超ハイレベルなサイ・ヤング賞争いを大谷翔平が制するための条件は!?

取材・文/杉浦大介 写真/共同通信社 アフロ

現地時間6月22日時点で、投手・大谷の成績は7勝2敗、防御率1.47。投球間隔を空けての起用で投球回数は少なめ現地時間6月22日時点で、投手・大谷の成績は7勝2敗、防御率1.47。投球間隔を空けての起用で投球回数は少なめ

昨季、3年連続4度目のシーズンMVPを受賞し、「メジャー最高の選手」という評価を確立した感がある大谷翔平。〝ユニコーン〟とも称される彼は今季、新たな勲章に狙いを定めている。

6月17日(現地時間。以下同)に12度目の先発登板を終えた時点で、ロサンゼルス・ドジャースのエースは7勝2敗、防御率1.47という素晴らしい成績をマーク。これまでまだ日本人選手が受賞したことがないサイ・ヤング賞の候補に挙げられている。

「一見すると現実的ではないようにも思える。ただ、それができる選手がいるとすれば彼だ。DHとしても高い成果を維持しながら、サイ・ヤング賞を狙うことも可能だと思う。日本人投手としてそれを達成できる可能性がある」

開幕直後、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督はそう述べたが、シーズンが半ばに近づいたところで、大谷は打者として打率.297、16本塁打、OPSはリーグ2位の.969(6月22日時点。以下同)と、トップレベルの数字。さらに、投手としてもまだサイ・ヤング賞候補に残っているのは驚異と言っていい。

ただ、実際に受賞の可能性がどのくらいあるかというと、そう簡単ではなさそうだ。タイミングが悪いと言ってもいいだろうが、今季のナ・リーグのサイ・ヤング賞争いは群雄割拠。5月下旬には、MLB公式サイトが『史上空前の大混戦 ナ・リーグのサイ・ヤング争いを制するのは』という記事を配信している。

サイ・ヤング賞の有力候補であるブルワーズのミジオロウスキー。最速168.1キロを誇り、奪三振率が高い右腕だサイ・ヤング賞の有力候補であるブルワーズのミジオロウスキー。最速168.1キロを誇り、奪三振率が高い右腕だ

有力候補のひとりが、ミルウォーキー・ブルワーズの怪物右腕ジェイコブ・ミジオロウスキーだ。5月12日のフィラデルフィア・フィリーズ戦では、先発投手としては史上最速となる168.1キロの球速を記録。その上で1安打完封し、圧倒的な支配力を見せた。

15試合に先発した時点で、93.0イニング、8勝3敗、防御率1.45(リーグ1位)、138奪三振(同1位)と数字も最高級だ。

フィリーズの左腕・サンチェスは、50.2イニング無失点という左腕最長記録を樹立するなど快投を続けているフィリーズの左腕・サンチェスは、50.2イニング無失点という左腕最長記録を樹立するなど快投を続けている

また、フィリーズのエース左腕クリストファー・サンチェスは、メジャー史上5位となる50.2イニング連続無失点という記録を樹立。シーズン成績も105.0イニング(リーグ1位)、9勝3敗、防御率1.80、121奪三振と抜群で、地元フィラデルフィアで開催される7月のオールスターゲームでは先発を務めることになりそうだ。

そのほかにも、カイル・ハリソン(ブルワーズ/8勝1敗、防御率2.50)、クリス・セール(アトランタ・ブレーブス/8勝5敗、防御率2.14)、チェイス・バーンズ(シンシナティ・レッズ/9勝1敗、防御率2.00)と、例年であればサイ・ヤング賞の最有力と目されそうな投手がずらり。

山本由伸(ドジャース/7勝5敗、防御率2.65)や、リリーフとして三振の山を築いているメイソン・ミラー(サンディエゴ・パドレス/20セーブ、防御率0.87、31イニングで61奪三振)も控えており、〝史上最高のサイ・ヤング賞レース〟といわれているのもうなずける。

大谷はそんなそうそうたるメンバーの中で、6月22日時点の米スポーツ専門局ESPNのサイ・ヤング賞予想で3位にランキングされている。規定投球回数には足りていないが、防御率はミジオロウスキーに次ぐ2位と、受賞の可能性は残されているようにも思える。

しかし問題は、ドジャースが常にポストシーズンの戦いを意識しており、シーズン中の先発投手の負担を抑え気味なこと。大谷もフル回転ではなく、基本はNPBのように週1ペースで先発起用されている。そのおかげでプレーオフにいい体調で臨めるかもしれないが、個人賞という点では難しくなる。

大谷の73.2イニング、78奪三振という数字は、ミジオロウスキー、サンチェスに大差をつけられており、ほかの多くの候補たちにも後れを取っている。起用法は、チームが3連覇を目指す後半戦も変わらないはずで、それがサイ・ヤング賞の最大の壁となるかもしれない。

そんな中で、大谷が受賞するための条件はふたつ。まずは、イニング数などは少なくても、より圧倒的な投球を見せ続けることだ。

投球回数も重要な要素と考えられてはいるが、2021年には167.0イニングしか投げなかったコービン・バーンズ(当時ブルワーズ)が受賞。ほかにもブレイク・スネルが、タンパベイ・レイズ時代の18年に180.2イニングで、パドレス時代の23年に180.0イニングで受賞した例もある。

中でも18年のスネルは、21勝5敗、防御率1.89、221奪三振と飛び抜けた成績で、イニング数がリーグ14位でも大きなマイナスにはならなかった。大谷も規定投球回数への到達は最低条件だが、その上で1点台半ばの防御率を維持すれば印象はいいはずだ。

もうひとつ、これは〝他力本願〟になるが、ライバルたちが後半戦で足踏みする可能性だ。ミジオロウスキーはルーキーだった昨季の途中、不振に陥って先発ローテーションから外れた時期があった。

サンチェスも、今春のワールド・ベースボール・クラシックではドミニカ共和国のエースを担ったため、かなり負担がかかっているだろう。

そのほかの投手を含め、後半戦にナ・リーグの先発投手陣のレベルがダウンしたとき、ペース配分しながら起用される大谷のチャンスは膨らむのではないか。

過去にはダルビッシュ有、前田健太、岩隈久志、山本がサイ・ヤング賞の最終候補(ファイナリスト)に残ったが、13年のダルビッシュ(当時レンジャーズ)、20年の前田(当時ツインズ)、ダルビッシュ(当時カブス)が2位に入ったのが最高。昨季の山本も3位にとどまり、日本人投手にとって難関であり続けている。

そんな金字塔を大谷が打ち立てるのか。これほどのハイレベルな争いを制するとなれば、その勲章の価値はより大きなものになるだろう。

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