【ピエール瀧の「萌え萌やしソバ探訪録」】28杯目「100年以上続くお店で、ついにあの味に出合う!」

構成/TAKA-HO

今回は、銀座の老舗「萬福」さんへ今回は、銀座の老舗「萬福」さんへ

「もやしソバ」をこよなく愛するピエール瀧が、名店をめぐりながら、もやしソバとは何なのかを考えたり考えなかったりするこの連載。今回は100年以上続くお店、銀座の「萬福」さんです。創業当時の味の中華そばが食べられます。そして、なんと、ついに、瀧さんは出合ってしまいました......あの味に。

***

――今回は東京・ザギン(銀座)の「萬福」さんです。大正14年頃の創業で、「中華そば御三家」のひとつといわれています。

ピエール瀧(以下、瀧) そういえば、今年って昭和100年だよね。ということは100年以上の歴史があるっていうことか。だからなのか店構えもちょっと大正モダンみたいなたたずまいがあるなあ。早速、入ってみよう。おじゃましまーす。

大正モダンみたいなたたずまいのある店内大正モダンみたいなたたずまいのある店内

店主の久保英恭さん(以下、久保さん) いらっしゃいませ!

 本日はよろしくお願いします。お、メニューの「中華そば」(800円)のところに「大正年間、支那そばの屋台を開業した当時の味です」って書いてあるよ。ほかには「ワンタンメン」(970円)、「チャシュウメン」(1130円)、そして「もやしそば」(900円)ね。

――チキンライスじゃなくて「ポークライス」(950円)っていうのもありますよ。「ケチャップ味のやきめし」って書いてあります。

 じゃあ、必須のもやしそばと、味を比べる用の中華そば、それからポークライスもお願いします。

久保さん はい。ありがとうございます。

 100年も続いていると、メニューに何を追加するか、何をやめるかという判断がちょいちょいあると思うんだけど、もやしそばがちゃんとあるのがうれしいよね。

――その間、もやしそばが市民権を得ていたということですもんね。

 きっとそういうことだよね。

久保さん お待たせしました。もやしそば、中華そば、ポークライスです。

大正時代、開業した当時の味の「中華そば」(800円)大正時代、開業した当時の味の「中華そば」(800円)

 ありがとうございます。うわ、これはおいしそう! まずは、歴史ある中華そばから。この三角の薄焼き卵がのっているのは珍しいよね。で、ほかの具はチャーシューにメンマにナルトにホウレンソウかな。うーん、そして、このかつおだしの香りが和風感を主張しているというか、懐かしい味なんだよ。で、またかつおだしと卵焼きが合うわ。だし巻き卵ほどではないけど、冷やし中華にのっている卵焼きとは意味が違う感じ。ちょっと、これ食べてみ。

――うわっ、うまっ!

 でしょ。チャーシューもホロホロ溶ける系ではなく、歯応え系ではあるんだけどちょうどいい柔らかさなんだよ。そして基本的にはあっさり味だけど、周りにある脂身部分を一緒に食べると、これが見事なハーモニーになる。

――王道中の王道という感じです。

 で、本命のもやしそばなんだけど、具はもやし、ニラ、ニンジン、タマネギに細切り豚肉。それを炒めたものがのっかっている。でも、あんかけ仕上げじゃないのよ。そして、この味は俺が子供の頃に食べてたもやしソバに一番近いかも!

「もやしそば」(900円)「もやしそば」(900円)

――本当ですか!?

 中学生の頃、土曜日のお昼に「ごはん代ね」って1000円札を置いといてもらって、それを持って食べに行ってた近所の中華料理屋さんのもやしソバの味。この塩っ気とか、もやし炒めの油がスープに溶け込んで、唇がちょっとテカる感じとか。うん。ほんと、コレだよ!

――瀧さんの原点の味ですね。

 で、途中から出前を取るようになるんだけど、丼にかぶせてあるラップをピーッと剥がして食べていると、食べ終わった頃にテレビから吉本新喜劇の声が聞こえてくる。懐かしい記憶を掘り起こされたよ。

――出合ってしまいましたね。

 でもさ、これだけ古いお店ということは、うちの実家の近所にあったお店が、ここの味を参考にした可能性もかなりあるよね。

――ありえない話じゃないです。

 まあ、そのお店がなくなった今、もう真相はわからないけど。

――久保さんにもお話を少し聞いてみましょうか?

 そうだね。すみませーん。

久保さん はい。

生まれも育ちも銀座! 店主の久保英恭さんと生まれも育ちも銀座! 店主の久保英恭さんと

 ごちそうさまです。本当においしかったです。お店は大正時代からやられているんですよね?

久保さん そうですね。関東大震災(1923年)の2年後くらいに祖父が屋台から始めたんです。それで、昭和4(1929)年にここにお店を持ちました。

 関東大震災の2年後っていったら、この辺りはまだまだ復興の途中だったんじゃないですか?

久保さん ええ。ですから、その頃に商売を始めた人が多いので、このへんはだいたい創業100年くらいの店ばかりなんですよ。

 あぁ、なるほど。

久保さん うちは最初「西支料理」の店だったんです。西洋料理と支那料理。明治維新までは日本料理がほとんどだったじゃないですか。それに対して洋食や中国料理というのは舶来料理でハイカラだったということで始めたようです。

 だから、ポークライスもあるんですね。

久保さん 祖父がやっていた頃は、オムレツやライスカレー、シチューとか洋食も半分くらいあったんですが、仕込みが大変なのでだんだんやめちゃったんです。

 そんな中で、もやしそばが残っているのはすごいですね。いつ頃からあるメニューなんですか?

久保さん たぶん、昭和30〜40年頃ですね。祖父が始めました。

 じゃあ、おじいさまがあんかけにしなかったんですか?

久保さん そうですね。うちはタンメンもあんかけではないですし。でも、もやしそばは地味に人気なんですよ(笑)。だから、メニューに残っているんです。

 僕もその地味に好きなうちのひとりです。実は、子供の頃に近所の中華料理屋さんで食べていたもやしソバが、これとまったく同じ味なんですよ。あんかけじゃないというのも同じですし......。そのお店が10年くらい前になくなってしまって、ちょっと寂しい気持ちになっていたんですけど、その味に久しぶりに出合えたんです。だから、うれしいという気持ちもあって、一気にかっ食らわせていただきました(笑)。

久保さん そうですか。ありがとうございます。

 いえいえ。こちらこそ、ありがとうございます。本当に感激したので、またプライベートでも寄らせていただきます。

***

■萬福 
東京都中央区銀座2-13-13 
03-3541-7210 

※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります 
※おいしいもやしソバなどの情報は【moemoyashisoba@gmail.com】まで 

■ピエール瀧(ぴえーる・たき) 
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。 
公式Instagram【@pierre_taki】 

★『ピエール瀧の『萌え萌やしソバ探訪録』』は隔週土曜日更新!

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