日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。ベトナム戦争に従軍した兵士の帰還後の葛藤を描いた実話作品。
* * *
『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

評点:★3.5点(5点満点)©Mr.Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA©Mr.Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA

「慣れてしまうこと」は人間から何を奪うのか

ベトナム戦争が終わって既に51年が経つ。第二次世界大戦からは81年。

工業技術による大量虐殺が初めて現実のものとなった第一次大戦からは108年もの時間が過ぎている。

一方、現在もウクライナやガザ、スーダン、ミャンマーなど世界各地で惨憺たる戦争や内戦が進行中であり、それがニュースとして消費されている。

「消費されている」と書いたのは文字通りの意味で、ニュースだけでなく、映画、コミック、文学、ゲームなど、ありとあらゆる表現手段を通じて我々は戦争を「消費」することに「慣れきって」しまっている。

自身が若くして従軍したベトナム戦争での体験談を語り続けた元・米海兵隊員アレン・ネルソンさんの半生を追う本作の焦点はいくつかあるが、とくに目を惹くのはごく普通の若者がいかに容易に地獄の戦場に「適応」してしまうか、というところである。

だがその「適応力」=「慣れる力」は決して「タフさ」ではあり得ない。

であればこそネルソンさんら多くの兵士が帰国後生涯を通じて重いPTSDに苦しめられることになったわけだ。

して我々もまた「消費」から生じる「慣れ」の感覚から脱するために、酸鼻極める戦場の体験談に耳を傾け続ける必要がある。

STORY:貧困や差別から抜け出すため18歳で入隊したアフリカ系アメリカ人のネルソン。ベトナムという苛烈な戦地で学んだのは、いかに多くの人を殺せるか。その対価は、ごくわずかな賃金とPTSD(戦争後遺症)だけだった

監督・脚本:塚本晋也
出演:ロドニー・ヒックスほか
上映時間:116分

全国公開中

★『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』は毎週金曜日更新!★

編集部のオススメ

関連ニュース

TOP