7月下旬から金価格は上昇し、8月7日に最高値をつけた。利益確定の売りが入り、いったん落ち着いてはいるが...... 7月下旬から金価格は上昇し、8月7日に最高値をつけた。利益確定の売りが入り、いったん落ち着いてはいるが......

7月下旬から金の価格が高騰している。8月7日には1トロイオンス(約31.1g)当たり約2072ドル(約22万円)をつけ、史上最高値を更新した。

「ここ最近、お問い合わせが増えましたね。店頭には、『今高いから売りたい』とタンスに眠っていた金の指輪やネックレスを持って来店する方もいらっしゃいました」

こう語るのは、金の地金(じがね)売買を手がける田中貴金属工業の担当者だ。

しかし、今回の金価格上昇は従来の値動きの常識とは大きく異なるという。『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)の著者で元ファンドマネジャーの江守哲(てつ)氏はこう語る。

「金は、倒産や財政難で価値がゼロになりかねない株や債券と比べ安心感が高い一方で、投資対象としてのリターンは株や債券に軍配が上がります。そこで従来は、金融危機や地政学リスクが生じると投資家の資金は株から金へと移動し、株価下落と金価格上昇がセットで発生していました。

ところが今回は、米国のダウ平均株価はすでにコロナ前の2019年の水準を取り戻している。つまり、従来のセオリーなら金価格は下落しているはずなのです」

ではなぜ、今でも金価格は高値を維持しているのか?

「19年頃から機関投資家や富裕層の投資姿勢が変化したからです。これまでは平時は投資資金のわずか5%程度を金に投資し、有事の際は金の比率を増やすスタイルが一般的でした。ところが昨年以降、海外の投資家を中心に金に対する積極的な買い入れが目立つのです」(江守氏、以下同)

こうした動きの背景にあるのは、世界各国の金融緩和だ。

「コロナ前から日本を含む各国で大規模な金融緩和が相次ぎ、市場にマネーがあふれていた。さらにコロナ関連の経済政策が打ち出され、その傾向は加速しました。

投資家は、余ったマネーを振り向ける新たな投資対象を探さなければなりません。その過程で金も平時の投資対象として見直されることになり、結果として株と金の同時高が演出されたのです」

また、中国が基軸通貨化の意欲をにじませているデジタル人民元構想も、金価格の上昇を後押しする可能性があるという。

「デジタル人民元の信用を裏づけるためには莫大(ばくだい)な量の金を保有することが必要です。現時点で同国の金保有量は少ないため、現在も金の買い入れを積極的に進めていますし、今後も引き続き購入を続けるでしょう。同国の買いによる金価格上昇も十分に考えられます」

では、将来的に金価格はいくらになるのだろうか?

「特に金価格へ影響を及ぼすのが、世界の基軸通貨・米ドルの市場への供給量(マネタリーベース)です。これはかなり好条件の仮定ですが、もし今後マネタリーベースが毎月1.5%増加すると、2030年の金価格は現在の4~5倍にあたる8000~1万ドル(約84万~106万円)になると試算されます」

今の高騰は、来るバブルの序章にすぎなかった?