ドラフト1位指名が確実視されている、青山学院大の鈴木。最速155キロの速球と複数の変化球が武器の右腕だ
今年も〝青学〟の天下が続くのか。大学駅伝の話ではない。プロ野球ドラフト会議の話である。
青山学院大学は野球部も名門で、昨秋まで東都大学リーグで6連覇。プロ球界にも西川史礁(ロッテ)や佐々木 泰(広島)ら有望な人材を送っており、昨年まで3年連続で、2人のドラフト1位指名選手を輩出した。
これはプロ野球史上初の快挙だが、さらに「4年連続」となることが確実視されている。今秋のドラフトの目玉になりそうなバッテリーを擁しているからだ。
エース右腕の鈴木泰成は、競合1位指名の可能性もある本格派右腕。身長187cm、体重94kgの鍛え上げられた体軀から最速155キロの快速球を投じる。しかも捕手のミットを突き上げるような、体感スピードの速い球質。また、フォーク、スプリットと複数の落ちる変化球を使い分けるなど完成度も高まっている。
近年の青山学院大からは常廣羽也斗(広島)、下村海翔(阪神)、中西聖輝(中日)とドラフト1位右腕が続いたが、投手としての資質の高さは鈴木が紛れもなくナンバーワン。
本人は「日本を代表する投手になりたい」と語るが、この目標は、ほぼ無名だった高校1年時から公言してきたこと。高校2年秋に右肘を手術するなど紆余曲折はあったものの、今やプロのスカウト垂涎の大物へと進化した。
今夏は大学日本代表に選出され、エースとして奮闘。第1回「ワールド カレッジ ベースボール チャンピオンシップ」では、初戦の韓国戦で6回14奪三振と衝撃の国際大会デビューを果たす。さらにアメリカとの決勝戦では、メジャーリーガー予備軍を相手に6回2失点と粘投。日本の優勝に大きく貢献した。
プロ即戦力の評価を得ている鈴木だが、恐ろしいのはまだ「発展途上」と思わせるところ。近い将来、野球ファンの誰もが名前を知る時代が来るかもしれない。
青山学院大で鈴木の女房役を務める渡部もドラフト候補。プレーだけではなく、コミュニケーション力でもチームを牽引
そんな鈴木の女房役を務めるのは、渡部 海である。これまでアマチュア球界のエリートコースを歩んできた。住吉ボーイズで侍ジャパンU-15代表に選出。智弁和歌山では2年夏に甲子園優勝を経験し、3年時には侍ジャパンU-18代表に選ばれた。青山学院大では入学直後から正捕手を奪取し、3年時から侍ジャパン大学代表で活躍している。
打撃も守備も高水準ながら、一番の武器はコミュニケーション力にある。智弁和歌山では捕手出身の中谷 仁監督から厳しい指導を受けたが、「どうせ怒られるのだから」と常に近くで行動した。
中谷監督がスマートフォンに興じる選手が多いことを嘆くと、渡部は「預かってください」と中谷監督にスマホを提出。並々ならぬ覚悟を感じた中谷監督は、渡部を2年生にして正捕手に抜擢した。
青山学院大でも、ひとクセもふたクセもある先輩投手を見事にリードしてきた。大学日本代表では、首脳陣と対等にコミュニケーションを取り、グラウンド上の指揮官として全幅の信頼を得ていた。
なお、渡部は阪神ファンの父の影響で、幼少期は阪神のユニフォームを着て幼稚園に登園したという逸話も。捕手の高齢化が進む阪神にとって、渡部は喉から手が出るほど欲しい人材かもしれない。
近畿大の宮原は、最速154キロの球威あるストレートが魅力の右腕。今夏には大学日本代表としてもマウンドに立った
今年は青学バッテリーだけでなく「大学生豊作年」といわれており、特に関西圏に有望選手がひしめく。関西学生リーグには、宮原 廉(近畿大学)、米沢友翔(関西大学)、有馬伽久(立命館大学)とドラフト上位候補がいるが、それぞれの特徴を紹介しよう。
宮原は「東の鈴木、西の宮原」と評したいほどの実力を備える速球派右腕。最速154キロの剛速球は、捕手のミットを粉砕するかのような爆発力がある。
自他共に認めるマイペースな性格で、大学日本代表ではチームメイトになった鈴木に惜しげもなく自身の技術論を伝えた。宮原には〝敵に塩を送る〟感覚はまるでなく、リリース感覚を伝授された鈴木は大きく飛躍を果たしている。
宮原が見据えているのは、目先の世界ではない。本人はキッパリと「自分が目指しているのはプロで活躍すること。課題だらけの今の時点で、同世代の選手と比べられても意味がないと思います」と語る。心身共にスケール感たっぷりの剛腕は、どんな評価を受けるだろうか。
関西学生リーグ注目の左腕は、関西大の米沢(写真)と立命館大の有馬。今春にブレイクした米沢はより評価を上げたい
米沢は大学3年までリーグ戦未勝利と無名だったが、今春に大ブレイクを果たした左腕だ。関西大の2年先輩の金丸夢斗(中日)から影響を受け、力感のないフォームからキレのあるストレートを投げ込む。今春はチームをリーグ優勝に導いただけでなく、大学選手権でも大車輪の活躍。チームは日本一に輝いた。
最高球速は149キロだが、その数字以上に迫力を感じさせる球筋だ。米沢と対戦した打者は、こう証言する。
「米沢君のストレートは球が放たれてから一瞬で来て、ホームベース板上での最後のひと伸びが違いました」
一躍株を上げた米沢だが、一方で不安もある。今春の公式戦だけで80イニングも投げたことによる疲労の蓄積だ。今夏はコンディション不良が伝えられただけに、ドラフトまでに万全な姿を見せられるかが課題になる。
有馬は昨秋時点で、左投手として圧倒的な評価を受けていた逸材だ。昨秋の明治神宮大会では、大会新記録となる10者連続奪三振をマーク。最速151キロのストレートだけでなく、スライダー、ツーシームと空振りを奪える勝負球を複数持っている。
ただし、昨秋にフル回転した影響か、今春以降はやや状態を落としている。秋にかけて本来の姿を取り戻せれば、ドラフトのトップランナーに返り咲く可能性はある。
10月22日のドラフト会議まで2ヵ月を切り、スカウト陣のまなざしもますます熱を帯びてくる。ハイレベルな戦いが繰り広げられる大学球界から目が離せない。