
堂本光一
Koichi Domoto
堂本光一の記事一覧
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】
ヨーロッパラウンドを締めくくるイタリアGP(決勝9月6日)とスペインGP(決勝9月13日)の2連戦は、ポイントリーダーのキミ・アントネッリがともに制し、ライバルとのポイント差を広げることに成功した。
今週末からF1は第15戦アゼルバイジャンGP(決勝9月26日)を皮切りに、中東情勢悪化によりマレーシアのセパン・サーキットで開催される第16戦バーレーンGP(決勝10月4日)、第17戦シンガポールGP(決勝10月11日)と、アジアを舞台にしたトリプルヘッダーが行なわれる。
この3連戦はチャンピオン争いの大きな山場になりそうだが、果たしてアントンネッリの勢いを止めるドライバーが出てくるのか?
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メルセデスのキミ・アントネッリ選手が連戦となった第13戦のイタリアGPと第14戦のスペインGPでともに勝利を飾りました。この結果、ドライバーズランキング2位のジョージ・ラッセル選手に81ポイントの大差をつけ、初めてのタイトル獲得に大きく近づきました。
マドリードの市街地コース、マドリンクで初開催となったスペインGPは、予選でマクラーレンのランド・ノリス選手がポールポジションを獲得。決勝でもスタートをうまく決めて2位以下を引き離す展開になりました。
しかし15周目にアストンマーティンのランス・ストロール選手がクラッシュし、バーチャル・セーフティーカー(VSC)がコースインします。そのタイミングがノリス選手にとっては不利に働き、5位までポジションダウン。逆にアントネッリ選手は幸運に恵まれ、絶好のタイミングでピットインし、トップに立ちます。
そのまま逃げ切ったアントネッリ選手は今季8勝目を挙げ、ノリス選手は3位まで順位を戻すのが精一杯でした。スペインでのアントネッリ選手は確かにラッキーでしたが、それだけが勝因ではないと思います。
ちゃんと運を引き寄せるところを走っていて、トップに立った後はしっかりとポジションを守り切って勝利をつかみ取った。そこは素直にすごいと思います。
アントネッリ選手と対照的なレースになったのは角田裕毅選手です。スタート直後の1コーナーでカルロス・サインツ選手に追突され、いきなりマシンにダメージを負ってしまった。それでも角田選手は後続を抑えながら堅実に周回を重ねていましたが、前のマシンを追えなくなってしまった。
結果的に角田選手にとって復帰3戦目となるスペインGPは14位に終わります。彼にとっては相当フラストレーションの溜まるレースだったと思いますが、「運が悪かったね」という言葉では片付けられないところもあります。
復帰3戦目となるスペインGPは不運なアクシデントに巻き込まれ、14位に終わった角田。「スタート直後に後ろからぶつけられ、レースが終わってしまった。楽しくないレースでした」とコメントしている
例えば、マドリングの予選は15番手に終わりましたが、このあたりのポジションはスタート直後に一番混雑しますし、順位争いが激しいところです。もうちょっと上、せめて12番手ぐらいからスタートすることができれば、サインツ選手に接触されることなかった可能性があります。
結局、運や流れが悪かったとしても、その中でレースをまとめ上げることが大事なんですよね。それは今年のアントネッリ選手が証明していると思います。イタリアGPでもパワーユニット(PU)の交換によるペナルティで19番手からのスタートになりましたが、驚異的な追い上げで初の母国優勝を達成しました。
追い抜きが難しいと言われる現代のF1において、これほどの後方からスタートでして大逆転で優勝するなんて、本当に驚きました。アントネッリ選手はモンツァ・サーキットで新たな伝説を作り上げたと思います。
アントネッリ選手の偉業は讃えるべきですが、素直に喜べないところもあります。イタリアGPが開催されるモンツァ・サーキットは"スピードの殿堂"と言われ、これまでも超高速バトルが繰り広げられてきました。ところが現在のレギュレーションではそうではなくなっていて、モンツァを心の奥底で「面白くないな」と感じている自分がいます。
速く走るためにコーナーの手前でブレーキングを遅らせ、クイックにコーナーに侵入して、いかに早くアクセルを開けるかというのが、レーサーとしての本能のはず。でも今のレギュレーションでは、そういうドライビングをしてはいけない。
特にモンツァのようなエンジンの全開率が高く、平均速度が高いコースであればあるほど、電気エネルギーが足りなくなってしまうので、本能的なドライビングをしちゃダメなんですよね。その矛盾がどうしても付きまとってしまう。今年のF1マシンはモンツァのような高速サーキットは不向きなんです。
