おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第59巻編】~悪魔将軍VS超人閻魔! 史上最大のファイナルマッチ開幕!!~

構成/石綿 寛(樹想社) 撮影/中里 楓 ©ゆでたまご/集英社

『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』59巻をおぎぬまXがレビュー!!『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』59巻をおぎぬまXがレビュー!!

完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)の襲来から始まった新シリーズ「完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)編」もついに佳境! 悪魔超人界を統べる悪魔将軍と、完璧(パーフェクト)超人の首領・超人閻魔による、かつてない規模の死闘が繰り広げられます! さっそく見ていきましょう!!

●キン肉マン第59巻

 

レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★ 星5つ中の5

【キン肉マンVSネメシス戦、決着!】

まずは前巻のクライマックス、正義超人代表のキン肉マンと完璧・無量大数軍のネメシスによる死闘の決着から。キン肉マンは長かった死闘を、キン肉族...そして正義超人の精神を体現する必殺技(フェイバリット)マッスル・スパークで終止符を打ちました。

このコラムで何度かお伝えしていることですが、僕は『キン肉マン』の試合を決するほどの大技が決まった後の余韻が大好きなんです。大歓声に包まれていた会場が静まり返るなか、キン肉マンが無言で技を解き、重力に任せてゆっくりと仰向けにダウンするネメシス。ほとんど台詞がないシーンなのに、つい次のページをめくるのをためらってしまう重苦しさ...、まさに読み手の時間を支配する漫画ならではの演出です! 

思えば、ネメシスが初登場した時、読者の中には少なからず「またキン肉族かよ」と先の展開を心配になった方もいたのではないでしょうか? 前章である王位争奪編で同族対決はこれでもかと描かれましたからね。とはいえ、今回は直系のキン肉王家同士の対決ということで、王位争奪戦とは違った趣(おもむき)もあり、蓋(ふた)を開ければ前章ラストバトルであるキン肉マン スーパー・フェニックス戦とも比肩するほどの名勝負となりました...

試合後に前大王のキン肉真弓は、ネメシスがマッスル・スパークで絶命しなかったのは、彼の執念もありますが、それ以上にマッスル・スパークの本質が「究極のみね打ち」にあるからこそ、と語り出します。マッスル・スパークとは相手を決して殺すことなく、その上で決まった瞬間確実に勝利を決定づけ、試合後には相互理解と和解の流れを残す妙技だというのです。

究極のみね打ち...なにげないかもしれませんが、これはもう『キン肉マン』だけではなく、すべてのバトル漫画の主人公が目指すべき最終奥義のアンサーだと、僕は感動してしまいました...! たとえ主人公が強大な敵を倒したとしても、敵を改心させることができなければ、新たな火種が生まれてしまいます。そんな未来永劫に続く復讐の連鎖を断ち切る正義の閃光、それがマッスル・スパークなのです。

名作バトル漫画には数々の最終奥義が存在しますが、キン肉マンがたどりついた境地が破壊力ではなく、慈悲の心であることが、長年ファンをやってるイチ読者として、なんだか無性に誇らしくなってしまいました。

闘いの後、静かに宙を見つめる一同。そこにはキン肉タツノリの姿が...。壮大な映画のクライマックスのような演出...!闘いの後、静かに宙を見つめる一同。そこにはキン肉タツノリの姿が...。壮大な映画のクライマックスのような演出...!

しかし、これで一件落着とはいきません。ネメシスは自身の敗北と、キン肉マンの実力を認めたものの、完璧超人の掟(おきて)に従って自害をする覚悟です。

ここで改めて、完璧超人という集団のスタンスをおさらいしましょう。彼ら完璧超人は、自らを完璧な能力を持った超人と自負していますが、他流試合での敗北=完璧ではないことの証明となるため、その場合は自ら命を絶たなくてはなりません。

ゆえに、現存する完璧超人は誰しも他流試合での勝率が100%、数字だけ見ればまさに最強の軍団といえます。ですが、これは成績の悪い社員を切りまくって、形だけの営業成績を謳っているブラック企業のようなものです。この組織の首領である超人閻魔は、完璧な超人を作り出すのに躍起になるあまり、これまで数え切れないほどの逸材を、鍛えては、自害させてきました。

