよしのズンドコ節』や『崖の上のポニョ』を歌ったら?」なんていうネタをやらせてもらいました。

ただ、この芸風もマイケル・ジャクソンを高いレベルで再現できていないと伝わらない。マイケルのダンス、所作、歌声が似ているからこそ、『ポニョ』が笑えるわけで。だから日々、ダンスや歌の練習は欠かせませんし、今でもマイケルの映像を見ながら研究する日々です。

もちろん、見た目にも気を使ってます。アルバム『BAD』(87年)の頃のマイケルは、身長175cm、体重56kg。自分は173cmでマイケルより2cm低い。だから体重は56kgを絶対に上回っちゃいけないわけです。自分は普通に食べると、すぐ60kgになってしまうので、毎日が節制です。あと、鼻も整形しました。

――マイケルが鼻を整形していたのは有名ですが、マイコーさんもやっていたんですね。

マイコー マイケルの鼻先は上を向いていますが、僕の鼻は上を向いてません。それでマイケル・ジャクソン好きの美容整形外科医、池田欣生先生に協力を仰いで、全盛期のマイケルの鼻に近づけてもらったんです。

ちなみにラスベガスやハワイで活躍している海外のマイケルのトリビュートパフォーマーも、多くの方が整形してますね。特にマイケル本人も公認していたE・カサノバさんは、顔を全部いじってるくらいの猛者です。

なぜそこまでやるのかというと、見ている人の違和感を少しでも減らしたいからです。ステージに出た瞬間、お客さんが「マイケルと顔が違う」「マイケルよりも太ってる」って思ってしまったら、パフォーマンスにのめり込めないでしょ?

そういうノイズを少しでも排除したい。そうすることで初めて、モノマネ先のマイケルのパフォーマンスのスゴさにも気づいてもらえると思うので。

――今回の映画『Michael/マイケル』は、マイケルのおいっ子のジャファー・ジャクソンがマイケル役を務めています。彼もマイコーさんやほかのインパーソネーターたちと同じ気持ちで挑んでいたかもしれないですね。

マイコー そうだと思います。マイケルを演ずるに当たってダンスや所作だけでなく、体形を寄せるために体を絞っただろうし、さすがに整形はしてないにしろ、顔の表情は相当研究したはず。準備期間が2年もあったという話も出ていますし。

ただ、肋骨からウエストまでのラインはもっと細くしてもよかったかな。70~80年代のマイケルは驚くほど細いウエストラインでした。ジャファー君はその頃のマイケルの体形と比べると、まだ少し太い。まあ、20年これをやってるマイケルオタク視点の小言ですね(笑)。

【〝副産物〟の誇り】

――マイケル・ジャクソンが亡くなったのは09年6月。そのときの心境は?

マイコー テレビ露出が多くなった頃でしたね。6月のある日、マネジャーから電話がかかってきたんです。「マイコー、マイケル・ジャクソンが大変なことになってるけど、テレビ見てみて」って。

で、テレビを見てみたらマイケル・ジャクソンが意識不明で病院に運ばれたと報道されていた。最初は半信半疑でした。マイケル下げをするメディアは多かったから大げさに言ってるんじゃないの?って。

でもその日の夕方に「死亡が確認されました」と。2、3日はその事実を受け入れられなかった。「マイケル・ジャクソンがいない世界が始まったんだ」って思いましたね。

――そんな世界でもマイケルのモノマネをやり続けた。

マイコー 自分の存在する意味が変わったなと思いました。僕のパフォーマンスを見て、ありし日のマイケルに思いをはせてくれるんです。

中には涙してくれるお客さんもいます。それを見て、僕は「キング・オブ・ポップの副産物」なんだと自覚できた。マイケルはあまりに偉大なスターだったからこそ、たとえ偽者であっても、誰かをちょっと慰めることができる、楽しませることができるんだって。

マイケルが亡くなってから17年たった今でも自分にまだ仕事があるのは、マイケル・ジャクソンという存在が今も多くの人の心に住んでいるということだと思います。映画もそういう人たちの思いの結晶と言えるかもしれませんね。 

●『Michael/マイケル』 
監督:アントワーン・フークア 
脚本:ジョン・ローガン 
出演:ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・ヴァルディ、コールマン・ドミンゴほか 
上映時間:127分 全国公開中 

INTRODUCTION 
圧倒的な歌唱力と革新的なダンスパフォーマンスで、伝説となった"キング・オブ・ポップ"マイケル・ジャクソンが、ジャクソン5の一員だった幼少期から、ソロアーティストとして世界的なエンターテイナーへと駆け上がるまでを描いた伝記映画。『今夜はビート・イット』『スリラー』『ビリー・ジーン』など往年の名曲と共に、才能とそれゆえの孤独を抱えたひとりの男の生きざまを活写する。マイケルを演じるジャファー・ジャクソンは、マイケルの実のおいだ。

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  • 尾谷幸憲

    尾谷幸憲

    おたに・ゆきのり

    カルチャー系のライター。『週刊プレイボーイ』(集英社)、『ヤング・ギター』(シンコーミュージック)などの媒体で執筆。著書に小説『LOVE※』(講談社文庫/内容みか共著)、『ラブリバ♂』(ゴマブックス)、『J-POPリパック白書』(徳間書店)ほか。「学校法人 東放学園音響専門学校」にて講師も務める。

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