そういう意味では、イタリアGPが代役出走2戦目だった角田選手にとっては、昨年までとはまったく異なるドライビングをしなければならなかったので、モンツァでのレースは大変だったと思います。それでも10位に入賞してチームにポイントをもたらしました。
しかもレースは2周目にクラッシュが発生して赤旗となり、そのタイミングでハードからミディアムにタイヤを交換。その後、見事なタイヤマネージメントを披露して、ミディアムで53周のレースを最後まで走り切った。さすがですよね。
でもレース中の角田選手の無線を聞いていると、現代のドライバーは本当に大変だと感じました。ずっとエンジニアと会話しながら、コクピット内のモニターでデータを確認し、ステアリングのボタンでマシンを調整して、本能に逆らいながらドライビングし続けなければなりません。
ご本人は「もっとステアリングのモニターを見る必要があります」とコメントしていましたが、モンツァで角田選手は今のマシンを速く走らせるためにはどうすればいいのかということを学んだと思います。
レッドブルのアイザック・ハジャ選手がアゼルバイジャンGPから復帰することが決まり、角田選手は再びリザーブドライバーとなることが発表されましたが、この3戦の経験を生かすチャンスがあってほしいなと思いますね。やっぱり角田選手が出場するレースは見ていて楽しいですから。
スペインGPでヨーロッパラウンドは終わり、アゼルバイジャンGP、マレーシアで開催されるバーレーンGP、シンガポールGPと、3週連続でレースが開催されます。トリプルヘッダーの緒戦となるアゼルバイジャンGPの舞台となるバクー市街地コースは「世界最速のストリート・サーキット」と呼ばれ、2キロを越える直線があります。
イタリアのモンツァと同様に電気エネルギーが枯渇する"超電欠"レースになる可能性が高いので、エネルギーマネージメントで一歩先を行くメルセデスのPUを搭載するチームが強いと予想しています。ワークスのメルセデスやマクラーレンはもちろんですが、イタリアGPの予選でポールポジションを獲得したピエール・ガスリー選手がドライブするアルピーヌもバクーでは上位に入ってくるでしょうね。
アルピーヌはストレート区間でのパフォーマンスを追求した"直線番長"のマシンですし、ここ数戦はエースのガスリー選手だけでなく、フランコ・コラピント選手もすごく乗れています。注目の存在ですね。
チャンピオン争いのことを考えると、フェラーリに頑張ってほしいですが、イタリアGPの結果が物語っているように、アントネッリ選手は今、勢いに乗っています。彼を破るのはなかなか難しい。
とはいえ、このアゼルバイジャンから始まる3戦がフェラーリにとってチャンピオン争いに挑むラストチャンスになると思います。何とかメルセデス勢に食らいついていって、3連戦のうちのふたつは勝ってほしい。
鍵になるのは2台体制でしっかりと戦うことだと思いますが、フェラーリはルイス・ハミルトン選手とシャルル・ルクレール選手のふたりをうまくマネージメントできていないように感じます。そんなチーム状況を象徴していたのがイタリアGPですよね。スタート直後に、フェラーリの2台が同士討ちを起こしてしまった。
ハミルトン選手はレース後、チームメイト同士がどこまで競り合っていいのかという明確なルール(交戦規定)がないのはおかしいと、チームに不満の声を上げていました。7回のワールドチャンピオンが言っていることはまったく正しいですよね。
チームメイト同士で争うのではなく、チームが一致団結してメルセデスに挑む、という姿勢が必要だと思いますが、フェラーリがイタリアGPの後に交戦規定を設けたという話は聞かないですし、このままズルズルと行ってしまうのかな......。それがフェラーリらしいとも言えますが、なんとかしてほしいですね。
国際自動車連盟(FIA)が全24戦で競われる2027年のF1カレンダーを発表した。日本GPは鈴鹿サーキットを舞台に第4戦として4月9日~11日に開催される。なお今年は6戦だったスプリントフォーマットのイベントが来年は10戦に増え、日本GPでも初のスプリントが実施されることになった。
「鈴鹿でのスプリントは日本のファンにとっては楽しみですが、モナコでもスプリントをやるんですよね。追い抜きが事実上できないモンテカルロ市街地コースを舞台にしたスプリントは意味があるのかなあ......というのが率直な感想ですね。
来年は24戦中10戦でスプリントをやることになりますが、スプリントのある週末は金曜日のFP1(フリー走行1回目)やスプリント予選からチェックしないといけないので、見ているほうもかなり忙しいのですが、現場のメカニックやエンジニアなどはどれだけ忙しいのか......。想像を絶しますね。
あと今年初開催のスペインのマドリンク、アゼルバイジャン、シンガポール、サウジアラビアなど公道サーキットのイベントが増えてきて、モナコの存在価値がなくなってしまうような気がします」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア