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レッドソックスの吉田は、7月以降の好調を維持していた中で故障離脱。プレーオフを見据えて復帰を目指す
「痛みが発生しました。残念です」
そう話した吉田正尚の表情は、なかなか思いどおりにいかないメジャーリーグでのキャリアを象徴しているようだった。
ボストン・レッドソックスで4年目のシーズンを送る吉田は、8月15日(現地時間。以下同)のピッツバーグ・パイレーツ戦の第2打席で、右翼線を破る二塁打を放ったが......その際に左太もも裏を負傷。足を引きずりながら二塁に到達したものの、自らベンチに交代を要請するジェスチャーをして退いた。
ハムストリングのケガは時間がかかる傾向があるだけに、しばらく離脱することは間違いない。試合後には、吉田もこう語った。
「日本(オリックス)時代に1回ありました。箇所は同じではないんですけど、1ヵ月近くかかったんじゃないですかね」
翌日、10日間の負傷者リスト(IL)入りすると発表された。口惜しいのは、吉田がシーズン後半戦に入って打撃の好調ぶりをアピールしていたことだ。
6月25日の時点では打率.237、1本塁打と低迷していたが、負傷で離脱した時点で打率.274、5本塁打まで数字を上げていた。7月以降は打率.310、OPS.859で、特に8月は打率.326。周囲では「チーム最高級の打者ではないか」という声も出始め、1番、5番などの重要な打順を任されていた。
時を同じくして、レッドソックスも7月22日まで15連勝、8月7日までの30戦で27勝を飾るなど急上昇。一時は借金14を背負っていたチームが、ワイルドカードでのポストシーズン進出を見据えるまでになった。
「チームもそうだし、自分も最後にどういう位置にいるかが大事。勝利に貢献できるように、チャンスメークや、チャンスの場面で得点することなど、得点に絡んでいくことが必要かなと思います」
力強い口調でそう述べていた吉田は、4年目にして初めて、チームとして上位進出が狙える位置にきたように思えた。だからこそ、ここで離脱することへの無念はよけいに強かっただろう。
ただ、幸いなのはまだ時間が残されていることだ。吉田の経験談どおり、復帰するまでの期間が「1ヵ月近く」だとすれば、9月末からスタートするポストシーズンには間に合う計算になる。だとすれば、プレーオフにいいコンディションで臨めるように、全力で準備する以外にない。
チームは8月3日、オールスターに3度選出されているアドリー・ラッチマンをボルティモア・オリオールズから獲得。同日、吉田の口からも「ワールドチャンピオン」という言葉が初めて飛び出した。
「(トレード期限に)勝負に出て、ワールドチャンピオンを狙いにいっているということ。今のチームにはその勢いがあると思います」
昨年のプレーオフで打率.571と活躍したクラッチヒッターは、今年も大舞台で勝負強さを発揮できるのか。原稿執筆時点では、復帰の時期は明言されていない。厳しい条件になったのは事実だが、まだ逆襲のチャンスが残されていることを願うばかりだ。
メッツの千賀は7月までまさかの0勝8敗。先発からリリーフに転向すると、セーブも挙げるなど結果を残し始めている
一方、同じように前半戦で苦しみ抜いたニューヨーク・メッツの千賀滉大は、誰も予想していなかった形で新境地を切り開いた。
33歳の右腕は、夏場以降にリリーフとして起用されるようになり、8月に入って5試合連続無失点とペースアップ。夏のトレード市場で多くの主力選手を放出したチーム事情も重なり、クローザーとして力を発揮している。
16日のワシントン・ナショナルズ戦では1点差のセーブシチュエーションで登板。速球、フォークを軸に2三振を奪い、3つ目のセーブをマークして勝利に貢献した。
「(クローザーだと)準備がわかりやすいというか、自分のタイミングで準備できる。いついくかわからない、何イニング(投げる)かわからないよりは、すごくやりやすいかなと思います」
メジャー4年目、千賀は先発の一角として起用されていたが、開幕直後から痛打されることが多かった。4月下旬には腰椎の炎症でIL入り。
6月に復帰した後も調子は上向かず、0勝6敗、防御率10.08という目を覆うような成績で、同月下旬にリリーフへの配置転換が決まった。その後、しばらくは適応する期間が必要だったが、前述のとおり8月は好投を続けている。
千賀は8月10日のアトランタ・ブレーブス戦でメジャー初セーブを挙げたが、ソフトバンクではリリーフ経験があり、もともとクローザー適性もあったのだろう。
100マイル(約160キロ)近い速球、切り札の〝お化けフォーク〟を短いイニングで攻略することは困難。本格的にリリーフとして定着するためには連投にも対応しなければいけないが、現在のように週に2、3度クローザーとして登板するだけでも、チームの強力な武器になるのではないか。
8月14、16日の本拠地の登板では、マイケル・ジャクソンの大ヒット曲『今夜はビート・イット』でマウンドに登場。
ファンは大喜びで、千賀自身も「久しぶりに聴いて、『いいな』と思ったので変えました。みんな知ってる曲なので、盛り上がってくれたらうれしいです。チームメートの評判が良ければ(今後も続けたい)」と継続使用に前向きだった。
〝キング・オブ・ポップ〟のテーマに乗った千賀の登場シーンが、ニューヨークの新たな呼び物になる可能性もあるだろう。
吉田が所属するレッドソックスとは違い、ワイルドカード圏内から大きく離されたメッツのプレーオフ進出は絶望的だ。そんな中でも、シーズン終盤にいい投球が続けられたら、千賀は5年契約の最終年となる来シーズンに向けて弾みをつけられる。
一時はトレードや解雇も噂されていただけに、状態が万全ならばメジャーでも支配的な投球ができることをあらためて証明したいところ。来シーズン以降の役割がどうなるとしても、クローザーとして力を見せておくことに重要な意味があるはずだ。