【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】フェラーリは地元モンツァを真っ赤に染めてほしい!

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

8ヵ月振りに復帰した角田の快走に日本だけでなく世界中のファンが大いに沸き立った。光一も「角田選手が出ると出ないでは、レースを見る張り合いが全然違う」と語る8ヵ月振りに復帰した角田の快走に日本だけでなく世界中のファンが大いに沸き立った。光一も「角田選手が出ると出ないでは、レースを見る張り合いが全然違う」と語る

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE55

第12戦オランダGP(決勝8月23日)はマクラーレンのランド・ノリスが前戦のハンガリーに続いて今季2勝目を飾り、レーシングブルズから8ヵ月ぶりに出場を果たした角田裕毅(つのだ・ゆうき)が印象的な走りを披露した。入賞にはあと一歩届かなかったが、11位で完走。自らの実力を大いにアピールした。

またホンダの改良型パワーユニット(PU)を搭載したアストンマーティンも力強い走りを見せた。現役最年長の45歳、フェルナンド・アロンソが今季最高の9位に入賞し、後半戦の好スタートを切った。

今週末のイタリアGP(決勝9月6日)、バレンシアで初開催となるスペインGP(決勝9月13日)では誰が勝利を手にするのか? 注目のアストンマーティン・ホンダと、オランダGPに引き続き参戦が決まった角田はどんな走りを見せるのか?

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【角田選手の活躍も期待】

角田裕毅選手がスポット参戦したオランダGPは本当に楽しかった! 久しぶりにライブタイミングで角田選手のラップタイムを追いかけながらレースを見ていましたが、「ああ、昨年まではこうやって全戦ワクワクしていたな」と当時の気持ちを思い出しましたね。そういう楽しみが今年はひとつなくなっていたんだと、オランダGPを見ながら改めて感じました。

角田選手のレース参戦は約8ヵ月振りで、角田選手がレーシングブルズのシミュレーターに乗ったのはオランダGPの直前だったといいます。ぶっつけ本番でレースに臨まざるを得なかったからでしょう。初日のセッションでは少し苦労しているように見えました。

レーシングブルズから8ヵ月ぶりに出場を果たした角田裕毅。決勝では入賞にあと一歩届かなかったものの、世界中のファンの印象に残る走りを見せた。復帰2戦目となるイタリアGPではポイント獲得を目指すレーシングブルズから8ヵ月ぶりに出場を果たした角田裕毅。決勝では入賞にあと一歩届かなかったものの、世界中のファンの印象に残る走りを見せた。復帰2戦目となるイタリアGPではポイント獲得を目指す

でも周回を重ねるごとにうまく適応していき、タイムを改善していきました。最終的に予選のQ2に進出し、成長著しいチームメイトのアービッド・リンドブラッド選手に対してわずか0.1秒差の12番手のタイムを叩き出します。

レースでも入賞目前の11位でフィニッシュしたというのは素晴らしかったですし、元チームメイトで現在アルピーヌに所属するピエール・ガスリー選手を追い抜いたときの動きも見事でした。あれはオランダGPのベスト・オーバーテイクだったと思います。

角田選手にとって痛かったのは、レース終盤にグラベルに飛び出してしまったこと。それで大きくタイムロスし、一度抜いたガスリー選手に追いつかれ、最終的にはポイント圏外に落ちてしまった。あのコースアウトがなかったら、入賞するチャンスは十分にあったと思います。

【レースは筋書きのないドラマ】

それでもオランダでの角田選手はブランクをまったく感じさせず、新しいマシンの性能を十分に引き出していました。そこはさすがだなと感じました。

同時にレースは筋書きのないドラマだと言われますが、本当にそうだなと思いましたね。角田選手が復帰戦で入賞を争ったのがガスリー選手(10位入賞)とアストンマーティン・ホンダのフェルナンド・アロンソ選手(9位入賞)。角田選手にとってガスリー選手は親友ですし、アロンソ選手がドライブするのはホンダのPUです。

どういう因果か、角田選手と関係の深いドライバー同士でポイントを争うという展開になった。夏休み前までは、アルピーヌとアストンマーティン・ホンダはどちらかといえば苦戦していたのですが、両チームともにオランダにアップデートを持ち込んできました。

アルピーヌの車体のアップデートは成功し、ガスリー選手のパフォーマンスはこれまでよりも明らかに上向きになっていた。アロンソ選手もホンダの新しいPUを搭載したマシンで元気な走りを見せていました。

もちろん冗談ですが、「よりによって角田選手が復帰したレースで両チームそんなに頑張らなくてもいいのに......。次のイタリアからでもよかったのになあ」と(笑)。

でも、これだけワクワクさせてくれた角田選手のレースがたった1戦で終わるのはあまりに惜しいと思っていたのですが、イタリアGPも引き続きレーシングブルズから参戦することが決まりました。

すごくうれしいのですが、イタリアGPの舞台となるモンツァはオランダGPのザントフォールドとまったくタイプが異なります。全開率が高く、電気エネルギーが圧倒的に足りないサーキットなので、1周を速く走るために全開で攻めてはいけない、という今年のレギュレーションの課題が顕著に出ます。

そういう環境でレースをするのは角田選手にとっては初の経験になりますが、どこまで適応できるか? 簡単ではないと思いますが、角田選手ならきっとやってくれるだろうと、むしろワクワクしています。