なかには敗北から成長して、より高みに至れた超人も多くいたことでしょう。が、現状の掟がある限り、完璧超人に2度目のチャンスはありません。まさに、賽の河原のような地獄のループです。本来は素質ある超人を選別するはずのシステムが、いつの間にか組織を瓦解させる悪習に成り果ててしまったのです。

そんな古いしきたりに縛られたネメシスを自害させないため、キン肉マンは必死に説得します。そこに正義超人のテリーマン、キン肉真弓、委員長だけでなく、さらには完璧・無量大数軍のピークア・ブーまでもが加わり、ネメシスの自害に猛反対しました。ここのピークのセリフが、また熱いんですよ。「オレと一緒に生き恥を晒して汚名を背負って、それでも生き続ける道を選んでくれないか?」と、ピークはこれからの完璧超人軍を担うべきリーダーに懇願します。 

それでも、掟は絶対です。ネメシスは自力で自害する体力が残ってないことを悟ると、ストロング・ザ・武道(ブドー)に介錯を頼みます。武道がリングに降り立つと、今度はそれを阻止するべく、ネプチューンマンがリングに乱入しました...! 

ネプチューンマンは、キン肉マンとの闘いを経て、完璧超人の掟...つまり「敗北=自害」というシステムの欠陥に気付いていました。変革の時期を迎えた完璧超人界に必要なのは「掟」ではなく「対話」だと彼は豪語します。そしてネメシスを生かすためなら、武道と衝突することも辞さない覚悟です。一触即発の空気の中、リングサイドにさらなる乱入者が現れることで、ふたりの激突は回避されました...! 

ネプチューンマンたちの間に割って入ったのは、なんと...バッファローマンとサンシャインを従えた悪魔将軍でした。この瞬間を捉えた、第192話最終ページの迫力がもうヤバイです! バッファローマン、悪魔将軍、そしてネプチューンマンと武道。いずれ劣らぬ巨漢にして、各シリーズのラスボスたちが勢ぞろい! とてつもない豪華メンバーに興奮しすぎて鼻血が出そうですよ!

7人の悪魔超人編のボス・バッファローマン、黄金のマスク編のボス・悪魔将軍、夢の超人タッグ編のボス、ヘル・ミッショネルズ。各編のボスが1コマに集結!!7人の悪魔超人編のボス・バッファローマン、黄金のマスク編のボス・悪魔将軍、夢の超人タッグ編のボス、ヘル・ミッショネルズ。各編のボスが1コマに集結!!

【シリーズのトリを飾る決戦の幕開け!】

さて、悪魔将軍の乱入でネメシスの処遇は一旦保留に。これまで試合に敗れた完璧超人たちが自害する姿を何度も見てきたので、ネメシスが死なずに済んでとにかくホッとしました...! それにしても、この常人には理解できない「掟」に、なぜ完璧超人のような優秀な超人たちがいつまでも縛られているのでしょうか。僕にはこれこそが、新シリーズの重大なテーマな気がしてなりません。

思えば、新シリーズが始まってからたびたび主張されてきたのは、正義・悪魔・完璧の三属性によるイデオロギーの違いです。そのなかでも、試合に敗北した者は自害しなくてはならないという完璧超人の掟は、テリーマンら正義超人がもっとも理解できない行為でした。ただ、すべての完璧超人が掟を盲信するわけではなく、キン肉マンと試合をしたピークア・ブーやネプチューンマンは、敗北が己をより強くさせるための糧(かて)となることを知り、古くから続くシステムに疑問を抱くようになります。

つまり...古い価値観からアップデートできない完璧超人界を、旧世代の超人はどう受け入れていくのか、新世代の完璧超人がどう変えていくのか、他属性の超人がどう説得するのか。そういった「わかり合うための闘い」が新シリーズのテーマなのだと僕は思います。 

ストロング・ザ・武道(ブドー)はその名の通り、武を重んじる生粋の武人(もののふ)...かつて日本に存在した侍のような存在です。侍には、戦に敗れて生き恥を晒すくらいならば、汚名を晴らすためならば己の名誉を守ために自決(切腹)という手段がありました。それは武士たちの間で高潔な行為とされていましたが、宗教上自殺を禁忌とする西洋諸国には到底理解することができない野蛮な行為と見られていたと云われています。もちろん、現代人から見ても自決はとても真似することできるものではありません。 

