大谷、佐々木に次ぐクラスの横浜・織田翔希は「メジャー直行」が正解なのか。甲子園史上最速156キロで今秋ドラフトの超目玉! 

写真/共同通信社

準々決勝・花巻東戦でも156キロを連発した織田準々決勝・花巻東戦でも156キロを連発した織田
日米のスカウトが熱視線を送る横浜高校の18歳右腕、織田翔希。今夏、甲子園で躍動した逸材の資質、その先に待つ進路の最適解とは?

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【大谷、佐々木に次ぐポテンシャル】

今夏、甲子園史上最速156キロをマークし、聖地で躍動した織田翔希(横浜高校)。神奈川大会では自己最速157キロを記録するなど、今年のドラフトで大注目の存在だ。

現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏は、その資質をこう分析する。

「最速157キロのオーバースローから投げ下ろすフォーシームは質が高く、この夏は平均球速も上がって高校生の中では頭ひとつ抜けています。フォーシームもただ速いだけではなく、球質がプロ級。

球質、球種構成、フォームはいかにもアメリカンで、故障して太る前のドジャース時代のウォーカー・ビューラー(現パドレス)に似ており、テイクバックの力感は佐々木朗希(ドジャース)と共通するものがあります」

球速以上にお股ニキ氏が評価するのは、球種構成と先発もリリーフもこなせる柔軟性の2点だ。

「カットボール、スラッター、カーブのグラデーションがきれいで、なおかつスプリットも投げられます。朝日放送の中継では『カットボール』とされていましたが、134キロ前後の縦に落ちる球はまさに私の提唱するスラッターであり、一番空振りを取れるボールです。

先発では投球割合の5割以上が変化球という『球の速い変化球投手』ですが、リリーフではフォーシームとスラッターにほぼ絞り、リミッターを外して全力投球できる。起用法に応じてピッチングを組み替えられる高校生はそういません。

2回戦・日南学園戦では6回途中からリリーフ登板し、無死満塁のピンチを難なく抑えました。全力で投げれば三振が取れる、という感覚があったはずです。『一球で球場の雰囲気を変えようと思ってマウンドに上がった』と試合後に振り返っていましたが、今の若者らしい賢さがありますよね」

横浜高校の大先輩・松坂大輔氏(元レッドソックスほか)と比較されることもあるが、高校3年時点で比べると、織田はどのような位置づけなのか?

「松坂さんは18歳の時点で球速、球種、投球術、守備、牽制、スタミナなどほぼすべての能力が高次元だったからこそ、高卒1年目で16勝という別格の結果を残せました。高卒時の完成度なら松坂さんと藤浪晋太郎(DeNA)がトップクラスで、織田は同じ横浜高校出身の涌井秀章(中日)よりも技術は劣るがパワーは上、という評価です。

高校時代に160キロを出した大谷翔平(ドジャース)、163キロを出した佐々木が真の怪物と言えますが、織田はすべての能力が90点以上で総合力が高く、ポテンシャルは彼らふたりに次ぐクラスと言っていいでしょう」

つまり、織田は「高校時点で完成された松坂型」と「伸びしろやポテンシャルを秘めた大谷・佐々木型」を併せ持った存在と言えそうだ。

「ランクでいえば、高卒時の髙橋宏斗(中日)に近い。今のプロ野球で高卒1年目からいきなり2桁勝つのは難しいですが、原型はできているのでフォームをいじる必要はありません。

体をつくって平均球速を155キロに近づけ、各変化球の精度を高めていけば、ジャスティン・バーランダー(タイガース)やゲリット・コール(ヤンキース)のような『現代メジャーにおけるオーバースロー投手の完成型』が見えてきます。

さらに、織田の魅力はその球威。同じ球速、同じ変化量でも、打たれない投手の球は手元でビシッと来ますが、打たれる投手はどこかぬるい。データに出ない差ですが、織田の球は明らかに前者です」

【25歳前後でポスティングが理想】

今や高校生選手がNPBを経ずに海を渡ることは珍しくない。NPBのドラフト1位の契約金は「1億円+出来高5000万円」、年俸は「1600万円」が上限。対するメジャー球団は、円安も追い風にそれを大きく上回り、合わせて5億円近い金額を提示できる。

「金額面の差は歴然。5億円近い金額と『ここまで面倒を見る』という手厚いパッケージを提示されたら、『行くな』と言うほうが難しい。正直、私の考えも揺れています」

それでも、お股ニキ氏は「NPB経由が基本線」と語る。

「マイナーは世界中から才能を集め、伸びてきた者を使う競争・選抜の場です。日本のように寮生活や社会人としてのマナー、野球のイロハまで教える『0から1への育成』はあまりない。18歳で言葉も通じない環境に放り込まれれば、マイナーでくすぶって終わる可能性もあります。

織田は変化球や体づくりを同時に推し進める段階なので、日本の細やかな投手指導を先に受けたほうがいいでしょう」

時間軸で見れば、答えはより明確になる。

ドラフト1位で日本ハムへ入団し、23歳で海を渡った大谷(右)ドラフト1位で日本ハムへ入団し、23歳で海を渡った大谷(右)

「大谷やダルビッシュ有(パドレス)、山本由伸(ドジャース)を見ても、高卒でNPBに入り、1軍で圧倒的な実績を残してから25歳前後で海を渡るのが最も成功確率が高く、生涯収入も跳ね上がる。18歳時点での契約金ではなく、プロ生活トータルでの総収入と先発としての完成度を見越しての判断となります。

改めて振り返ると、23歳でポスティングされた大谷と佐々木は別格の存在ですが、織田も23~25歳でのメジャー移籍を現実的な目標に据えることになるでしょう」

となれば、鍵を握るのはNPBのどの球団に入るかだ。

「先発の育成力、データの扱い、フィジカルトレーニングに定評があり、なおかつポスティングを認める球団が理想。山本、宮城大弥(ひろや)、山下舜平大(しゅんぺいた)と球界を代表する先発を育ててきたオリックスなら、織田のようなスタイルの投手をエースへと引き上げる絵が浮かびます。

ダルビッシュ、大谷を育成した日本ハムも当然合いますし、上から投げ下ろす上質なストレートを好む阪神も合いそう。ソフトバンクは速球派を伸ばすのが得意ですが、ポスティングを認めた例がない点をどうとらえるか」

では、それでもメジャー直行を選ぶなら、どの球団がいいのか?

「契約金の大きさだけで判断してはいけません。日本語対応、生活支援、複数年の育成計画、医療体制までパッケージで出す球団に限られます。投げ方だけでいえば、一番合うのはドジャース。伝統的にオーバースローとハードスライダーを好みますし、日本人の受け入れ経験も豊富です。ただし、投手層が厚く、出力の最適化が強すぎる面もあるので、条件付きですが......。

そのほか、アストロズ、ブリュワーズ、マリナーズ、ブルージェイズ、ガーディアンズ、フィリーズなど、投手育成に定評のある球団ならば安心感はあります」

日米のスカウトが熱視線を送る18歳右腕。果たして、どのような道を歩むのか。

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