ホンダがアップデートをしたPUを投入したオランダGPでは、アロンソ選手が実質ワン・ストップ作戦を決めて、アストンマーティン・ホンダとしては今季最高位の9位に入賞しました。タイヤに優しい、アストンマーティンの車体の特性をアロンソ選手が引き出した結果だと思います。

ホンダの新しいPUは確実にパワーアップしていると思いますが、ドライバーはドライバビリティに問題があると訴えていましたよね。その辺の調整がまだ上手くいってないのかもしれませんが、一歩一歩、着実に上がっていってほしいです。

【フェラーリに足りないものとは?】

オランダGPはマクラーレンのランド・ノリス選手が優勝し、夏休み前のハンガリーGPに続いて2連勝を飾りました。2位はポイントリーダーのキミ・アントネッリ選手、3位はジョージ・ラッセル選手が入り、メルセデスがダブル表彰台を獲得しました。

マクラーレンとメルセデスに関しては、走り始めはそれほど調子がいいようには見えなかったのですが、スプリント予選、スプリントレースとセッションを重ねていくほどにマシンのセッティングが決まってくる。それはレースウィークに関してだけでなく、シーズン全体でも言えるのですが、両チームは本当に修正能力がすごい。

例えば、ノリス選手は土曜日のスプリントレースでタイヤのデグラデーション(タイヤの劣化)に苦しんでいましたが、そこを日曜日の決勝までにしっかりと修正して優勝をつかんでいます。逆にフェラーリは、最初は結構良さそうなのですが、そこから先を見てマシンを修正していく力が足りないように感じます。

それはレース戦略でも同じことが言えます。オランダGPではルイス・ハミルトン選手がシャルル・ルクレール選手に前を抑えられる形になり、タイムを大きく失ってしまった。ハミルトン選手は無線で順位を入れ替えることを要求しましたが、チームは何の対応もできなかった。

ハミルトン選手は「時間を無駄にするには素晴らしいやり方だね。よくやったよ!」と無線で皮肉を言っていましたが、彼は正しいと思います。それはメルセデス陣営の戦いぶりが証明していると思います。ザントフォールドでメルセデスはフェラーリと同じような状況になりましたが、両チームの対処の仕方は対照的でした。

レース終盤、ラッセル選手が前を走っていましたが、後ろから新しいタイヤを履いたアントネッリ選手が迫ってくると、メルセデス陣営はラッセル選手に対してポジションを譲るよう指示を出します。当初、ラッセル選手は不満を言っていましたが、アントネッリ選手が背後まで迫ってくると、サッとポジションを譲ります。

メルセデスはチームメイト同士で無駄なバトルをせずタイムロスをしなかった。そのため、ラッセル選手は表彰台を獲得できました。フェラーリも、しっかりとドライバーをマネジメントできていれば、ハミルトン選手かルクレール選手のどちらかが表彰台に上がれた可能性があります。そのチャンスをチーム自ら潰してしまっていると感じました。

その点はメルセデスを見習う必要があるでしょう。何を優先すべきかはっきりとさせず、漠然と戦っていると、コンストラクターズ選手権ではメルセデスどころか、マクラーレンにも先行されてしまうかもしれません。やはり2台が協力して戦っていかないと、これからのランキング争いは厳しいと思います。

【イタリアGPは予選から面白い】

今週末のイタリアGPはチームメイトとの協調は大事になってくると思います。特に予選ではトー(スリップストリーム)を上手く使ったドライバーが前に行くと思います。チーム間でどうやって協力しながら戦っていくのか、見物です。

エネルギーのマネジメントはメルセデスがほかのメーカーよりも一枚上という印象ですが、モンツァではエンジン性能も重要になってきます。そこはレッドブルが強いので、そこもレースの見どころです。

ただし、ポイントリーダーのアントネッリ選手は母国イタリアでPUを全面的に交換することが決まっています。彼はレギュレーションで定められた3基のPUをすでに使用し、4基目を投入することになるので、グリッド降格ペナルティを受けることになります。

アントネッリ選手は後方からのスタートなので、チャンピオンシップを盛り上げるためにもフェラーリには頑張ってもらって、地元のモンツァ・サーキットを真っ赤に染めてほしい。あとは角田選手が活躍してくれたら最高ですね! 

☆取材こぼれ話☆

引退の噂も出ていたマックス・フェルスタッペンがレッドブルと契約を延長した。契約期間は2030年までと発表されている。

「フェルスタッペン選手の決断はちょっと意外でしたが、その反面で彼らしいという気もしますね。フェラーリのような人気や伝統のあるチームで走るよりも、居心地がよいところでレースに集中したいということだと思います。

けれど、フェルスタッペン選手がほかのチームで走っているところも見たかった。もし彼が移籍を決断すれば、来年のドライバーの市場は大きくシャッフルされたと思うのですが......。

フェルスタッペン選手がレッドブルに残留し、ウイリアムズもアレックス・アルボン選手とカルロス・サインツ選手のコンビが継続することが決まりました。これでもう大きな動きはなさそうですが、なんとか角田選手がシートを獲得してほしい!」

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア

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  • 堂本光一

    堂本光一

    Koichi Domoto

    1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
    公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

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