そんな独自の精神哲学をもつ侍が、現代の日本人を見たらどう思うのでしょうか。ひょっとしたら、彼らには平和な時代に生きた僕たちが情けないほどに軟弱に見えるかもしれません。いくら僕たちが自決を否定したところで、彼らは聞く耳など持つわけがないのです。むしろ、現代人の性根を叩き直したいと思うのが自然でしょう。それこそ、新シリーズの開幕と同時に襲来した完璧超人軍のように...。 

ですが、いくら嘆かれようが、いくら罵(ののし)られようが、古来の考えが正しいとは限りません。あれから時を重ね、様々な文化を吸収した現代人の中には、侍を超える可能性を秘めた者もいるかもしれません。少なくとも、完璧・無量大数軍の筆頭であるネメシスは、「下等超人」と見下していた現代の超人とわかり合うことができました。残すは、悪しき風習と化した掟を作り、今もそれを配下に強要するストロング・ザ・武道こと、超人閻魔です。果たして、数億年前から止まってしまった価値観を改めさせることなど可能なのでしょうか。新シリーズに終止符を打つ闘いが、いよいよ第193話から始まります...!

自分たちの体を張って、ストロング・ザ・武道の盾にならんとした完璧超人たち。もちろん瀕死のネメシスも足元をしっかりガード!自分たちの体を張って、ストロング・ザ・武道の盾にならんとした完璧超人たち。もちろん瀕死のネメシスも足元をしっかりガード!

ストロング・ザ・武道は、内輪揉めは後回しにするとして、ひとまずは目の前のゴールドマン、つまり悪魔将軍を先に処分することに決めます。武道は双方に因縁のある場所を決戦の舞台とするため、竹刀に謎のパワーを込めて甲子園球場に大穴を開けると、その穴からどこかへ移動してしまいました。

彼らがたどり着いた先は、なんとオーストラリアのエアーズ・ロック。ここはかつては巨大な山でしたが、ふたりが激しいスパーリングを重ねた結果、平らな地形に変わってしまったという歴史がありました。いやはや...自然遺産の秘密がまたひとつ明らかになりましたね。今回もどこか納得してしまうような妙な説得力がある、あっぱれな起源説でした(笑)。 

武道は、さっそくエアーズ・ロック山頂にリングを作ると、間を開けずに観客や超人たちが集まり始めます。最終決戦のお膳立てが完了し、刻一刻とゴングの鳴る時が迫ってきました。新シリーズのトリを飾る今回のカードですが、バトル漫画ではある意味、主人公の試合よりも盛り上がる「最強戦力同士」の闘いとなります。この最強決定戦で僕が興奮したのは、まず驚くほど試合開始までが早かったことです!

前試合のキン肉マンvsネメシスでは、双方の心境をたっぷりと描いた後にゴングとなりましたが、今回は悪魔超人と完璧超人の大将同士がぶつかるというのに、あっという間に試合が始まってしまうんです。なんなら試合前の双方の心境を一話ずつ挟んでもらいたかったくらいなので、「ま、まだ心の準備ができてないから...!」と叫んでしまいました。 

さらに驚くべきは、最強戦力同士の闘いにありがちな忖度(そんたく)が一切ないことです。たとえば、連戦で疲労があるとか、怪我をしているとか、加齢によって全盛期の力はもうないとか...お互いの最強神話を崩さないための配慮がまるでない。この悪魔将軍vs超人閻魔はノーハンディキャップのガチンコ対決ですよね! 試合の勝敗で両者の間には明確な格付けがされてしまうため、読者であり観戦者である僕も凄まじい緊張感に包まれてしまいました。 

太陽が両者の真上に昇った瞬間、歴史的一戦のゴングが鳴り響きました。超重量級の両者だけあって、序盤から激しい展開が続きます。ロックアップを華麗に避けた悪魔将軍が猛攻を加え、ツームストン・ドライバーでストロング・ザ・武道をリングに突き刺します。ですが、この程度はあいさつにすらなっていないと、ほぼ無傷のストロング・ザ・武道。お返しとばかりに、悪魔将軍をとらえ、重いラリアットで痛撃を浴びせます。まだゴングが鳴って1分も経っていないはずなのですが、息もつかせぬ大技のオンパレードです。

キン肉マンたちが分析した、恐るべき超人閻魔の実力! 一方の悪魔将軍は悪魔六騎士の優れた部分を超えた能力...やや悪魔将軍の分が悪いか?キン肉マンたちが分析した、恐るべき超人閻魔の実力! 一方の悪魔将軍は悪魔六騎士の優れた部分を超えた能力...やや悪魔将軍の分が悪いか?

超人閻魔の反撃で、コーナーに倒される悪魔将軍。その姿に冷や汗をかくバッファローマンたちでしたが、悪魔将軍は「私の背中はお前たちにとって それほど小さいか」と、彼らに背中ごしに語りかけ、必殺の連携技・地獄の九所封じに入りました。 

まずは、九所封じその一「大雪山落とし」を決め、すかさずその二と三のスピン・ダブルアームソルトに繋げる悪魔将軍でしたが、ストロング・ザ・武道もさるもの、難攻不落の九所封じをいともたやすく止めてしまいます。さらに掟破りの逆九所封じとでも言いましょうか...その四と五のダブルニークラッシャーを武道が放ち、悪魔将軍の両脚を破壊。その八にあたる零(ゼロ)の悲劇で悪魔将軍の超人強度を吸収し、さらには超人圧搾機でとどめを狙います。 

追いつめられたかのように見えた悪魔将軍でしたが、力づくで技から逃れるとストロング・ザ・武道を上空に放り上げ、自身最大の必殺技・地獄の断頭台の体勢に移行しました。ですが、これまで百発百中だった地獄の断頭台ですら「全然足りーん」の一言で返されてしまい、冥府頭壊手(めいふとうかいしゅ)で反撃されてしまいます。

いやぁ〜...強すぎる! いくらなんでも強すぎる...! まさか、あの悪魔将軍が一方的にボコボコにされるなんて。断頭台も軽々と攻略されてしまったし、もう絶望です。ですが、悪魔将軍はまだ奥の手を残していました。そう、アビスマン戦で失っていたと思われていた硬度調節機能はすでに復活しており、自らの全身をダイヤモンドの硬度に変えて完全防御に成功します。さらに、両腕から剣を出した場面で次回へと続きます。

オールドファンなら、このポーズから期待するのは当然「あの技」へのセットアップ...!オールドファンなら、このポーズから期待するのは当然「あの技」へのセットアップ...!

白熱する最強格同士の闘い! 超人閻魔に押され気味だった悪魔将軍の反撃が始まり、いよいよ闘いは本格化していきます。第60巻では死闘の決着、そして20巻以上に渡って続いてきた完璧超人始祖編がクライマックスを迎えます! 楽しみにお待ちください!!

●こんな見どころにも注目!

悪魔将軍と武道の試合前、ミートくんがエアーズ・ロックの呼び名についてのうんちくを語ってくれます。どうやら、エアーズ・ロックは現地人には「ウルル」と呼ばれているものの、その由来が今もわかっていないらしいのです。そこでミートくんは、もしかして以前は「グロロ」と呼ばれていたのではないか、と大胆な仮説を披露します。正義超人界イチの頭脳の持ち主であるミートくんの仮説を否定するつもりは決してないのですが...さ、さすがに強引すぎるのではないでしょうか(笑)。キン肉マンの声掛けに、なぜか沈黙を貫くウォーズマンもシュールさに拍車をかけてますね(笑)。

おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。『笑うネメシス貴方だけの復讐』(原作担当)全4巻が発売中。そして、『キン肉マン』コラボミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』、『キン肉マン 禁断の超人タッグ殺人事件』が好評発売中

JC『キン肉マン』最新第93巻好評発売中!

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ナレーション:大塚明夫、アシュラマン役:神谷浩史
超スーパーキャスト!!
YouTube「週プレChannel」にて、キャラクターPV第4弾「アシュラマン」編

『キン肉マン』キャラクターPV第3弾「テリーマン」編      テリーマンスペシャルボイス:小野大輔 ナレーション:燃え殻 音楽:APAZZI 

●TVアニメ『キン肉マン』 完璧超人始祖編Season 3 制作決定

●漫画サイト史上最強機能!! 超人・技検索追加!!

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